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21.12.23
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福島フロンティアーズ〜故郷・富岡から、双葉郡の未来を繋ぐ 平山勉さん


全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。今回のテーマは、

「福島フロンティアーズ〜故郷・富岡から、双葉郡の未来を繋ぐ 平山勉さん」


【今回のダイジェスト動画はこちら】
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双葉郡を繋ぐ活動を続けるその訳とは。

震災を経て、Uターン・Iターンで福島県に拠点を移した「移住者」たちの、夢の実現へ向けた取り組み、新たなチャレンジにスポットを当ててお送りする「福島フロンティアーズ」、今回スポットを当てるのは平山勉さん54歳。双葉郡の8町村の復興を進める「双葉郡未来会議」を立ち上げた方。そして富岡町の情報発信スペース「ふたばいんふぉ」や、併設する「cafe135(ひさご)」などを通じ、地域の情報発信をはじめとしたさまざまな活動を続ける福島復興のキーパーソンのおひとりです。

平山さんは震災前の2009年に東京から故郷・富岡町に戻ってきた“Uターン組”のお一人でもあります。一度は故郷を離れた平山さんが富岡へ戻った経緯、震災を経て地域のために働く道を選んだ理由、そして平山さんから見た、富岡をはじめ双葉郡の「いま」とは。

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「基本的に高校出るまで、18歳までは富岡にいたので、海、夜の森、川、山、自然の中で育ってきた感じですね。いま漁港があるところはもともと漁港じゃなく砂浜だったんです。小石が多い砂浜で、海水浴場ではなかったんですけど、でも泳いでいたんですよ。部活で汗だくになってジャージのまま海に飛び込んだりね。上京したのは18歳のとき、高校出てから。その時は“絶対に富岡なんて帰ってこない”と思っていた。東京で一旗上げるくらいの勢いで、若気の至りというのかな。そういう気持ちで東京に旅立ちました。東京ではいろんな仕事をやりましたけど、それも含めて良い経験でしたね。

―――それから戻ってきたのはいつになるんですか?

2009年、24年ぐらいは東京にいて。いろんなタイミングが重なったんですよね。当時自分も40代半ばで、なんとなく都会生活にも疲れてきて、両親も年老いていくわけですよ。自分だけ東京でこんなに楽しく、チャラチャラやっていて良いのかなという思いも湧いてきたり。時代が時代なので、ネット環境があればいろいろ音楽の仕事もできるようになってきたり、そういうのもひっくるめて音楽の仕事はこっちに持ってきて。実家はビジネスホテルなんですけど、ホテルの仕事もできるんじゃないかということで考えて、踏ん切りがついて戻ってきました。なので仙台のバンドや山形のバンド、福島のアーティストのCDをリリースしていましたね。

―――震災があったのはその2年後ですね。

当時、何か自分のことでどう思うという余裕はありませんでした。一気に状況が変わって、家には住めなくなって何もかもが変わってしまったので。最初いわき市の親戚のところに避難して、それで何箇所か転々として、そのうち親が亡くなったりして、最終的に広野に移って、広野から富岡に戻ってきたんですけど、広野までを避難生活と呼ぶのであれば6年間は避難生活ということになりますね。

―――その時の気持ちというのはどんなものだったのでしょう。

端から見ると大変な状況ではあったけれども、周りの人たちも頑張っていて、そういうのを見ていると自分もやらなきゃいけないなという風に思えるわけですよ。なので後先顧みずできること、やるべきことをやってきたというこの10年でしたね。」



(2020年春、常磐線が全線開通となった時に平山さんに取材した際の夜ノ森での写真。この時は開花前でしたがこの桜並木が富岡町の自慢です)


東京では音楽プロデューサーとして活躍。2009年にUターンしてからも地元でレーベルを立ち上げ、音楽との関わりを持ちながら、家業のビジネスホテル経営にも携わっていた平山さん。そしてUターンの2年後に東日本大震災が起こります。立て続けに大きな転機が訪れるなか、「双葉郡未来会議」を立ち上げるなど、復興へ向けての歩みを続けています。その推進力となる思いとは。

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「全部必然だと思っていて。小さくても自分がやらなきゃいけないこと、できること、踏み出して広めて。そんなことの連続だったと思いますね。最初からどんどん何か大きいことをやろうというのではなくて。双葉郡未来会議は2015年位に始めたんですけれども、双葉郡の人たちが全国散り散りに避難して、住むところもバラバラになってしまって、つながるきっかけがだいぶ激減してしまったという中で、何とか双葉郡の人たち同士の新しいつながり、コミュニティを作りたいという気持ちと、あとは双葉郡の現状を発信する、知ってもらうということを基本に挙げていましたね。当時メディアで溢れる福島情報というのに、地元の自分たちとしては“それは違うんじゃないか”ということがあまりにも多すぎたので。地元の事は地元から発信しなきゃいけないという気持ちで、双葉郡未来会議の中での発信を始めました。双葉8町村のそれぞれの住民が集まって・・・いま「ふたばいんふぉ」という冊子を毎年作っているんですけど。こういう形で自ら地元のことを地元の自分たちが発信する。あと節目節目で、例えば双葉・大熊・夜ノ森の一部が立ち入り規制緩和になったり、常磐線が全線再開通した時にも、5つの駅に撮影部隊を全部入れてドキュメンタリーを作ったんです。そういうこともあったりね。

―――平山さんが感じている今の課題は何ですか?

