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21.07.15
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なでしこジャパン高倉監督、故郷・福島への想い


全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。今回のテーマは、

「なでしこジャパン高倉監督、故郷・福島への想い」

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「阿武隈川沿いに住んでいたんですけど、土手とかそういったところは自分の遊び場で、夜釣りして遊んだり、あとはよく川沿いを走ったり。東京に出てきてからも帰れば必ずその土手沿いをゆっくり走って気分転換をしたり、そういった時間が自分にはすごく癒しでしたし、まわりが山で空が青くて、そういったところはいつも助けられていたので、そういう風景というのは何か辛いことがあるとちょっと思い出す場所ではあったので、東京オリンピックが終わったら時間を見つけて1人でこっそり帰って、土手を散歩したいなと思います。」

そう語るのは、サッカー日本女子代表“なでしこジャパン”の高倉麻子監督。高倉監督は高校生までを福島市で過ごした福島県人です。

いよいよ東京オリンピックが開幕。23日の開会式に先駆けて、21日には高倉監督率いる“なでしこジャパン”が札幌ドームで初陣を飾ります。対戦相手はカナダ代表。

新型コロナウィルスの感染拡大による、大会の1年延期、感染対策に気を配りながらのトレーニング、そして観客をめぐる混乱など、大変な試練があったなか、なでしこジャパンはそれを乗り越え、オリンピック・2大会ぶりのメダル獲得へと挑みます。

今回の「Hand in Hand」は、そんなサッカー日本女子代表・高倉麻子監督のインタビュー。いよいよ始まる戦いへの意気込みはもちろん、福島県出身・高倉監督が想う福島の復興についてなど、お話を伺いました。


今春、1年遅れで聖火リレーがスタートした、ナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」は、福島県広野町と楢葉町にまたがる、広大なスポーツ施設です。男女ともにサッカー日本代表は、ここを拠点に合宿を重ねてきました。

4年に1度の特別な戦いが延期となり、はたして開催できるのかどうかすら分からなかったこの1年。サッカーに全てをささげてきた選手やコーチたちは、どんな気持ちで日々を過ごしてきたのでしょうか。

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「本当に思いがけない延期だったので、最初はもしかして中止か延期というのは報道でもありましたし、緊急事態宣言などが発令されて、選手も私自身も自分の生活からサッカーが消えたという状況があって、やはり選手にとってはサッカーというのは生きる中での全てという選手もほとんどですし、それも奪われて先も見えない不安の中で時間を過ごして、ようやく去年の秋口に合宿をやったときのみんなの表情を見たときに、やはり当たり前じゃないんだということを感じながらの集合だったので、若い選手が多かったですけれども、サッカーに対する思いや、オリンピックがもし開催されるのであれば、女子サッカーのため、自分自身のサッカーのため、そして日本のため、そこで何とかプレイをしたいとか、本当にいろんな思いがあっての合宿だったので、その時にすごく選手に変化を感じましたし、それから今まで活動をしてきてメンバー選考まできて、本当に最終段階に入っていますけど、やはり戦う覚悟というのは強いものがあるんじゃないかなと思います。延期となったこの1年間は、切り替えて、時間をもらったという発想で進めばそんなに大きな打撃がなかったのかなと思います。成長できる時間をもらえたとポジティブに意外と感じながら過ごせたのかなと思います。」


〜なでしこジャパンで印象強いのは2011年東日本大震災の後のW杯でアジア勢のチームとして初優勝したあのシーン。今回、災害ではなくコロナ禍に翻弄される中での開催にこぎつけたオリンピック。同じように周りからは“奇跡をもう一度”と期待する声も大きいのかなと思うのですが?

「今度は自分たちもそういった形で何かを残したいという思いはあると思います。決して簡単なことではないですけれどもやはり、ああいった戦いができる“なでしこの血”を受け継いでいるとは思いますし、変な風に意気込むことはなく、目の前にやれることを精一杯やるということだと思うので、良い結果が残せてたくさんの方々に喜んでいただければ本当に嬉しいですけれども、あんまり大きなところからスタートするのではなく目の前にあることを1つずつ、一生懸命やっていくことが1番のそこにたどり着くたったひとつの道なのかなと思います。」


