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21.04.15
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熊本県益城町、ふたたび灯をともす老舗商店の5年


全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。今回のテーマは、

『熊本県益城町、ふたたび灯をともす老舗商店の5年』

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2016年4月14日、そして2日後の16日、熊本県を襲った熊本地震。なかでも最大震度7を2度も観測したのが益城町です。町内では住宅の9割以上に当たる約1万棟が損壊、関連死を含め45人の方が犠牲となり、現在も約96世帯281人が仮設住宅での避難生活を続けています。この数は県内最多で、全体の7割弱を占めています。

そんな益城町で、明治創業、100年以上前から商いを続けてきたのが、岡本商店。酒屋さんから始まって、その後、駄菓子を扱うようになり、“町の駄菓子屋さん”として地元の子供たちに親しまれてきました。

地震でお店は全壊となり、仮設店舗での営業を続けていましたが、去年秋にお店を再建しました。
3代目店主の矢野好治さんにお話を伺いました。

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―――元々あった場所は、どちらになるんですか?

益城町の福富といって、県道28号線沿いにお店がありました。

―――震災の時、お店は?

お店は、もう全壊で。とても営業できる状態では無かったですね。そのあと仮設住宅が出来まして、その中に“商店街を作ろう”という話がありまして、だったら、そこにお店を営業したいなぁという事で、震災の5ヵ月後に入らせて頂きました。小っちゃなプレハブの仮設店舗になりますけれど、その時は、「やっと営業が再開できたー!」という、すごく、なんか嬉しかったのを今でも覚えています。

―――きっと昔からあるお店が仮設でもオープンしてくれた事は、地元の方も嬉しかったでしょうね。

そうですね。その時も駄菓子を置いていたんですけど、仮設に住んでいる子ども達が嬉しそうに駄菓子を買いに来てくれている姿を見ると、オープンさせて良かったなぁと思って。

―――そこから、去年オープンしたという事は、4年ですよね。4年経ってこちらに戻ってくるまでというのは、どういった経緯があったんですか?

元々はお店があった県道沿いに再建をするつもりでずっと動いていたんですけれど、地震のあと、道路拡張で4車線化という話が出てきて、元あったお店の土地がほとんど全部、その道路拡張部分にかかってしまって、その場所には“戻りたくても戻れない”そういう状態になってしまったんです。それで仮設の店舗に4年半ぐらい居ました。行き場所がなかったので仮設の店舗で営業を続けるしかなかったんですよ。本当だったらもっと早くお店が再建できていたんですよね。

―――時間はかかってしまいましたが。オープンした時は感慨ひとしおだったんじゃないですか?

そうですねぇ。もう本当、地震の後からずーっと“お店を再建する”ことだけを考えて一日、一日過ごしてきたので。実際、お店がオープンして、しばらくは夢のようでしたね。本当にこれは現実なのかなぁ?と。“こういう日”を目指してやってきたけど、その“こういう日”がまさか来るとは、実際、思えなかったんで。だから今が一番、幸せを感じてます。うん!一日一日、今が本当に幸せです。平凡な一日なんですけれど、お店をオープンして、お客さんが来てくれて、色んなお話をして、お店を閉めて、また次の日が来るという。うん、これが一番幸せな事なんだなというのを、やっぱり熊本地震を経験して学びましたね。


仮設店舗の頃の岡本商店(仮設店舗の頃の岡本商店)
去年9月にオープンした新しい店舗(去年9月にオープンした新しい店舗)
震災の年には、仮設住宅での避難生活をしながら、仮設団地内の商店街でお店を再開。震災前から好評だった移動販売車を使っての出張販売も続けていました。

なんとか100年以上守り続けた県道沿いの元の土地での店舗再建を目指しましたが、それは道路拡張工事のため叶わず。以前取材をした時にも、その理不尽さ、やるせなさ、言葉で表せないほどの葛藤を、矢野さんは吐露されていました。そんな無念さを呑み込み、県道から少し入った場所、先週お伝えした「木山神宮」のすぐ隣に、去年、新しいお店を再開。今回そんな矢野さんが、“今が一番幸せ”という言葉を口にされたことに、差し込む光を見る思いでした。

真新しい岡本商店、入り口には可愛らしいラッピングの移動販売車があって、その向かいの壁には、岡本商店の被災から再生までの経過が、イラストで描かれ、掲示されていました。

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お店を再建するにあたって、やっぱし、一番伝えたかったのは熊本地震の事なんです。ちょうど節目で5年を迎えますけど、5年後も、10年後も、ウチのお店に、特に子ども達、これから先、たぶん地震を経験してない子ども達が増えてくると思うんですけど、そういう子たちが、お店に入る前に、これを見て、こういう事があったんだよと。お店がオープンしたら熊本地震の事は何かしら感じ取れるような、そういう風にしたいなという風には思っていました。

