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22.07.30
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球磨川に寄り添う人吉旅館 全館グランドオープン


2020年7月の豪雨災害で甚大な被害をうけた熊本県人吉市、「人吉旅館」。
番組は災害から半年後、2020年12月に取材しました。その時の様子がこちら・・・。



昭和9年創業の人吉旅館。「国登録有形文化財」にも指定される歴史ある建物は訪れる人を魅了してきました。しかし2年前の豪雨で球磨川が氾濫し、建物の1階天井まで浸水するほどの大きな被害に。それからおよそ2年の歳月を経て、今年の5月、全館グランドオープンとなりました!


老舗旅館ののれんを守っているのは人吉旅館の3代目女将、堀尾里美さんです。

「表玄関に飾ってある大きな看板は常に誇りでした。お客様が帰られる朝、この看板前で一緒に写真を撮っていた看板でしたが、令和2年の水害の時この看板はちゃんとかかったままでした。被害は3.5m、床下からだと4m以上、この看板を越して一階の天井まで水が達していますが、もしこれが落ちていたら再建への気持ちが湧いてこなかったんじゃないかと思います。」


「柱や梁、構造自体はそのままです。でも床板は全て貼り換えました。今までは約90年間の歴史があった黒光りのピカピカの床でした。それが今は明るい白っぽい床になっています。古く見せるために色を塗ったりせずに、ここから始めようと。ここにたくさんのお客様に踏んでもらって徐々に褐色になっていくだろう。もちろん私たちの代ではそれが実現できないと思います。でも次の、あるいは次の次の世代になればきっと水害前と同じ色を出してくれるだろうと信じています。これから新たな歴史を刻んでいくという気持ちなんです。」


泉源が50カ所以上あるといわれる人吉温泉。人吉旅館も、100%源泉掛け流しの温泉があり、水害前から多くの方に愛されてきました。

「リニューアルで1つ楽しみだったのが、温泉。以前は内湯だけだったのが今回、露天風呂とバリアフリーの温泉を作りました。泉質はすごく自慢です!ナトリウム炭酸水素塩泉と塩化物泉という2つの成分があります。古い角質を取ってくれるクレンジング効果と、塩化物泉がしっとりとした保湿効果を与えてくれるので、ツルンツルン。ダブル美人の湯と言われます。私も温泉ソムリエとっているので、本当にいいお湯だと思いますよ。」


3代目女将の堀尾さんが「この旅館一番の自慢だった」と案内してくれたのが、温泉へと続く長い廊下です。(写真は水害前の様子)


「お風呂にいく廊下はお客様に一番愛されていたピカピカの廊下。中庭も見えるのでよくここで写真を撮っていました。窓ガラスは大正ガラスで横からみるとゆらゆら揺れている感じ。これは今は存在しないので割れたらそれでおしまいなので心配していましたが、幸いにもこれが半分は残ったので不思議でした。隣の客室には泥水がドーンと押し寄せてきて畳と混ざって盛り上がってるし天井板はぶら下がっている状態だったから、廊下のガラスが残ったのは奇跡のような気がしました。」


「木造建築の権威と呼ばれる大学の先生を招待して床下の基礎や建物全体を見てもらいました。その理由は、すぐ台風が来るといわれた時期で、もしこのスッポンポンの建物が台風にやられたらどうしようと怖かったんですね。そして先生にみてもらったら、全然大丈夫って言われて。90年前の木造建築ですが非常に頑丈なもので、全く揺らぎません。だから台風がきたって全然心配ありませんと言われた。本当にその時にホッとしたしありがたいしこの建物すごいなと。昭和初期の建物で、ここまでひどくないですけど何度も水害にあってきたのに、それを乗り越えてきたこの建物。それと、私たち3代目なんですが2代目の父が、その当時銀行がお金いくらでも貸すから、この古い建物を壊してビルにしてホテルを建てるのはどうか、という誘いがたくさんあったらしい。でも父は早稲田建築の出身でこの木造が好きでそれを断って、これを残してくれたんです。それに対して改めて感謝しています。結果的には、これを残していくことが我々が生きる道だとわかったんです。だから幾度も水害があったけどずっと守ってきてくれた先々代、先代、次に私たちの代になってここまで乗り越えてきた以上、50年先100年先に同じような水害があったときに次の世代が、同じ気持ちでなんとか守ってくれるだろうと信じないとやっていけないんです。だからこれから100年続けられるように大事にしていきたいと強く強く思っています。」




「すごく苦しい2年間でようやく全館オープンできました。最初は長かったな〜と思いましたけど、オープンしてから周りを見るとまだまだのところが多く、うちは早かったなと。喜びだけじゃなく謙虚な気持ちで周りを励ましながらみんなが進むように、そういう励まし合いながらの再建だと思っています。」

人吉市では、三大急流の球磨川くだりや球磨焼酎の酒蔵も復興しています。川下りをして、球磨川の鮎を食べながら球磨焼酎を呑んで、温泉に浸かって、翌日はまた川でラフティング!なんて旅はいかがでしょうか?

「Hand in Hand」。来週は、その球磨川で楽しめるラフティングのツアー会社、2年前に取材した「ランドアース」を訪ねます。来週もぜひ聴いてください。

人吉旅館公式サイト

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