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22.01.13
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陸前高田を移住者の目線でブランディングする〜鍛治川直広さん


今回のテーマは、『陸前高田を移住者の目線でブランディングする〜鍛治川直広さん』。

岩手県陸前高田市を拠点に、大船渡市、住田町、宮城県の気仙沼市、通称「気仙」と呼ばれる地域で、様々な地域ビジネスに挑戦しているのが、「ぶらり気仙」代表の鍛治川直広さん。まだ40代前半で、東日本大震災をきっかけに、東京からこちらにやってきた移住者でもあります。

震災前は東京・下北沢で町の活性化に関わるお仕事をしていたという鍛治川さん。陸前高田市、広田半島という半島の付け根にある、まるで旅館のような一軒の民家で、お話を伺いました。

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「―――今日お邪魔しているのが、新しいけど古民家風に見える家、これは鍛治川さんのお宅ですか?

これはうちの会社の本社です。先月ぐらいに引っ越しして。来てから10年経ってこれを機にここで居を構えるために家を買って本社としました。

―――購入されたんですね。10年経って。そもそも鍛治川さんは陸前高田出身ではないんですよね?

東京生まれ東京育ちで、陸前高田は震災の年の秋に、東京の商店街で集めた募金を届けに行ったことがきっかけで初めてお邪魔しました。たまたま下北沢の商店街に陸前高田出身者がいて。

―――どんな経緯で移住することに?

僕の場合は東京で仕事をしていたので、ボランティアだと仕事が忙しくなると絶対来なくなるのが分かったので、そうすると今まで出会った方と疎遠になってしまうのが嫌だったので、やるんだったらビジネスとして立ち上げれば必然的に足を運ぶし、知り合った方々ともずっと今後も関係が続けられると思ったので、ビジネスとしてできるならずっとやると決めて、こちらの土地に入りました。

―――東京での仕事を辞めて、陸前高田へ?

厳密に言うと東京でも地域活性の仕事をしていたので、地域と地域をつなげることができればお互いの街のために良いと思っていて、だからいま陸前高田でもこっちの海産物や農作物や地域資源を活用して商品開発、体験観光をしていて、それを首都圏や大都市に持っていくということができると、それは復興支援というかお互いの街が元気になるということでやっているので、厳密には仕事を辞めたという感じではないですね。あくまで延長線上で。

―――拠点を陸前高田に移してまでやろうという行動の原点は?

僕は大学卒業してサラリーマンを7年ほどやっていて、悶々としていた思いがどこかに有ったんですが、社会人になってビジネススクールに通ったりしてスキルはついた。でもそれが誰かに喜んでもらわないと宝の持ち腐れで意味がないということをある先生に言われて、それで人に喜んでもらうことできちんと収入も得られるものを考えた時に、今の陸前高田での仕事はすごく良いなと思って。働き方としては一番いいんじゃないかなと思うんですけどね。」


「本社は陸前高田にあるんですが、隣接地域の宮城県気仙沼や、岩手県の大船渡市、住田町や陸前高田という『気仙』と呼ばれる4地域を活動エリアにしていて、地域資源・宝が豊富なので、その宝をいかに発見してそこから商品サービス開発をして知ってもらう、大きく観光サービスと特産品の開発販売になります。

―――震災前も皆さんは加工品を作ったりお魚を取ったり地域の名物はあったが、その魅力をもっと高めて、外に出していくというイメージですか?

震災前がどういう風にされていたのかはちょっとしか聞いたことがないですが、僕の場合は東京から来たよそ者なので、よそ者から見て“こういうのがあったら面白い”とか、“こんなふうにしたら興味を持つ人が増えるんじゃないか”という。もちろんこの地域はいまも豊洲で毎年最高値を取る牡蠣が生産されていたりするけど、それがなかなか知られていないところもあるので、よそ者だからこそ今までにない考え方ややり方をすることによって、新しい市場を作り出すことが役割なんじゃないかと思っています。