双葉郡全体で見れば、やっぱり双葉町が復興の度合いでいうと遅れている。来年一部避難指示が解除される予定だったり。やっぱりその解除した時期によって復興の進捗の度合いが全くバラバラ。すごくグラデーションになっているので、一概に福島、一概に双葉郡ということが表現することができないくらいなので、そういうところをちょっとずつ埋めていく作業なのかな。どこの街もそうだけれども、ゼロからのまちづくりに挑戦しているわけで、そういう意味ではやりがいがすごくある。楽しいというのもありますけどね。そういう仲間が集まって増えて、人のつながりが増える、やりたいことが増える、そういうところで協力していくという作業が楽しいので続けられているというんじゃないかなという気がしますね。

―――18歳の時に富岡を出た自分は多分、地域のためにこんなに熱意を持って仕事をしているなんて想像しなかったでしょうね。

そりゃそうでしょう。ただ地域の為、誰かの為、人の為、そういう意識は自分の中にはないんですよ。その為に何かをやるのではなくて、その為に“何もできない自分が嫌”なんです。わかりますかね、その違い。それはやっぱり震災当初にすごい無力感に押しつぶされそうになって、避難先でテレビを見て、原発が爆発している危ない状況が続いて。そういう圧倒的な大きな壁の中で自分は何もできないわけですよ。その無力感をちょっとずつちょっとずつこじ開けていくというか、払拭していくというのがひとつのモチベーションになっているので、とくに地域の為、誰かの為という意識ではないです。

―――乗り越えていく、こじ開けていく、開けてきた、変わってきたところもありますか?

もちろん。百点満点で言ったら0だったものが5点くらいにはなってきたかなという。5点なので、だからまだまだまだまだという意識ですけどね。」




(「ふたばいんふぉ」と「cafe135」)


「やっぱり戻ってこない、戻って来られない人が多い中で、これからは転入、移住していく方が増えていくと思うんですよね。そっちのほうの割合がどんどん増えていくだろうという中なので、新しいコミュニティという意味でいえば、そういう人たちを含めて新しいまちづくりというのをしていかなきゃならないので。何とか地元の人と新しく入ってきた人とをうまく繋げて、新しいコミュニティづくりの一端を担えれば良いなとは思いますけどもね。

―――UターンやIターンの先輩として平山さんのアドバイスは?

実際この1年だけに限っても、UターンIターンでこっちに戻ってこられた方と結構知り合って、今でも日常的につながっていたりするんですよね。だからそういう人たちに関して言うと、やっぱりどこかにチャレンジ精神ってあると思うんです。さっきも言ったゼロからのまちづくりに参画するやりがいだったり。Uターン組に関して言うと、“疲れたら帰ってくれば良いんじゃない?”くらいの軽い気持ちです。自分もそんな気持ちがあったようにね。こっちでもできる事はあるよ、やるべき事はあるよと。Iターンの人に関して言えばチャレンジしに来てください。今いろんなところで移住に関するモニタリングツアーをやっていますけど、自分の所でもやったりするんですよ、そういうのを。双葉郡未来会議にしてもIターンやUターンの方をどんどん入れているので、もうウェルカムですよ、来るからには強引でも仲間に入れてやるくらいの意識はありますよ。みんなでつながって行くことでコミュニティも広まっていくし、まちづくりもうまく行くんじゃないかと思いますね。」


今回のテーマは、「福島フロンティアーズ〜故郷・富岡から、双葉郡の未来を繋ぐ 平山勉さん」。まだまだ課題が山積する双葉郡で、平山さんの取り組みは続きます。

双葉郡未来会議
ふたばいんふぉ


【プレゼントのお知らせ】
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ご希望の方は、まず動画をご覧になってキーワードをチェックしてください。動画の中で平山勉さんに、“富岡町のいいところは?”という質問をしていますが、その答えが、プレゼントのキーワードです。このキーワードを書いて、このホームページのメールフォームからご応募ください。

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双葉郡を繋ぐ活動を続けるその訳とは。
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来週の「Hand in Hand」は、宮城県気仙沼市からのレポート。漁師を身近に感じる観光づくりに励む女性たち、「気仙沼つばき会」の、小野寺紀子さんのインタビューをお届けします。来週もぜひ聴いてください。

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