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22.07.23
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Live With FUKUSHIMA~福島ガイナ代表、浅尾芳宣さん

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東京電力福島第一原発の事故により、避難指示などの影響があった地域を中心に、事業やプロジェクトを立ち上げ、新たな魅力を発信している人物にフォーカス。その取り組みやストーリー、秘めた思いを伝えていくシリーズ「Live With FUKUSHIMA」。今回はそのシリーズの一つとして、福島県三春町にスタジオを持つアニメ制作会社、「ガイナ」の浅尾芳宣代表にお話を伺いました。

ガイナ」は、『新世紀エヴァンゲリオン』『天元突破グレンラガン』等の大ヒットアニメを手掛けた「ガイナックス」で役員を務めていた浅尾さんが、2014年、福島の復興に寄与することを目的に、まず「福島ガイナックス」を設立し、その後スタジオとミュージアムを開設。現在は本社を東京に置き、「ガイナ」と「福島ガイナ」、東京と福島の2つの会社を通じ、アニメ制作と人材育成を行なっています。

浅尾さんが福島での活動を始めた経緯と思い、ここまでの歩みと「今」とは?

【今回のダイジェスト動画はこちら】
↓   ↓
福島から全世界にアニメ文化を発信!
取材の様子は↑こちら↑の動画でもお楽しみ頂けます。今回の動画はスペシャルバージョン。『ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~』や『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』など、数々の人気作品でキャラクターを演じている声優のブリドカットセーラ恵美さんがナレーションを担当しています。福島ガイナ制作作品『政宗ダテニクル』では、伊達政宗の正室である愛姫の声も担当していらっしゃいます。

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福島市出身、高校生までを故郷で過ごしたという浅尾さんは、震災後の2014年、三春町に会社を設立。『ピアノの森』などシリーズアニメをはじめ、『政宗ダテニクル』など福島県のPRアニメの制作、アニメミュージアム「空想とアートのミュージアム 福島さくら遊学舎」の運営などを行っています。

「福島ガイナ」のオフィスと「福島さくら遊学舎」がある福島県三春町。建物は町にあった旧桜中学校の一部を活用しています。「三春の滝桜」で知られる自然豊かな三春町は福島第一原発事故の影響が軽微で、浜通りからの避難者を受け入れていた地域。福島さくら遊学舎近くには美味しいパンケーキのお店などもあって、今や若い人たちでにぎわう地域となっています。



そんな三春町に拠点を開いた浅尾さんに、まずはその経緯から伺いました。

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浅尾)震災前に、当時のガイナックスの中に、“第2スタジオを作ろう”、そして“海外に向けて発信できるようなアニメを作っていこう”というのが最初のきっかけでした。その計画を作っている時に東日本大震災が起こり、自分たちのスタジオよりもまずは復興だよね、ということで、震災後、片づけやボランティアとして福島に戻ってくる機会がありました。個人としては出来るんですが、自分たちがやっているエンターテインメント、アニメ制作などでお手伝いをしたいと思っても、まずはインフラを整えることや医療を充実させることが先なので、ようやく3年経った頃、自分たちの第2スタジオを改めて考えようと。そのとき自分が福島出身だったこともあり、場所がまだ決まっていなかったので、“福島に復興応援という形でできないですか?”と当時の社長にしたのがはじまりでした。

高橋)私たちが今いる、「福島さくら遊学舎」を開設したのは?

浅尾)2016年になります。最初はアニメスタジオを作るつもりでこちらにやってきたんですが、縁あって廃校になった中学校を使わせてもらうことになりました。すごく大きな場所だし、もともとその場が学びの場だったこともあり、自分たちがやっていることを子供たちに興味を持ってもらって、来てもらえるような仕組みを作って、それでもしかしたら将来アニメや映像の世界に入ってもらえたらいいよね、というところから展覧会をやるような展示を考え、今は常設展として「アニメ作法展」といってアニメの作り方を展示する施設となりました。

高橋)校舎とアニメのことを学ぶ場、すごいマッチングですね。

浅尾)そうですね。もともと学校なんで。アニメってテレビで流すと一瞬なんですが、そこに関わる人たちというのはかなりの人数がいるんです。工程的にも70以上あると言われていますし、例えば絵が描けなくてもアニメの仕事をしたいなと思ってもらえるような、そんな風に考えてもらえたらと思っています。

高橋)すでにそんな声、きていたりします?

浅尾)そうですね、実際に何名かアニメーターを目指す学校に行く子供たちは出てきています。

高橋)こちらでは実際にアニメの制作はされているんですか?

浅尾)基本的に福島での作品は福島のスタジオで。あとは本社として東京の吉祥寺にもスタジオがあるので、そこと連携して作るようにしています。今はコロナの影響もあって福島のメンバーが東京に行って修行する形になっていますが、“復興応援”という形で作る作品は、やっぱり福島を中心で作れたらと思っています。














アニメ制作に携わる人間として、自分の出来ることで福島の復興を助けたいという浅尾さん。そんな故郷の福島への思いを新たにしたのは、やはり震災がきっかけだったといいます。

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浅尾)実際のところ、自分はやっぱり福島から外の世界も見たいと思い、外に出ました。震災がなければ、たぶん戻って来てないと思うんです。それだけ外の世界も魅力的だったし、自分たちがやっている仕事というのも福島を必要としなかったんです。その時は。だけど、震災があって、改めて自分が生まれた土地に帰って来てみると、“いいところ”という感慨より、“自分にも何かできるようなことがあるんじゃないか?”と思いました。その中でいろんな人に助けてもらったり、協力してもらう中で、“あ、福島っていい場所だな”って思えるようになりました。

高橋)この三春町にスタジオを開いて6年目。この月日の間にも復興の歩みがだいぶ進んだのかな?と思いますが、浅尾さんの目から見てどうですか?

