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20.11.05
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水害からまる1年。信州長野の実りの秋


全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。今回のテーマは、

「水害からまる1年。信州長野の実りの秋」。

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台風19号の大きな被害を受けた直後の去年11月以降、番組では、千曲川周辺のリンゴの産地「アップルライン」をはじめ、浸水被害からの復旧に力を注ぐ生産者の方、住民の方の声を届けてきました。あの台風からまる1年1か月。再生へ向けて頑張って来られた地域の方々は、いま、どんな様子でいるのか。

まず今回わたしが訪れたのは、長野市・東北部にある長沼地区。このあたりは、空が広く感じる土地で、遠くに山並みが続くとても気持ちいい場所。過ごしやすさもあり、子育て世代の移住なども増えていた土地だと言います。

ただ、去年の台風19号による千曲川の決壊、大規模な洪水の被害は深刻で、復旧は進んだのですが、地域には課題が残されているといいます。長沼地区の復興対策企画委員長を務める柳見澤宏さんに伺いました。

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柳見澤 見ていただいてわかるように当時と変わってきているのは家屋が公費解体されて撤去されたり片付けられたり、そういう状況が至るところで今出てきているんですね。ですので、かつての長沼の景色というか風景というか、そういう面影が家が壊されたことでどんどんなくなってきているのが現実ですね。結局家がなくなったら、その後にまた家を建てて長沼へ戻ってくるのか、または公費解体したあと自分はもうほかで住居を作るよという人もいるのか、ここが非常に微妙なんです。もっと言うと「あんたは戻ってくるの? 外へ出ちゃうの?」ということをなかなか聞けない。このジレンマというのか。そこのところを私たちの組織の中でどう把握していくかということが今非常に課題として浮かび上がってきています。

高橋 道路もきれいになって整備も進んで復興が順調に進んでらっしゃるのかと思ったんですが、まだ揺れ動いている部分も当然ながらあるんですね。

柳見澤 長沼は4地区あるんです。大町、穂保、津野、赤沼。4つの地区で被害の状況がみんな違うんですね。そうすると地区ごとにこれからどうするかという思いにズレが出てきているんです。それを長沼ひとつでこれからの長沼はどうしていくんだとみんなで話そうと、ワークショップなんかもやろうとしているんですが、4つの地区それぞれの状況、背景が違うのはどう受け止めながら長沼の総意としてこれから先を探っていけばいいのかということが難しさだと感じています。

高橋 確かな数字じゃなくていいんですが、去年の台風前と被害の後ではどの程度の方が離れてしまったんですか?

柳見澤 住民票を移した人がちょうど1年経った時に、データでも出ましたが12%が住居も移している。やっぱり堤防が決壊したということの衝撃というか不安感が十分にぬぐえていないと言うことがあるんです。例えば堤防も非常に強化されてしっかりしたものが、決壊した場所にはできていますし、これから先この堤防をこんなふうに強化するという計画はあるんですけど、それでも本当に水がこないのか、ここ以外のところで決壊する事は無いのか、そういう思い、不安感は皆さん持っているんですね。そこの国の方へ、ここは立ヶ花という狭窄部があって、“立ヶ花ダム”と呼んでいる。雨が降って狭い狭窄部があると水が溜まってきちゃう。その水は必ず弱いところをめがけて押し寄せてくるんですね。それをどういう風に国が考え、どうしてもらえるのかということをこれからも話をしながら、先に向かって未来の長沼をどう作っていくのかを探りながら動いていくという、その両建てのところで進めていくしかないかなとこんなふうに思っています。



10月に長野市が公表したデータでは、長沼では災害現場に近い津野の人口減少率が17.7%、赤沼は12.4%。一方、現場から比較的距離のある大町は3.8%の減少にとどまっていて、やはり地域差があります。この地域それぞれの状況を話し合いながら、柳見澤さんたちの長沼地区の魅力とにぎわいを取り戻していく取り組みは続きます。


