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22.03.17
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福島フロンティアーズ〜南相馬をサウナーの聖地に! 川口雄大さん


3月16日夜、福島県沖を震源とする地震が発生しました。今なお続く東日本大震災の余震、被害に遭われた皆様へお見舞いを申し上げるとともに、いつやってくるか分からない地震に備える気持ち、これを忘れないよう、あらためて胸に刻みたいと思います。

さて今回のテーマは、『福島フロンティアーズ〜南相馬をサウナーの聖地に! 川口雄大さん』。

震災を経て、Uターン・Iターンで福島県に拠点を移した「移住者」たちの、夢の実現へ向けた取り組み、新たなチャレンジにスポットを当てるシリーズ企画、「福島フロンティアーズ」。今回スポットを当てた川口さんは、南相馬市原町区の飲食店「川口商店」の4代目店主。現在31歳です。「川口商店」はもともと3代続くお米屋さんでしたが、震災の影響で休業。高校卒業後、専門学校への進学で上京した川口さんは、専門学校中退後、様々な職を経て、2014年に南相馬にUターン。「川口商店」を“飲食店”として再開したのち、去年夏、敷地の一角に、サウナ施設「発達」をオープンさせました。独創的な空間デザイン、1日2組限定でフィンランド式サウナ「ロウリュ」が楽しめるという「発達」は、すでにサウナ愛好家“サウナー”の間で人気を呼ぶ存在となっています。南相馬をサウナーの聖地として広め、地域の活性化を目指す、そんな川口さんの思いを、今日はお届けします。

【今回のダイジェスト動画はこちら】
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南相馬がサウナーの聖地に!?

商店や住宅が立ち並ぶ南相馬市原町区。その街なかにある「川口商店」。外観は昔のお米屋さんの雰囲気そのままですが一歩中へ入るとお洒落なカフェ風な造りとなっていて、夜になれば地元の皆さんが集う居酒屋として営業中です。



裏へ回ると“大きなピザ窯”みたいな建物や木のルーバーで囲われた建物が表れます。街なかであることを忘れてしまうような空間が突如として現れる感じ。この木のルーバーで囲われた建物がサウナ。階段を上ると“外気浴スペース”のウッドデッキがあって、扉を開けるとリビングが。ここで着替えたり食事をしたりするということ。印象派の絵がいっぱい。川口さんによると“ここは裸になる場所でもあるので、裸の絵を多くしてあります”ということでしたww






そしていよいよ、室内の階段を下りて、サウナへと向かいました。

◆◆

(高橋)あっ、地下に来たら、洗い場と、これはもしかして水風呂!? 石で作られた水風呂、けっこう大きいですね。サウナーにとっては、嬉しいサイズですし、ずっと水が流れているのがいいですね。

(川口)この水も、地下水を使用しています。

(高橋)サウナーにとって地下水とか、湧き水はめちゃめちゃポイント高いですからね。凄い気になるのが、仮面が壁に飾ってありますが、これはなんですか?

(川口)こちらは自分が旅行先とかで集めていた物を、自分の部屋とか家の中にあったのですが、奥さんから、“これなんとかしてくれ”と言われてここに移りました。

(高橋)しかも旅行でって、1m以上あるお面ww

(川口)そうです。一番大きい真正面のちょっと口を開けているお面がウチのサウナ「発達」のメインキャラクターである“発達くん”です。色んなお面、一つ一つに意味があるんですが、基本、守り神を中心に集めているので、神々に見守られながら、ゆっくり水風呂に入って、外気浴して頂けるようにと。そしてサウナ室の前室がコチラです。

(高橋)流木ですか?

(川口)地元の海岸に流れ着いた流木です。そしてこれが2つ目の“発達さん”です。

(高橋)“発達さん”170cmくらいありますね。

(川口)そうですね。こっちは送料の方が高かったですねww そしてこちらがサウナ室のドアなんですが、この奥がいよいよサウナ室になりますので、どうぞ開けてみてください。

(高橋)ドアノブも流木ですよね。かっこいい。では、開けますよ! ・・・スゴイ雰囲気! 真ん中に大きなヒーターがあって、ロウリュできるところ、木で囲われているんです。その周りを囲むように、コの字に椅子があるんですけど、今、感じてますが、湿度もめちゃめちゃいいですね! ちょっともう入っていいですか? 熱っ!!!





入口の謎のマネキン、アースバック工法で建てられたドーム、流木を使った扉、中では“発達くん”と“発達さん”が居たり、裸だらけの前室やお面だらけの水風呂など、気になるポイントが多すぎて、サウナへ辿り着くのにまあ時間がかかりましたww

川口商店は元々お米や“馬のエサ”を扱うお店で、三代に渡って商売を続けてきました。国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」が行われる地域で、馬が生活の身近にいる南相馬では珍しくない形態の商店だったといいます。お店がある原町区は、震災当時、原発事故の影響で一部に避難指示が出たものの大部分は避難指示も出ず、逆にその後、原発の作業員の生活の場ともなって、飲食店などは賑わっていたそう。ただ自主的に避難する人も多く、川口商店も一時は休業状態に。そんな中、2014年に帰郷してお店を継いだのが4代目の雄大さん。どういう経緯で、飲食店、そしてサウナを開業するに至ったのでしょうか。

◆◆

(川口)高校を卒業するまでこちらにいました。卒業してからは東京に行きまして、震災の翌年くらいに帰ってきた感じです。

(高橋)南相馬に帰って来ようと思ったのは何でですか?

