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22.02.03
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福島をめぐるヘルスリテラシー


東日本大震災と福島の原発事故から11年。原発の周辺地域では放射線の健康や自然への影響を正しく理解する取り組みが続いています。先週に引き続き、福島で臨床や研究にあたる二人の医師、坪倉正治先生、後藤あや先生のインタビューをお届けします。


福島県立医科大学主任教授・坪倉正治先生は、震災直後から福島県南相馬市に入って地域の放射線教育や住民のケアに心をくだいてきました。


福島県立医科大学総合科学教育研究センター・後藤あや先生は、震災後の福島における妊娠と育児について調査・研究を行っています。

今回は、「福島をめぐるヘルスリテラシー」。そして「復興を通して培った“地域の力”」がキーワード。
「ヘルスリテラシー」とは、一般的には、“自分にあった健康情報を探して、理解して、使える力”のことを指します。福島では原発事故のあと、放射線に関する正しい知識や新しい情報を共有する取り組みが続いてきました。その過程で後藤先生は、「伝える力」も重要だと、気が付いたといいます。


後藤 「最近リテラシーという言葉があふれていますが、ヘルスは健康なので、健康に関する情報をいかに入手して使えるようになるか、というところからきています。そうすると患者さんや住民の力を求めてしまって、放射線についてわたしたちが説明したときに、あなたが理解できないのはあなたのヘルスリテラシーが低いから、となってしまいかねない。なので最近はヘルスリテラシーの定義が広がって、専門職がいかにわかりやすく伝えるのか、ということも含めて、ヘルスリテラシーの概念の中に含まれるようになってきました。どこがもっと知りたいのか一緒に考えていく、情報を一緒に作り出していきましょうというのが、ヘルスリテラシーの一番大事なところになっています。」

―――福島でヘルスリテラシーを考えるとき、どういうことが大切ですか?

後藤 「伝える力です。保健医療従事者を中心に、こんな考え方なんですよというのを教えるような研修会を実施しています。また子供たちに放射線の基本的な情報を与えたときに、子供たちがそれをどう考えて、どう周りに人に伝えるか、生活のなかでどう使えるか。それが最終的には偏見や遺伝的影響に対する科学的なことと違う誤解を将来的に弱めていくようなきっかけになるかなと思うので、子供たちの表現力を高める、という活動もしています。」


―――確かな数値、統計に加えて、地域の人の声や体験した人の声も今は大切になっていますか?

坪倉 「エビデンスといわれるデータをまとめて定期的に伝えることですら、なかなか実現しづらいと感じています。かつ、実際の数字を日常生活の疑問にあわせた形で提供すること、例えばコロナなら日本全国でいま感染者が何人です、という情報を自分の日常生活にどう落とし込むのか、というところを、伝える側に求められていることですね。」

後藤 「基本的にはヘルスリテラシーの定義が、エビデンスの中に「数値のエビデンス」だけでなく「心や気持ちの動き」もエビデンスだと捉えようと定義がふくらんできたんです。そこが非常に重要で、例えば、ある病院のサービスの質を考えたときに、患者満足度というグラフがある。そのほかに「病院長さんへ」という文句が書いてあるものが一緒にでてきたときに、わたしはその要望のほうを先にみるんです。グラフより生の声を見る。ストーリーや人の声が持つ力ってすごく強いと思うので、エビデンスにはデータと声の力、両方入れたほうがいいと思います。」


「さまざまな偏見に立ち向かうためにも、正しい知識を身に着けてほしい」と話す坪倉先生は、環境省の「ぐぐるプロジェクト」にも携わり、語られることが少なくなった原発事故や放射線の基本的な知識を、次の世代に向けて発信し続けています。

なぜなら東日本大震災から間もなく11年。「震災」や「原発事故」を知らない子供たちも育ってきているからです。

坪倉 「僕は毎年小学校や中学校で、同じ授業を9〜10年やっていますが、一番強く感じているのは、そもそも震災を知らないから放射線の話をなぜ学ばなければいけないか、そこに時間をかけなければいけない。以前なら放射線の授業をしますといったら、それで生徒も理解した。でもいまは、原発事故って聞いたことがあるかも、みたいな他人事なケースが増えて。そもそも原発事故のことを考えることが日常でも必要なくなってきた、それはいいことであるんだけど。

いまの状態で大人全員にまんべんなく放射線の知識や情報を伝えようとは、僕自身は考えていないけど、ただお子さんに対しては基本的なことをしっかり学校で学べる、ある程度備えておかないと・・・。自分の経験からして、私の親が広島に対する偏見が結構根強かった。それを子供心にずっと覚えていて。福島の子供たちが20年後、30年後、同じようになるのは違うんじゃないかと。今こういう問題を扱って活動するのは、自分たちの責任だろうと感じているので、みんなが触れなくなったらやらなくていい、惹起しなくていいというのは、僕は違うんじゃないかと思っています。」



また放射線教育や調査研究に加えて、お二人はこの2年、新型コロナウイルスの感染対策にも追われました。

―――コロナの感染予防が大きな課題となっています。原発後に培った福島の地域のネットワークや絆がコロナ対策に役立ったということはありますか?

坪倉 「コロナの状況は原発事故の後の状況と、いろいろな意味で似通っています。目に見えないからこその恐怖や偏見、ほんとによく似ている。そういったことを経験しているからこそ、健康対策全般とか社会変化や環境変化にいち早く対応しなければいけないと動いてくれる行政や病院の方がすごく多くいて。それは復興の中で培われた力だと思います。私事ですが、コロナのワクチンを打ったあとの抗体がどのくらいあるかを調査を福島県内で組んでいますが、2500人くらいに採決させてもらって、南相馬や平田村で検査をさせてもらっています。国内でもかなり大規模なもの。これ自体も放射線被ばくを検査したチームと全く同じチームでやっていて。地域の方々にいまの現状を調べて、わかっていることもわかっていないことも一人一人に説明し、今後の対策も考えていく。これは絆といわれれば絆だし、当時から培われたネットワークと人のつながりが構築した体制だなと思います。」


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