一方、車両基地の新幹線が水没してしまった映像が印象的だった赤沼地区。こちらには、今年春にも取材で伺った「ホクト赤沼きのこセンター」があります。全国のエリンギのシェアの5割というホクトの中でも、中心的な存在がこちらの工場。これまでの取材では、従業員の皆さんが総出で浸水被害を受けた工場内を掃除したり、きのこを栽培する瓶を手作業で洗う様子もお伝えしていますが、こちらはようやく念願の操業再開にこぎつけていました。

所長の清水勝典(かつのり)さんに伺いました。

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高橋 まずは工場再開おめでとうございます。再開までどのぐらい時間がかかったのか教えてください。

清水 洪水が工場に押し寄せてから従業員の皆で泥をかき出しまして清掃を徹底しました。栽培瓶も泥に浸かっていましたので全て手洗いで洗浄をしてきました。そして清掃が終わったところに栽培するための機械を入れて行きまして、4月末には栽培が少しずつ再開するようになって、キノコがやっと収穫できたのは6月中旬になります。

高橋 清水さんは8ヶ月かかって収穫できたときにどのように感じられましたか?

清水 皆さんのご支援とここで働くみんなの力の結晶ですので、大変嬉しくほっとしたと申しますか、キノコの顔が再び見られて本当によかったなと思いました。生育室で1人でキノコを見ていると、その時の姿と言うのは本当に人様には見せられないような感じでしたね。

高橋 私たちは成長したエリンギをスーパーで目にするわけですが清水さんは、「キノコの声が聞こえる」とおっしゃっていたんです。対話をしているというか本当に丁寧に育てていると思ったんですが現在の操業状況は以前と同じくらいになってきていますか?

清水 そうですね。以前と同じように栽培できていまして、出荷も順調にできています。

高橋 これから寒くなってきてきのこを食べる機会も増えると思うんですが、オススメの食べ方はありますか?

清水 私はきのこのアヒージョが好きです。少し肉厚にエリンギをスライスしてオリーブオイルで煮ますと大変体も温まりますし歯ごたえもあって、エリンギをより美味しく食べられると思います。



清水所長をはじめ、笑顔であいさつを交わした工場の皆さん一人一人の明るい表情が、操業再開、そしてエリンギをつくる喜びにあふれているのを感じさせてくれました。エリンギのアヒージョもぜひお試しください。


そしてもう一つ。リンゴ王国として知られる信州長野。前回、春に取材した時は、まだ浸水による泥が残り、リンゴ農家さんからも「ちゃんと実るといいんだけど」と不安の声が聞かれたのですが、実りの秋を迎えて、リンゴ農家はどうなったのか。前回取材したフルプロ農園の代表、徳永虎千代さんの農園を改めて訪ねました。

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高橋 今年の春、3月にお伺いした時はりんご畑を見せていただいて台風の爪痕がまだ残っているというか、倒れた木に藁をかぶせてこの後どうなるのか、今年のリンゴはどうなるのかとお話しされていましたが、実際どうでしたか。

徳永 3月に見て頂いた時は本当に悲惨な状況だったんですが現場は完全に復旧しました・・・といいたいところではあったんですが、どうしても数本、木が枯れてしまったり、折れてしまったり、少し爪痕はあるんですがほぼ90%、りんごが採れるように元通りになりました。

高橋 それは予想されていましたか?

徳永 災害当初はこういった事は予想できなくて、真っ暗な状態だったんですけど、本当に多くの人に支えられて、ほぼみんなおいしいりんごを実らせてくれました。

高橋 実ったリンゴみていかがでしたか?

徳永 まず1番最初に花が咲くんですね。その時にとても安心しました。花がさけば順調に実っていくという事は農家なのでわかっているんですけど、その時に本当にまず喜びを感じて、実際に発送できている「秋映」、「シナノスイート」というりんごもあるので、それに関してはお客さんに“おいしい”と言って頂けて、とても嬉しいですね。

高橋 りんごって強いと思うところもありますか?

