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20.11.26
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福島の若者たちが取り組む、復興への未来志向アクション


全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。今回のテーマは、

「福島の若者たちが取り組む、復興への未来志向アクション」。

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福島県郡山市の郡山女子大学短期大学部地域創成学科は、地域連携教育を中心とした多様な学びによって、創造力や表現力、コミュニケーション能力を伸ばすことを目的とした学科です。この「地域創成学科」が環境省と連携、福島の「環境再生」を想い起こさせるデザインを、7人の学生とともに開発しました。一枚目の写真は、そのデザインを施した紙袋を手にした学生たちの姿。学生たちはそれぞれ、福島の「環境再生」について深く考え、胸に浮かんだ思いをデザインに込めました。

今回のテーマは、「福島の若者たちが取り組む、復興への未来志向アクション」。ちなみに、今年の春にお伝えした、高校生が作る福島の桃スイーツプロジェクト、皆さん覚えていますでしょうか。フルーツ王国ふくしまを代表する果物でもある「桃」、それも“規格外”ということで、安く引き取られたり、廃棄されてしまう「桃」を活用して、環境省と、福島の桃の産地・伊達市、広野町の「ふたば未来学園高校」、伊達市の保原高校がタッグを組んで作った、「フィナンシェ」と「マドレーヌ」と「クッキー」をご紹介しました。


ふわっと、桃の香りが口いっぱいに広がる美味しいスイーツでしたが、じつは、そのうちの「マドレーヌ」に、伊達市の「パティスリーアリュメット」によるプロの手が加えられ、「mofet(モフェット)」という名前で商品化、11月28日から、伊達市霊山町の「道の駅伊達の郷『りょうぜん』」で試験販売されます。また12月11日、12日には、福島市にある「コラッセふくしま」の県観光物産館でも販売されるということで、まさに“福島の若者たちが取り組む復興への未来志向アクション”が、次々とカタチになっているんです。


郡山女子大学短期大学部地域創成学科の7人の学生たちが、環境省と連携、福島の「環境再生」を想い起こさせるデザインを、一人一人が考える様子、まずはデザインの完成が迫る9月に教室を訪ね、創作へ向けての思いを聞きました。

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「伊藤里納です。
福島の「環境再生」ということで、再生ボタンと福島の再生をかけてアイコニックな感じにしていきたいなと思っております。」



「伊藤仮名です。
私の考えたデザインは、「環境再生」のイメージから、パズルのピースを想像してデザインを考えました。パズルをはめていくということで、福島が元に戻るようなイメージでデザインを考えました。」



「武藤真由です。
福島の環境について、文字だけで伝えられないかと思い、「ふくしま」で「あいうえお作文」を考えて、自分の福島のキャッチコピーをかけたらいいなと思ってこのデザインを考えました。」



「星綾明です。
私は福島の特産物である桃について、いろんな人に知ってもらいたくて、また女の人とかもっていて楽しくなるような、ちょっとかわいいデザインを考えました。」



創作終盤に差し掛かったころの、7人の学生のうちの4人のコメント。一人一人が思いを巡らせながらデザインを考えている様子が伝わってきます。

そして今回の活動を指導する、地域創成学科の小松太志准教授に、地域創成学科のこれまでの取り組み、そして今回のプロジェクトについて、お話を伺いました。

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「地域創成学科として、さまざまな地域連携活動を行っています。大学というのは、そこで知識を得たり、専門性を追求するということもあるんですけれども、その学んだ学問をいかに地域に還元していくのか、社会の中で活用していくのか、ということが必要なのかと思います。学生のうちにそういった活動に参加することで、社会に出て自分の専門性がどのように生かされるのかということを学ぶことができますし、地域の方々と関わることで社会人としてのコミュニケーションであったり、人との関わり方についてより深く学習できると思っています。
現在取り組んでいるのは、環境省さんの方からお話をいただきましたが、福島の「環境再生」を訴えるため、形として今回、エコバッグ、紙袋という形で提供されることになるかと思います。大きくは、福島の「環境再生」を伝えていくためのシンボルのようなイメージで作らせていただくというお話で進めています。こういった活動を通して、より福島の現在というものを多くの方に知っていただくような機会になると考えています。
最初のうちは、なかなか大きいテーマでしたし、抽象的な要素や社会性もあるというところで、学生がどのように捉えるのか、十分に捉えて表現できるのかということを心配しておりました。ですが、学生が出してきたアイデアを見ると、自由な発想であったり、独創性といったものが十分に発揮できていて、それが福島の「環境再生」というテーマにうまく結びついたものになっているんじゃないかなと考えています。これからの制作に期待したいなと思っています。」


