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21.02.11
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祈りの帆 〜 新たな気仙沼の象徴とともに


「Hand in Hand」。今回のテーマは、「祈りの帆 〜 新たな気仙沼の象徴とともに」。

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「ここに立ってみて思うのは、気仙沼のここの向かい側に、造船所が多くあった地区があるんですけど、今はもう一か所あるだけで、あとはぜんぶ集団で移転しちゃっているんです。そこはこれからまた、いい未来、いい形に変えていくべきところだなという風に思いますし、たとえばヨットハーバーだったらすごく素敵ですよね。で、コーヒーなんか飲みながら泊まれたりとか、別荘もあったりとかして・・・」

こう話すのは、気仙沼発祥のコーヒーチェーン「アンカーコーヒー」の代表、小野寺靖忠さん。新しく整備された「気仙沼市復興祈念公園」から気仙沼湾を見下ろしながらの一コマ。陣山という小高い丘の上にあって、遠くには間もなく開通を迎える「気仙沼湾横断橋」も見えていました。シンボルモニュメントは、風をうけてふくらむ船の帆がモチーフの「祈りの帆(セイル)」


東日本大震災から間もなく10年、各地で復興事業が大詰めを迎えるなか、犠牲に合われた方1300人以上、約9500世帯が被害を受けた気仙沼市も、市内すべての災害公営住宅が完成するなど、この春、復興事業が終盤を迎えています。

かつて、遠洋船の寄港地として栄えた気仙沼は、停泊した船が港を出る時、山から吹き下ろす西北の風・・・“ならいの風”を帆にうけて出港していく、“風待ちの港”でした。お釜のような湾の形から「ならい釜」とも呼ばれていたんだそうです。

そんな町の昔話を私たちに聞かせてくれた小野寺さんは、市の若手事業者の一人として、気仙沼の復興にたずさわってきた方。元ラガーマンで身長190センチくらいある大きな身体に、チャーミングな笑顔で、いつも優しく私たちを迎えてくれます。


まずは小野寺さんが経営するコーヒーショップ「アンカーコーヒー」の内湾店がある港エリア、「内湾地区」について現状を伺いました。

「内湾地区ももちろん内湾というくらいですので、湾のすぐ横にある地区なので被災してしまった場所ですけれど、10年経ってほぼ9割5分くらいで工事も終わり、全く違う街と言うか、新しい街が出来上がったという感じです。」

―――今私たちがいる後ろですけれども、防潮堤のところにあえて人が集まれるようなお店ですとかそういった場所を作っている地区なんですよね。

「気仙沼って海の街なので、普段から海辺を楽しんでもらえる街づくりをしたいなと。観光で来た方達も一緒に楽しめるような、そこに飲食店だとか移住の促進とかあと茶室とかもあったり、いろいろ文化施設も入っています。」

―――10年を迎えるにあたって、その他にもシンボル的なものが出来上がってきたとか。

「三陸道という高速道路が仙台からずっと八戸の方までつながる予定になっているんですよ。つい先日気仙沼と仙台の間が1時間半で行き来できるようになったので。今まで僕が子供の時は3時間かかってたんでホント半分の時間になったので、仙台から気軽に来て頂けると。脂の乗った魚の美味しい時期に、来週も来ようかなとか、再来週何か予定あったっけ?みたいな感じでどんどん来てもらえたらなと思います。」


お話しに出てきた、“最大の復興事業”と言われる「三陸道」は仙台から八戸にかけての東北沿岸部を縦貫する大動脈。計画では今年3月6日にこの気仙沼湾に架かる「気仙沼湾横断橋」が開通してついに全線開通!!となるはずだったんですが、岩手県の一部で工事が遅れて全線開通は来年度に持ち越しとなっています。

ただ仙台と気仙沼の間はすでに開通していて、お話しにあったように仙台から1時間半で気仙沼に来られるようになったということで、この利便性の向上に期待する声は大きいということでした。

そんな気仙沼、じつはいま、アレが美味しいんだそうです。

「今の時期はメカジキがすごく美味しい、脂の乗っている時期なんですけど、今は値段も下がっているみたいです。多分コロナの影響だと思うんですね。飲食店が軒並み休業とかしている影響もあるんですけど、気仙沼に来るとメカジキの脂の乗ったやつが安く食べれるという。気仙沼は刺身で昔から食べているんです。脂っこいところ塩を振ってちょっと炙ったやつをご飯と一緒にかきこむみたいなことが、すごく子供の時好きな食べ物でしたね。」


小鉢のいちばん上の淡いピンクの刺身がそのメカジキです。たしかに脂がのって甘みと旨味があり、しっとり口の中でとろけるようでした。なるほど塩ですか・・・(メモ)


―――車でちょっと登ってきまして、今高台から街を見ている場所なんですけど、この場所は?