(川口)それは、自分の父の世代で3代目の「川口商店」だったんですが、震災で営業できなくなってしまい、自分は小学校の頃から文集にも書いていたんですが、「川口商店」を継ぐことが夢だったんです。なので継がないで終わるのはちょっと自分の中でできないと思い震災後にこっちに戻ってきて。飲食店の「川口商店」の4代目として自分が継いだところが始まりです。

(高橋)飲食店にしようと思ったのは何でですか?

(川口)当時、色々話を聞いたら、飲食店が早く閉まっている状況が見えてきたんです。作業員の方たちがお仕事して5時〜6時に終わってご飯を食べに行くんですが、その当時はそれで結構、潤っていたんです。なので早い段階で売り上げが立つので、お店を閉めてしまって、タクシーや代行も終わっちゃう状況に。そうすると飲食店の従業員の方々が、自分のお店が終わった後、飲みに行ける店があまりなかったんです。そういった方たちが、自分のお店が終わって集まれるような場所ができないかな?と思いまして。自分本当に何もできないところからスタートしていて、なので唯一の特徴として“いちばん遅くまでやってる店”を作りました。お店(飲食店)の方たちが集まって、その人たちに逆に色々と飲食のノウハウを聞きながら、学びながら、やっていったという感じです。

(高橋)新しくないですか? 飲食店のノウハウなくてww。まぁお酒は出せるじゃないですか。

(川口)あ、お酒も最初ホント出せなくて。初日の事で鮮明に覚えているのが、焼酎の水割りを注文されたお客様がいて、自分、焼酎と日本酒の区別も分からないくらいお酒が分からなくて、日本酒を水割りで出して、思いっきりぶん殴られたのが初日だったんですw

(高橋)おつまみはどうしたんですか?

(川口)おつまみは、2種類だけ用意していました。濡れたものと、乾いたもの。乾いたものは、柿ピーとかで、濡れたものは、缶詰ですね。

(高橋)来ました? お客さん。

(川口)それが来るんですよね。“なんかやってる”っていう感じでボヤッとした灯りがついていて、そこに夜な夜な、自分の居場所や終点を求めて、口コミですかね? 色んな人のつながりが出来て今のような状況があるんですけど。有難かったのは、何も出してないんですけど、「ごちそうさま」ってみんな帰っていくのが印象的でしたね。食べ物だけじゃなくて、空間を提供するのが飲食店でもあるのかな?とその当時、学べたような気がします。

(高橋)南相馬の原町って私も良く訪れますが市内でも影響が少なかった地域かと思っていますが、11年じゃないですか、2014年に戻ってこられた川口さんから見たこの原町の復興の進み具合ってどんなふうに映ってますか?

(川口)震災もそうなんですけど、30キロ圏内の原発ですよね。だんだん浪江とか双葉とかにも泊れたり住めるようになってきてますけど、(避難指示が)解除されることによって、“ゼロから町を作りたい”っていう新しい風を起こしてくれそうな方がたくさん移住してきたり、ホント最近そういう方とお話しする機会があるので、なんというか今ある現状をしっかり受け止めて、みんなでしっかり話し合って、一緒に作り上げていこうっていう大きな流れは、いま強く感じていますね。

(高橋)それはもともといた方も外から来た方も交じって?

(川口)そうですね。そうなるとやっぱり地元の方とのつながりだったりそういう関係性がすごく大事になるので、その間に、僕の飲食店だったりサウナだったりが関わって、人を繋ぐような役割を担えればいいかなと。自分もUターンで戻ってきた組なので。

(高橋)今そのサウナの話出ましたけど、川口商店、飲食店として震災後やってきて、急にサウナ出てきましたけど、これを始めたのは?

(川口)サウナをはじめたきっかけは、やはりコロナが強く影響していますね。ちょうどコロナが来る直前まで“新しい宿を作ろうかな”と思っていたんですけど、コロナがやってきて、やはり飲食と宿泊が大きな打撃を受けてしまったということろで、急遽サウナを作ろうと思ったんです。ただサウナを作って、自分のところだけ上手く生き延びても意味がないなと。やるのであれば地域で頑張っている人たちと一緒に繋がりを持てるものをできないか?と思ってサウナにしたというのもあるんです。というのも、お風呂に入った後や、サウナの後、飲み物や食べ物ってすごく美味しく感じるじゃないですか。まずは料理を出す前に、お客さん自身が下準備というか、身体自体を調理してもらう。一番おいしく食べられる状態まで仕上げてもらって、そこで地場のモノを提供していく。食べた際に、これ誰が作ってるんだろうと興味を持ってもらえることってあると思うんです。30キロ圏内というのは、自分たちの意思で戻ってきた人が結構いると思うんですね。そういった強い力を持った人とか、頑張っていこうと思っている人たち、そういった人たちと一緒にこの街をなんとかしないとダメになっちゃうんじゃないかということでの・・・サウナですかね。