郡山女子大学短期大学部地域創成学科の7人の学生たちが、「福島の再生」をテーマにデザインを考え、これがまずは紙袋という形で完成、先日11月12日にお披露目されました。

伊藤仮名さん

伊藤里納さん

加藤愛弓さん

島貫風花さん

星綾明さん

茂木若菜さん

武藤真由さん

7人のうち、先ほどの4人に続いて、今度は完成した紙袋を前にした残りの3人、そして小松准教授に話を聞きました。(聞き手はレポーターの久保田彩乃さん)

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〜ご出身とお名前を教えてください

山形県出身の島貫風花です。

〜今回の作品のテーマと内容を教えてください。

私は、「今回福島と言ったら何だろう」と考えた時に、「赤べこ」が思い浮かんだので、「赤べこ」をモチーフにしたデザインにしました。「赤べこ」には魔除けや疫病を祓うなどの伝統があって、東日本大震災からの復興や、コロナウイルスが蔓延するなかで、「赤べこ」が持つ力強さで福島を元気に PR していきたいなという思いを込めてデザインしました。

〜他の学生さんの作品が全体に白を基調としているのに対して、黒と赤がすごく目立って映えている感じがしました。

一番こだわった点は、「赤べこ」の本体の方には「赤べこ」の模様がないんですけれども、かわりにその模様を上のところにつけているというところがちょっと工夫しました。

〜可愛いですね。手にする人に、どんなことを感じ取って欲しいでしょうか。

この紙袋を手に取っていただくことで、福島の「環境再生」について少しでも興味を持っていただいて、理解していただければなと思っています。

〜ご出身とお名前を教えてください

宮城県出身、加藤愛弓です。
私はポップアップの絵本をイメージして作りました。絵本はあまりバッドエンドで終わるというイメージがないので、絵本ということに決めました。そして福島という点で、福島市とか会津とかだけではなく、いろんな地域のものを取り入れたいなと思ってこのデザインにしました。

〜デザインがとてもアニメーションの感じが可愛らしくて、「赤べこ」と、これ馬は競馬の馬ですか。

競馬の馬です。相馬の馬にするかも悩んだんですけれども、ここで甲冑をガチガチに着た馬を入れてしまうとイメージが崩れるなと思いまして。

〜今回ご自身で制作、デザインをしてみてどんなことを考えましたか。

私自身が福島県についてあまり知らないなと考えました。その上で、うさぎだったり、桃だったり、色々描いてみて、他の人にも「福島って他に何があるんだろう?」と考えてもらいたいなと思って、例えば白いうさぎは思いつかないかなと思ったし、りんごもあまり思いつかないかなと思いました。

〜デザインを通じて、新たな福島の魅力を発見してもらいたいということですね。

県外の人にも手にとってもらって、「福島ってこんなものがあるんだな」と思ってもらえるのと、子供からお年寄りまで「可愛いな」と思ってもらいたいなと思いました。

〜ご出身とお名前を教えてください

秋田県出身の茂木若菜です。
私は福島の食べ物を中心にデザインしました。郡山に農家をやっている祖母がいまして、風評被害で全然お米も野菜も売れないし、とっても苦労したという話を前々から聞いていたので、絶対に食べ物を中心にデザインしようと思いました。私は桃が一番最初に思い浮かんだので、今回は桃を中心にデザインしました。

〜郡山のおばあさまにはこのデザインはもう見せられたんでしょうか。

途中の段階では見せていて、まだ完成品は見せてないです。

〜実際にまずご自身で手にとってみて、いかがですか。

やっぱり自分が一からデザインして、頑張って頑張って作ったものがちゃんとしたものになって、しかも学校外の人たちにも見てもらえるということがすごい嬉しいし、達成感があります。

〜いろんな人に、このデザインで伝えたいことというのはどんなことでしょうか。

この紙袋のデザインはここにかじり跡がついているんですけれども、かじり跡がついていることによって「福島県の食べ物は安全で新鮮で美味しい」ということを、おばあちゃんも自分も知っているのでアピールしたいです。

〜小松太志准教授に聞きます。7月からこのプロジェクトに取り組んでこられたということですけれども、発表の場を終えて率直なご感想はいかがでしょうか?