浅尾)復興自体、例えばその当時に決めた政策だったり、プロジェクトだったりは進んでいると思いますが、同時に復興を進める中で、色んな問題も出てきていて、“復興をやっていく中で出てきた問題”を解決していかないといけない、ということが同時に発生しているんで、進んでいる感じはあんまりないんですよね。新しい問題が出てきているからそこをどう考えていきますか?という復興のバージョンアップじゃないですが、復興自体の取り組みや考え方を新しく常にリニューアルしていかないといけないんじゃないかな?と考えています。例えば震災直後に避難された方が他の自治体に受け入れてもらい、そこで生活をはじめて10年。そうなってくるとある意味“地域のゲスト”ではなくなってくるんですよね。ようやくいろんな状況が整って自分のふるさとに帰れるとなったときに、“帰りたい”と思う人と“生活があるから帰れない”という人が出る。もともとの地域の人と新しく入ってきた人をどう繋ぐのか、そういった新しい問題をどう解決するのか?それを例えば、芸術だったりアニメだったり、何かそういうものでできないかな?と。そういう意味ではガイナもそうですし、相馬の方になりますがロボットテストフィールドといって最新のテクノロジーを研究するようなところもあったり、そういう意味では福島って面白いエリアになってきているんじゃないかなと思っています。いろんな可能性を試せる場所になってきている。自分が高校の時に出ちゃったのは、どうしても進むべき可能性が、例えば林業、農業、漁業、そういったものだったら機会を感じられますが、研究や創作といったところの機会は福島にはなかったと思ったのですが、そういたものが、少しずつできているんじゃないかと思っています。


「ガイナックス」の子会社として三春町に「福島ガイナックス」を設立後、翌年には独立。2016年にスタジオを開いてから、ご当地アニメをはじめとする制作も順調に進んだことから、浅尾さんは木下グループのサポートを受け、2018年に東京が本社の「ガイナ」、そして三春町の「福島ガイナ」という体制に変更。福島から世界に作品を発信するのをテーマに新たなスタートを切ります。

そしてその目的は着実に進んでいるといいます。

◆◆

浅尾)『政宗ダテニクル』は日本でももちろん、アニメや声優のファンの方に支えられて観て頂いていますが、海外からの問い合わせも結構あって、これまで海外10カ国くらいでイベント上映してもらいました。海外の方からすると、テレビで流れているかどうか、地方のアニメだからとかよりも、“自分が好きなキャラクターデザインだから”、あるいは“応援している声優さんが出ているから”といった切り口から見つけてくれます。

高橋)アニメから福島を知るという現象が起きているんですね。

浅尾)そうですね。イベントで海外に呼んで頂いた時の一つの条件といいますか、アニメを流した後にトークをさせて頂くのですが、その時に“福島のことを喋らせてください”というお願いはしています。福島の名前はみんな知っているんです。世界中どこに行っても知っていました。だけどやっぱり放射能被害のイメージが強いので、そこから実際の福島の取り組みを伝えたり、アニメということから少しはイメージアップできているかもしれないと。なので海外に行ったときにはそういう話をさせてもらいます。

高橋)手ごたえはどうですか?

浅尾)行って話をして交流すると“実際に自分たちが持っている情報と違うのね”と感じてもらえるので、手ごたえといいますか、逆に情報発信の難しさは感じます。

高橋)課題についてはどう思っていますか?

浅尾)風評被害はたぶん今だと海外の方も調べようと思ったら情報や現状を調べられるけど、どこかそうならないんですよね。なんとなく理性や論理的なところではなく、“なんとなく嫌だ、“なんとなく怖い”というのがあるので、そこが払拭されると、好意的に見てもらえたり、前向きに情報を得てもらえたりしやすいのかなと思います。“自分たちは安全ですよ!”とか“考えてモノを作っていますよ!”、“輸出してますよ!”といくら言ってもたぶん届かない。そこを“感性”で感じてもらったときに、心が動いたり気持ちが前向きに考えてもらえるとか、そういうのはあるんじゃないかと考えています。

高橋)おっしゃるように、「楽しい」、「面白い」といった感覚に訴えてから福島のことを知るって、すごく大事な順番な気がしました。

浅尾)それはアニメであれアートであれ音楽であれ、そういった活動から何かできることの一つなんじゃないかなと自分は思っています。

【今回のダイジェスト動画はこちら】
↓   ↓
福島から全世界にアニメ文化を発信!
「Hand in Hand」、「Live With FUKUSHIMA~福島ガイナ代表、浅尾芳宣さん」。

お話を伺った「ガイナ」の浅尾芳宣代表は、全国のSFファンやSF同人サークルが一堂に集う祭り、「日本SF大会『F-CON』」の実行委員長でもあって、今年は8月27日と28日に福島県の磐梯熱海で開催される予定。このイベントにもぜひ足を運んでください!という事でした。

ガイナ」の手掛ける作品についてはオフィシャルページをチェック。また今回、取材のダイジェスト動画のナレーターを務めてくれたブリドカットセーラ恵美さんは下記の作品に出演しています。

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ご希望の方は、まず動画をご覧になってキーワードをチェックしてください。動画の中で、浅尾代表に“一番大切にしている「言葉」とは?”という質問をしています。その答えがプレゼントのキーワードです。そのキーワードを書いて、メールフォームからご応募ください。たくさんのご応募お待ちしています。

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