サウナで身体を整えて、味に敏感な状態を作ってから、地域の美味しいものを提供する。午前と午後、ランチと夕食をハイライトに、1日2組限定で営業しているのが、サウナ「発達」です。

ちなみに、最初、乾きモノと缶詰しかなかった「川口商店」ですが、じつは雄大さん、帰郷後にお料理上手な女性と結婚されて、奥さまが腕を振るうようになってからは、お店のメニュー、60種類以上に増えて、しかも美味しい!と評判も上々。そうした流れの中で、「発達」の目指す、“地域全体で発達していく”というテーマも定まっていったということです。“貸し切りなので、ぜひ全裸でちゃんぽん食べたりして欲しいです!”ということでした。

土から建物を作る“アースバック工法”で建てられたサウナ「発達」。これがじつは「発達」の大きな魅力でもあるんですが、いよいよそのサウナの中へ・・・

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(高橋)場所を移動してサウナに入ってきましたが、めっちゃ気持ちいいですね。

(川口)これが土のサウナです。

(高橋)座るところも温かいからマットからジワジワ熱が伝わってきますよね。

(川口)下からと上からと、あとは、しっかりとした湿度。

(高橋)そう! よく鼻の中が熱くなったりしますが、ないですね。心地いい。「コの字」型に土の椅子が囲んでいて、真ん中に大きなサウナストーンが囲まれているじゃないですか。これ、ロウリュできるってことですよね。ロウリュ知らない方もいると思いますが、サウナにサウナストーンが置いてあって、そこに水をかけて蒸気を出すんです。それが熱を上げてまた気持ちいいんですが、音もいいので、ぜひ音も聞いてください。いきまーす!

♪ジャ〜〜〜(( ロウリュする音 ))

(高橋)この音、たまらないと思います。サウナーの皆さん入りたいって思うんじゃないでしょうか。
ライティングもいいですね。

(川口)やっぱりゆっくり横になって欲しいので、ギリギリの明るさなんですけれども。

(高橋)もう話している間に汗だくですよ。私もスタッフも。気になるのが名前が「発達」ですし、今後の「発達」が目指すところはどんなところですか?

(川口)近々で言いますと、今年の11月くらいまでには、お風呂を新しく作ろうと思っています。そのお風呂も、色んな所が発達しているお風呂なんですけど、浴槽の中にスピーカーが入っているんです。シュノーケルをくわえて潜ってお風呂に入るんです。浴槽の中だけに音楽が流れているお風呂。サウナ以外にも、感覚の発達にいけるものが、まだいっぱいあるので、新しい感覚、ここならではの体験をしてもらえて、思い出の一つになってもらえたらと思って考えています。


潜って音楽を聴きながら入浴する露天風呂、想像もつきませんww

土日限定のオプションで熱波師「熱風」さんの熱波も受けられます(じつはこの日も体験しました)。この“アースバック工法”が最高のサウナ環境を生み出していて、サウナビギナーのスタッフも収録の間しっかりガマン出来ました。そして地下水かけ流しの水風呂がまた最高に気持ちよかったです。

全国のサウナーも注目する南相馬市の新名所、サウナ「発達」。今後その不思議な露天風呂や“アースバック工法”の宿泊施設も作る!ということなので、ぜひ足を運んで頂けたらと思います。

「発達」


今回の取材の模様は、下記リンクの動画でもご覧頂けます。独創的なその空間デザインや、汗ダラダラ流しながら話している私たちの様子など、ぜひご覧になってくださいww

【今回のダイジェスト動画はこちら】
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南相馬がサウナーの聖地に!?

【プレゼントのお知らせ】今回は、福島県の産品が一堂に揃うECサイト「ふくしまプライド便」でチョイスした、サウナのあとにもピッタリのフルーツビール、「福島路ビール・おいしい福島の桃ビールセット」を、3名様にプレゼント。くだもの王国福島を代表する桃、なかでも人気の高い「あかつき」を使ったフルーツビールです。


ご希望の方は、まず動画をご覧になってキーワードをチェックしてください。動画の中で、川口雄大さんに“今後の夢は?”という質問をしていますが、その答えが、プレゼントのキーワードです。このキーワードを書いて、番組ホームページのメールフォームからご応募ください。番組の感想や、川口さんへの応援メッセージもお待ちしています。

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来週の「Hand in Hand」は、2月20日、富岡町の「東京電力廃炉資料館」で開催されました、「廃炉の『今』を知る。東京電力福島第一原発オンラインツアー」のレポートをお届けします。震災と原発事故から11年。直後の状況から「今」に至るまでの廃炉の取組み、そして「これから」について、経済産業省資源エネルギー庁廃炉汚染水処理水対策官・木野正登さん、関西学院大学教授でキャスターの村尾信尚さん、アイドルの和田彩花さんをゲストに話し合いました。司会は高橋万里恵。このレポートを通じ、皆さんがいま知り得ている情報をアップデートして頂けたら幸いです。ぜひ聴いてください。

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