初めは学生がどこまでデザインができるかということを気にしていました。必ずしもデザインや美術に関わる専門性を持っている学生だけではなかったので、どこまで形になるかと思っていましたが、本日終えまして、質も高くアイデアも優れたデザインが揃ったなというのが率直な感想です。

〜学生さんたちにお話を伺うと出身地がバラバラだったり、福島に対してそもそも持っている知識やイメージがみんなバラバラでしたけれども、「環境再生」とデザインを学生たちに指導する上で、小松先生はどんなことを念頭に置かれたんでしょうか。

「環境再生」というテーマは非常に抽象的な概念、非常に全体的な概念ですので、これをどうビジュアルに落とし込むのかということは非常に苦労しました。なので、学生がそれぞれ持っている出身の地域性であったり、学生の個性といったものを尊重するようにしました。ただし、前提となる福島の環境についての現状などの知識はもちろん学習しました。

〜このプロジェクトを通して学生さんたちはどんな成長が見られたでしょうか。

それこそ、「大学の中でこれまでこれほどまでに一生懸命取り組んだことはない」と、そういった達成感を非常に強く感じている学生がいたと思います。こういった経験を通して、学生が自分自身の教育であったり、これから社会に出ていくにあたって、自信を持って活動していくことができるのかなと考えています。

〜先生ご自身は、このプロジェクトはどういった意味があったと思われますか。

震災以降10年、報道機関等で福島以外の地域はなかなか報道される機会も減っているかと思います。そうした中で、私ども福島に住む者たちも、なかなか福島の「環境再生」について十分に理解しているかというと、必ずしもそうではない部分がある。このような機会を通して学生も、私自身も、もう一度福島について理解をするということができたと思いますし、こういった活動を継続して行なっていくことによって、若い人たち、他の人たちに、福島について考える機会というものを提供できるのではないかと考えています。



郡山女子大学短期大学部地域創成学科の7人の学生たちが、「福島の再生」をテーマに考案したデザイン。今後はエコバッグや様々な場面で、この7人のデザインが活用されていくということで、
いつか皆さんのお手元にも何かしらのカタチで届くといいなと思います。

また、12月5日と6日に行われる「GTFグリーンチャレンジデー2020オンラインイベント」でも、このデザインが動画で公開されます。

GTFグリーンチャレンジデー2020オンラインイベント

さらに冒頭でご紹介しました、福島の高校生たちが作った桃スイーツ「mofet」も、このイベントの中で特別販売されます。ぜひ12月5日と6日は、「GTFグリーンチャレンジデー2020オンラインイベント」にご参加頂けたらと思います。

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ここでプレゼントのお知らせです。
「Hand in Hand」、今日のテーマは、「復興10年、福島再生への歩み〜『福島の若者たちが取り組む、復興への未来志向アクション』」。今回は、ご紹介した郡山女子大学短期大学部地域創成学科学生のデザインのうち、2種類を使って、エコバッグが製作されます。そのエコバッグに、福島の高校生たちが作った桃スイーツ、「mofet」を入れて、それぞれ3名ずつ、計6名様にプレゼントします。

ご希望の方は、「Hand in Hand」ホームページのメールフォームからご応募ください。番組の感想や、福島の高校生、大学生たちへのメッセージも是非お書き添えのうえ、「福島のエコバッグと桃スイーツ希望」と書いて、ご応募ください。

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来週の「Hand in Hand」、テーマは、「ドキュメンタリー映画『空に聞く』が伝えるもの」。陸前高田を舞台にしたこの作品について、そして陸前高田の今について、お伝えします。来週もぜひ聴いてください。

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