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21.06.24
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浜を超えて、次世代のために。 フィッシャーマン・ジャパン 阿部勝太


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宮城県石巻市を拠点に活動する漁師集団「フィッシャーマン・ジャパン」シリーズ3回目。今回はその発起人、代表の阿部勝太さんにフォーカス。

今回お邪魔したのは、勝太さんが生まれ育った石巻市十三浜の大指浜(おおざしはま)という港。

「この十三浜は海藻を育てるのに適した海で、昔から三陸の中でも高い値段で取引されてきた歴史があって。強い潮や激しい波にもまれて育つ、そんないろんな要素が重なって高い値段で取引されるようになっていきました。」

今では海藻を獲る船がズラーと数多く並んでいましたが、ここも津波で壊滅的な被害を受け、勝太さんの自宅や加工場、船も流されたといいます。

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代々漁師の家に育ち、「人生、漁師しか知らないのも嫌だ」と5年間は自由にさせてもらうことを条件に、東京や愛知で働いてから地元に帰って漁師に。その2年後にあの震災を経験。それをきっかけに意識が変わったと言います。阿部勝太さん、当時25歳でした。

「震災後おれは正直迷ってたんです。借金背負うのはわかっていたので。ただ親父がやるって言いだしたので、ちょっと早かったけどそのタイミングで代替わりかなと思って。それで本気になっていったというか、スイッチが入ったという感じでしたね。
どんな商売もそうだけど、売上は数量×単価。漁師はどっちも読めない商売。数量は自然相手なので読めない。単価は市場に出せば競りだし漁協に出せば入札だし、自分たちに価格決定権がない。そうなると商売している中で予測がつかない。じゃあどっちがコントロールできるのかっていうと、価格を安定させるしかないと思って漁協や競りに出すのをやめて、認めてもらった個人や企業に自分の手で売りたいと全て販売までやっています。」

―――商品に自信がないとダメだし、それが伝わらないとダメですよね

「自分が思い込めて作っているので自分のが日本一だと思っている。自分のものを過大評価しやすい。消費者やスーパー、飲食店の方々などのリアルな声も取り入れながら取り組むのは震災前とは大きく違うところ。僕らは今まで入札で一等とるための作り方だった。でもその一等がお客様にとって一等級なのかはイコールではなかったんです。わかりやすいのは昆布。色が濃くて肉厚なものが一等級と言われていたから僕らそれに向けて作っていた。でも煮つけにするにはいいけど、サラダとか酢の物で食べると固いというクレームがたくさん届いて。それで肉厚にすればいいってもんじゃないよなと。今は100%は無理だけど自分たちの作りたい葉肉の厚さにつくっています。
だから自分で商売してみて一番良かったのはたくさん消費者の声を聴けたこと。クレームの中から学びがあるので、よりお客さんが満足するものに近づけていきたい。」

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宮城県石巻市、十三浜のワカメ漁師 阿部勝太さんはこうしたノウハウが先進事例になればと
2014年、浜を超えた漁師集団「フィッシャーマン・ジャパン」を立ち上げます。

水産業を「カッコ良くて、稼げて、革新的」な産業に変えるため担い手の育成や販路の開拓、アパレルメーカーとのコラボ商品などさまざまな取り組みにチャレンジし始めます。

「なぜあの団体を立ち上げたかったかというと、僕らあの震災をうけて急に生活が変わるという体験をしたんです。その当時、なんとかしなきゃとネットでヒントを見つけようとしたとき、儲かる漁業、最先端の漁業などの事例が2011年の段階で全く出てこなくて。何をヒントにしたらいいだろうと思ってすごく悩んだんです。結局、僕は農業から学んだんですけど。
なおかつ震災後、海も少しずつ変わってきて、マニュアルが通じなくなった。親父たちが何十年も積み重ねてきたものが通じなくなってきて。その中で新しいことにチャレンジしなきゃいけない人たちがこれから増えるだろうと思ったときに、同じように何もヒントが出てこないのは苦しいよね。震災後、いろんな面白いチャレンジした漁師たちと話す機会が増えたので、そういった人たちとチーム組んで、それがうまくいくこともあれば失敗することもある。でもチャレンジした結果が履歴として残すことを、僕らがやらなきゃいけないんじゃないかなと思ってて。世の中サステナブルとかSDGsとか、マイクロプラスチックとかいろんな課題が出てきたときに、僕らもやれることやってみようと思ってて。だから新しく「フィッシャーマン電力」をやったり、そういった未来につながりそうなことに関しては「漁師×〇〇」をやってみる。うまくいけば先進事例となるし、失敗したら失敗事例として残るからどっちにしたっていいよねって、今一生懸命にやっています。」


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この一次産業を守っていくには、「人と環境と経済」3つの柱が必要で、どれが欠けても商売として成り立っていきません。そのためには、フィッシャーマン・ジャパンのような団体だけでなく私たち消費者も一緒になって考えていく必要があります。その1つの手法として勝太さんは、都内の小学校で子供たちに食育と給食をセットで伝え始めているそうです。学ぶだけじゃなく、味わうことで興味がわいて、そこから考えてもらうきっかけになればということ。これからもフィッシャーマン・ジャパンのトップランナーとして活躍が期待される阿部勝太さん。ぜひお近くのスーパーなどで「十三浜・阿部勝太」の昆布、ワカメを見かけたらぜひお試しください!おススメですよ。


阿部勝太さんはじめとした漁師組合「浜人(はまんと)」 公式サイト
https://www.hamanto.com/

フィッシャーマン・ジャパン 公式サイト
https://fishermanjapan.com/


「Hand in Hand」。来週はいまが旬!ホヤの魅力をたっぷりお届けします。
フィッシャーマン・ジャパンのホヤ漁師・渥美貴幸さんに「ホヤの聖地」と呼ばれる浜で船に乗せていただきました。来週もお楽しみに!

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