「祈りの帆(セイル)」と言って、東日本大震災で亡くなった方たちとかにお祈りを捧げるような場所になっていて、この場所に来たらあの日のことをまた思い出して、ということが出来る場所です。高台にあるセイルのようなオブジェがあって、その方角、ここを中心にして見て、各浜でお亡くなりになられた方達の名前が彫ってあったり、この方向にどの浜がありますよと書いてあって、その方向に向かって手を合わせることで祈りが通じるんじゃないかという、そういう場所です。」

―――この場所に作ったのは何か意味があるんですか?

「気仙沼湾の地形的なものが一望で分かりますし、震災を受けてその後にできていった道路だとか橋だとか建物だとかそういうものが見られるので、津波の脅威という地形的なデメリットも感じて頂けますし、そこから這い上がる人間の強さみたいなものも一緒にここで感じることができるんじゃないかなと。僕も今初めてここに来ましたけど、とても良い場所を選んだなと実感しています。」

―――湾を見てみると橋が見えるのがいいですね。

「二つ大きな橋が見えて、一つは気仙沼大島大橋。大島は震災当時は離島だったんですけど、でも今はアーチ状の橋が架かってそれが大きく見えますし、その手前はすごくかっこいい近未来的な、これが気仙沼湾横断橋です。これは三陸道の一部で、ここから仙台まで一時間半で繋いでくれたりだとか、八戸までも伸びている、そういう高速道路の一部になります。3月末には開通予定になってます。」

―――三陸道が開通することで街の人にとってはどういう意味がありますか?

「喜びと、恐怖というか不安もあると思うんですよね。というのもやっぱりその街に魅力がなければ街の中から人がいなくなってしまう可能性も多いです。だから気仙沼をどうやって魅力的な街にしていくか、気仙沼の魅力を多くの人にどう伝えるかというのはすごく重要なことになると思います。」


「気仙沼市復興祈念公園」とそのシンボルモニュメント、「祈りの帆」。鎮魂と祈りの場所であるのはもちろんですが、気仙沼の湾や港、新旧の街並みを一望することができる場所であり、この町が歩んできた歴史を感じることも出来ます。またたとえ同じ高さの津波が来ても浸水しない場所ということで、防災教育の場にもなればと小野寺さんは話していました。


そんな小野寺さんが営むコーヒーショップ「アンカーコーヒー」は、〔長靴から革靴まで〕、〔軽トラからベンツまで〕、世界から船が寄港する港町・気仙沼にそんなカフェ文化をプラスすることで、地域をより魅力的にしたい。コーヒーを売るだけじゃなくそんなライフスタイルを提供したい、という思いで2005年にオープン。津波で2店舗が被災しましたが、震災後に5店舗をオープンさせるなど留まることなく事業を拡げてきました。

震災から間もなく10年。ここまでの歩みを振り返って、小野寺さんが今思うこととは。

「僕は気仙沼で、海を見ながら生きていくというか、より良い時間を過ごせる場所というのがないなと震災前感じていたんです。たとえば僕はアメリカに住んでいたので、シアトルだとかサンフランシスコとかボストンとかに行って、海の近くでご飯を食べたり、海から上がりたてですみたいな感じで食事ができる場所というのがなかなか日本にない。どうにかしてできないかなと思っていたことが、いま自分たちがやっていることにもなっています。そういう意味では、ひとつやりたかったことは叶っているかなというのがあります。ただもう1つ、日常生活を豊かにしていくことが僕は目標なので、田舎は決して何かが劣っていて田舎というわけじゃなくて、田舎の方が可能性高いし、人間らしい生き方ができるんだというところを模索していけたらなと思います。季節のものを食べて季節を感じながら生きていくってすごく重要なので、気仙沼ではそれができるようになったけど、他でできないところがあれば、僕たちがお手伝いしたいなと思います。うちのお店があることで田舎の生活に彩りを提供するような、そこに付加価値が高まるみたいな、そういうお店がやりたいなとずっと思っていたので、そういう意味では震災前からやっていることの延長線上に僕はいるなという感じはしますね。」


「Hand in Hand」、今日は「気仙沼市復興祈念公園」と「気仙沼湾横断橋」という2つの地域のシンボルを「アンカーコーヒー」の小野寺靖忠さんにご案内頂きました。

「気仙沼市復興祈念公園」は内湾から車で5分くらいの場所にあります。鎮魂と祈りの場所であるとともに、気仙沼の海と町を一望できる眺望がすばらしい場所でもあります。

そして「気仙沼湾横断橋」、通称「かなえおおはし」は3月6日に開通します。2月21日には市民限定のウォーキングイベントも開催予定です。

また気仙沼はこの春からのNHK朝の連ドラ『おかえりモネ』の舞台にもなっていて、きっと『あまちゃん』の時のようにロケ地として盛り上がるはず。コロナ禍が落ち着いた折にはぜひ気仙沼に足を運んでください。ちなみに夜の気仙沼もものすごく楽しいです!胃袋のスペアがいるかも。。



来週の「Hand in Hand」は、大学生たちが取り組んだ、「放射線教材コンテスト」のレポートをお届けします。ぜひ来週も聴いてください。

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