徳永 そうですね。そこは本当にりんごに助けられたという所なんですけれども、なぎ倒されてしまった木がまさか今年立て直してすぐにりんごを実らせてくれる。あそこって水害で水に浸ってしまったんですね。24時間以上水に浸ってしまった中で、窒息しないで全ての地域のりんごが育ってくれているので、やっぱりりんごの強さはとても感じましたね。

高橋 今日も出荷作業のところに私たちはお邪魔していてお忙しいという感じですが、注文も多いですか?

徳永 大変ありがたいことに、前からずっとネット販売等をやっておりますので、おかげさまで皆様から応援を頂くようなこともありまして、注文も少しずつ増えております。

高橋 「アップルライン復興プロジェクト」というのを去年の被災を機に立ち上げて、クラウドファンディングで多くの支援を募ったりされていましたがその活動はどうなりましたか?

徳永 本当に多くの皆さんにご支援ご協力頂いた資金なんですけど、私たちのプロジェクトで、継続的にこの地域が復興できるような商品を作ったり、いちばん大きな資金の使い道としては、地域内で農機具をシェアするという事はもともと謳っていて、草刈り機とかそういったものを使うように地域の住民協議会と話を進めている状態ですね。

高橋 出荷作業されているところに皆さんお若い方が皆さん多くて、災害をきっかけに若い力が集まったところもありますが?

徳永 私自身もまだ20代で、もともと若いメンバーが多かったというのもあるんですけど、やっぱり災害後も、友人や多くの学生にも助けて頂いて、その方たちが継続的に、今度はバイトとして来て頂くという形もありました。

高橋 あの災害を機に変わったこと、良かった点などについても感じられていたりしますか?

徳永 悪かった事はもちろんたくさんあるんですけど、良かったこととしては多くの人に本当に支えられて希望を与えてくれて、それが私たちの活力につながったことと、その方たちが引き続き、私たちを愛してくれるというか見続けてくれていることが、ファンのつながりになったりするということでよかったと思っています。

高橋 今年の災害から1年、復興りんごという感じなのかと思うんですが、味は良かったですか?

徳永 そうですね。これは例年と引けを取らない味ですし、私たちとしては昨年自分たちで作った畑のりんごを食べられなかったので、今年食べるりんごというのはとても感慨深いというか、とても美味しくあります。まさに復興1年目のリンゴということなので、ぜひ皆さんにも愛して頂けたらと思います。

高橋 この時期、11月においしいりんごの品種は何ですか?

徳永 私自身いちばん好きな「シナノゴールド」という品種が、とてもシャリシャリパキパキしておいしいりんごなんですけど、これがやはりいちばん旬なんじゃないかなと思います。

(シナノゴールド)



上の写真は去年の被災後の様子、そして下が今年の畑の様子です。見違えるように立ち上がり、立派な実をつけています。無事収穫にこぎ着けた時の感慨は、まさにひとしおだったのではないでしょうか。

徳永虎千代さんは120年続く農園の4代目。地域のリンゴ栽培の担い手不足を解消するため、“誰にでも取り組めて、質の高いものを作る”と、新たな栽培方法を実践。持続可能な農業に取り組んでいる若き経営者です。営農をやめた畑を預り栽培を続けるなど、リンゴの郷を守るために奮闘されている方でもあります。

フルプロ農園、ネット通販も展開しています。美味しいジャムなどの加工品もありますので、ぜひサイトを訪ねてみてください。


ここでプレゼントのお知らせ。今日はフルプロ農園、徳永さんたちが丹精を込めて育てたリンゴのうち、今が旬、甘くて適度な酸味があって香りがいい、「シナノゴールド」(3キロ入り)を3名様にプレゼントします。ご希望の方は番組ホームページのメールフォームから、「シナノゴールド希望」と書いてご応募ください。

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「Hand in Hand」、来週は福島県東部から、復興の歩みと「いま」を伝えるシリーズ。「あれから10年。復興が進む福島を行く」。大熊町のフルーツ栽培とそれにかかわる人々の声をお届けします。

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