―――実際にやった商品、イベントについて教えてください。

この地域の衰退を緩くするには外からお金を持ってくるしかなくて、そのためには観光サービスで外の人がこっちに来て楽しんでお金を落として頂くということと、商品を作ったりして外で販売していくという2つですよね。そういう意味で、たとえば牡蠣は冬場のイメージだと思いますが、実は漁師さんがいちばんおススメするのは春なんですね。それが知られていないし市場でも単価が低いので誰も取り組まなかったんですが、いちばん美味しいのは漁師さんはわかっている。そこに対して、『雪解け牡蠣』という名前で商品化したり、あと2013年から東京・下北沢で、もう20回ほどやっていますが、年に3回ほど、陸前高田と周辺地域のお酒、海産物を味わえる物産イベント、下北沢の飲食店に協力してもらって期間限定でこちらの牡蠣が食べられるフェアをさせて頂いています。知られていないということが一番の課題なので知ってもらって、“もっと美味しいのを食べたければ地元に来い”と言うのを作り出そうとしています。そのほか、ここ数年いちばん力を入れているのが、“海中熟成”です。陸前高田は日本酒の蔵元があったりワイナリーがあったりしてお酒が昔から作られていて、それを海に沈めて熟成させる取り組みを2017年12月からやっています。そうすると波の揺れや音波でお酒がまろやかになって旨味が増したりするという変化が科学的にも出ているので、観光サービスに関しても、もともと漁業体験で来られた方が船に乗って牡蠣の養殖の筏を見に行ったりワカメの様子を見たりというのはやっていたんですが、その延長線上で、自分でお酒を漁船に乗って海に沈めるんですよね。それを楽しんでもらうのがひとつ観光としてありますし、その他にも商品開発としていまはコーヒー豆を海に沈めて、それも味が変わることがわかっていて、地元のコーヒー屋さんとコラボして豆を海に沈めてやっています。」



10か月海中熟成して水揚げする。そうすることで旨味が増すことは味覚センサーの測定で分かっている。ただなぜそうなるのかは理由が分からない、ということで鍛治川さんは、“海の神様の力”とお話しされていました。

そしてこれを体験する人は、海に沈める時、水揚げするときの、計2回、陸前高田に来ることになる、そして広田湾の海で熟成したお酒と、広田湾の豊かな海の恵みも味わってもらえるという、完璧なプロジェクトでもあります。結婚を控えた男女が前撮りを兼ねて沈めに来て、それを結婚式の引き出物に、というロマンティックなアイデアもオフマイクでのお話にありました。

実際に海中熟成されたコーヒーと熟成していない通常のコーヒーを、コラボしている陸前高田のコーヒー店「東京屋」さんに送って頂き、試飲させて頂きましたが、明らかに味わいが違いました。海中熟成したものは口当たりが柔らかになり、あと味もスッキリとしています。一方のお酒がどう味変するのか、ぜひ味わってみたいものです。

こういう斬新なアイデアを次々打ち出す鍛治川さん。さらに大胆な、そして少子化対策にもつながりそうな企画も教えてくれました。

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「商品開発としてちょっと考えているのが、“性欲が強くなるメニュー”です。

―――あ、牡蠣もそうですもんね。亜鉛たっぷりで。

そう、牡蠣もイシカゲガイもタウリンがめちゃめちゃ多いんですよ。それを知らずに食べて、夜に盛り上がって、“あ、子どもができちゃった、陸前高田の時の子どもか〜”みたいな(笑)。この土地って震災で悲しみもたくさん生まれたけれど、一方でこういうふうに命が生まれる町にしたいというのがあって。これは牡蠣、いけるんじゃないか、イシカゲガイもあるし、ナッツもチョコも陸前高田として生産もしているので。そういうのをやりたいと思っています。」



「陸前高田、私生活と仕事面で考えると、私生活ではご飯がおいしい、お酒と食事。こっちで海産物を食べると他の地域で高い金を出すのが馬鹿らしくなるんですね。仕事に関してはすごく面白いです。語弊があるかもしれないですが、宝がたくさん眠っていくのにその開け方がわからない、その活用法がわからないという状態なので、海・山・川の地域資源が豊富でそれに関わっている熱い思いを持つ仲間がたくさんいるけど、彼らがどうして良いか、うっすらとこうやりたいと分かっているが実現方向がわからなくて苦しんでいる状態なので、そこを一緒になって取り組んでいくことがやりがいと充実感。お金はだんだんついてくるので、そういう意味ではいろいろやりたい人はぜひ来てほしいと思いますけどね。

―――まだまだ、開いていない宝箱、開けるべき箱がたくさんあるんですか?

めちゃめちゃありますね。最初この家を買うときに金融機関に融資を相談するときに、アイデア・・・事業を挙げたら100以上になって、それを中でこれをやってみたいあれをやってみたいということが10個か20個あるんじゃないかな。それは誰がやっても良いと思うので、そういう仲間がどんどん増えていくとこの町は面白いし、その人にとっても楽しくなるんじゃないかなと思うんですね。」


生き生きと地域の魅力を語る鍛治川さん。「ぶらり気仙」の、海中熟成酒、海中熟成珈琲などのプロジェクトは、クラウドファンディングも実施です。詳しくは、「ぶらり気仙」のFacebookページをチェックしてみてください。情報も満載です。

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来週の「Hand in Hand」は、11月に番組も参加して行われた福島県の海の魅力を伝えるオンラインツアー、「福島の海を満喫/よゐこ濱口さんと行く!福島の海/オンラインでつながって、作って、食べて、旬の味を楽しみましょう♪」のレポートをお届けします。来週もぜひ聴いてください。

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