―――楽しくお菓子を買いに来るんだけれど、学びの場にもなっているって素敵ですよね。

そうですね。やっぱし駄菓子もそうなんですよね。子ども達が100円握りしめて、その100円でどれと、どれを組み合わせたら100円分買えるんだろうとか、ちゃんと計算ができるように、うん。だから、結構うちのカミさんとか、厳しいんですよ。子ども達に。例えば、今の子ども達ってPayPayで買い物をしたりとか、100円じゃなくって、500円握ってきたりするんですよ。それで、持っている分全部を使おうとするんで、そん時は、カミさんが「そぎゃん買わんでよか。100円にしとけ。今度来た時に残りは使いなさい。」とか、そんな感じで、子ども達に教えたり、学ばせたり、注意したり、できるところはカミさん凄いなぁと、僕は関心しています。お店側としては500円持ってきたら、500円分使ってもらうのが売り上げも上がるんで、嬉しいんですけど(笑)。で、次の日だったり、2日、3日後に、また来て買ってるとか、そうやって次に次に繋いでいける商売ができたらなと思っています。

矢野さんファミリー(矢野さんファミリー。目を閉じていらっしゃるのが矢野さんの奥さまです。ごめんなさい、シャッターミスりました。。)

場所は変われどこうしてお店を再開。ただ地域の復興はまだまだその途上にあって、我々番組チームもお店に着くのに工事中で通行止めの箇所を迂回しながらようやく到着したほど。街並みの完成、そしてもとの賑わいが戻るまでには、もう少し時間がかかるようです。

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お店を再建して課題が山積みなんですよね。この場所というのも町の区画整理に入っていて、今まさに区画整理の真っ最中で、周りにはまだ家もないし、これから取り壊す家もたくさんあるし、道路も広がるし、橋の架け替え工事も行われているんで、本当にこの場所で商売をやっていくというのが、ものすごく大変なんですよね。でも今が一番大変な時だと思っているんで、来年、2年後、3年後、5年後となっていくと、少しずつですけど町が新しく生まれ変わっていって、先々、「あ、この場所でお店を再建できてよかったねぇ」って、そう思えるような町にしていきたいなぁと思ってます。 

―――そういう意味では、この岡本商店さんが大事なプラットフォームというか、場所になっていきそうですね。子ども達もみんなが集まれるような。

そうですね。やっぱし、週末になるとね、子ども達が本当にどこからともなく、自転車に乗ってね、来てくれるんですよね。なんか、そういう光景を見ていると元あったお店とダブっちゃって、場所は変わりましたけど、また地震前と同じような光景が見れるようになってきたってのは、なんか嬉しいですよね。もっとこれからはですね、たくさん家が建って子ども達が来てくれたり、道路がキレイになって、区画整理だったり道路の4車線化でもともと昔から益城町で商売をされてたお店、住民の方も、地震の後に益城町を出て行かれた方がたくさんいらっしゃるんですが、そういった、お店とか、住民の方がまたこの益城町に戻ってきて、町自体が活性化してくれてばいいなと思っています。ウチだけじゃなくて、益城全体が地震前よりも素敵な町になったねぇ、と、そういう光景が見れればと思ってます。

―――ずっとインタビューしながら気になっているのが、“益城プリン”!冷蔵庫にたくさん入っているプリンちゃんたちなんですが、この“益城プリン”についても教えて頂けますか?

プリンはもともと作っていたんですけど、熊本地震後に、“益城プリン”という名前に変えました。何かしら益城町を盛り上げたいというのと、ボランティアの方だったり、視察の方とか、本当たくさんの方が益城町に来てもらったんで、その人達を笑顔にしたいという気持ちで。じつは地震の時にお店は被害に遭ったんですけど、片づけている時にオーブンが出てきて、動かしたら使えたんで、仮設団地でお店を再開するとき、そのオーブンを使って毎日作り続けたのが“益城プリン”になります。

―――特徴とか、あるんですか?

牛乳は阿蘇の小国ジャージー牛乳を使って作っています。味は3種類。プレーンと、黒ゴマと、コーヒーがあります。


阿蘇のジャージー牛乳を使って、余計な添加物は無し。子供でも安心して食べられるのが益城プリン。口当たりなめらか、やさしい甘さが特徴の美味しいプリンです。日持ちがしないので郵送販売はしておらず、益城町に行って食べるしかありません。

区画整理の工事が終われば、目の前の道は木山神宮につながる参道として、石畳が敷かれ、歩くのが楽しくなるような町に生まれ変わるということですが、まだ数年かかるそれまでの期間、そして今はとくにコロナ禍で移動販売も自粛せざるを得ず、“商売をしていくのは今がいちばん大変”とも、矢野さんはお話しされていましたので、ぜひ機会があれば益城町に立ち寄って、岡本商店の「益城プリン」、味わって頂きたいと思います。熊本空港から車で20分くらいとアクセスも良いです。


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「Hand in Hand」、次回は引き続き熊本県からのレポート。ついに本館の営業が再開した南阿蘇の秘湯、「地獄温泉」のレポートをお伝えします。来週もぜひ聴いてください。

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