福島県福島市出身の高倉監督。生まれ育った「福島の復興」については、どんな想いを持っているのでしょうか。

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「やっぱりみんなが傷を被った東日本大震災、原発事故で、私の地元の友達や両親もそうですけれども、大変な思いをして、時間は過ぎましたけれどもまだまだ復興していない状況はあちらこちらで聞くことができますし、いつも気になっています。またその中でJヴィレッジが復活して、私たちも合宿でお邪魔していますけれども、ちょっとずつ光が見えてきたのかなというのは嬉しいと思いますし、この五輪を少しでも皆さんのパワーになって行けたらいいなと思っています。1日も早い復興を願っていますけれども、私たちはサッカーを、やれることを1日1日積み重ねていくということが、どこかで復興の途中にいる方々の元気になるちょっとした要素になれれば良いなと、小さな力でもなれれば良いなと思っています。」


〜私も偶然Jヴィレッジに伺った時になでしこの皆さんが練習されているのを横目で見てすごく、楽しみだなと興奮しながら見ていたんですけれども、監督から見て今のチームの状態はいかがですか?

「悪くはないと思います。ただ、すごく良いなと思っていても大会に入ったらまたぜんぜん別ものだったり、逆に大会直前までまったくだめでも本番で力を発揮することなどは当たり前にあることなので、本当にここからいかに、チームの、もちろん戦術的な部分もそうですけど、みんなの心の部分の士気をいかに上げていくか、みんなが1つになっていくことが大事なのかなと思います。」


〜今回のオリンピック、グループE、4カ国のうちカナダとイギリスが日本よりランクが上、このグループのトップを目指すが、フィジカルの強い海外勢との戦い方はどう描いていますか?

「体の大きさは弱点に見られがちだし、実際、相手のその舞台、土俵に乗ってしまえば、勝てない要素は何個かあります。ただその土俵を自分たちのところに乗せて、フィジカル的な要素といっても、俊敏性であったり、持久的な動きであったり、そういったサッカーには大事な要素のいくつかは自分たちが決して劣っているわけではないし、何よりも組織的に役割を理解したり、約束事を理解してそれをグラウンドで表現していくことに関しては、日本人は本当に長けていると思うので、そういった武器で賢く戦っていきたいと思います。」


〜変なことを聞きますが、若い世代、Z世代とか言われますが、チームの中で若手とベテランで違いみたいなものはありますか?

「だいたい女子サッカー自体が体育会系の気質がないですよね。先輩後輩もないですし、下の子が上の子をいじってたりというのも平気でありますし、ゆるめですね。ただお互いをリスペクトしたり、意見を言い合ったりというところはオープンですし、互いの良さを認め合って足りないところを補いやって、そうやって支え合っているのがなでしこの良いところでもあると思うので、本当に雰囲気は良いですし、とにかくここからだと思うのでゆるまず進んでいきたいです。」


「いよいよ東京オリンピックが始まります。なでしこジャパンは開会式の前に試合があるので、第一戦という意味でもすごく大切な試合だと思いますし、オリンピックの先頭を切って戦うという意味でもとくに第一戦は大事な試合になると思います。とにかく全力であきらめず最後まで戦う事は約束できますので、そこに皆さんの力をぜひ加えて頂いて、みんなで一緒に戦って良い勝利をあげたいと思いますし、その先も、他の種目の方々と一緒に良い風を吹かせながら進んで行けたら良いと思うので、ぜひなでしこジャパン応援して頂きたいと思いますし、なでしこジャパンだけではなくU20の男子代表もそうですし他の種目も含めて、なかなかスポーツ選手が今こういった形で応援してもらいにくいというか、風の中でもぜひ一生懸命戦っている姿を応援して頂きたいなと思います。」


生きがいであったサッカーと離れざるを得なかった辛い日々を乗り越え、いよいよ戦いに挑む“なでしこジャパン”。その日々があったおかげで、普通じゃない、サッカーが出来ることのかけがえのない大切さを知った選手たちが、いよいよ待ちに待った大一番に臨みます。こうして現場の方に、“応援してもらいにくい”なんていう言葉を口にさせてしまっている現状に歯がゆさを感じますが、たとえ会場に行けなくても応援の気持ちはきっと届きます。“なでしこジャパン”、そしてオリンピック、パラリンピックに出場するすべての日本代表選手へ心からの応援を送りたいと思います。

東京オリンピック、女子サッカー、グループE・なでしこジャパンの試合は、第1戦カナダ戦が21日(水)よる7時30分から札幌ドーム、第2戦イギリス戦が24日(土)よる7時30分から札幌ドーム、第3戦チリ戦が27日(火)よる8時から宮城スタジアムとなっています。

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「Hand in Hand」、来週は、岩手県宮古市からのレポート。三陸鉄道沿線の美味しいものを味わう、「三鉄沿線駅1グルメ」をレポートします。来週もどうぞお楽しみに!

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