
ふくしま海の逸品 後編
今回は先週に続き、福島で新たに生まれた注目のグルメを紹介。その名も「ふくしま海の逸品」。
これは、福島県の「絶品!福島!水産加工品開発プロジェクト」というコンペティションでアイデアを認められた地元団体が、半年掛けて商品開発したもの。福島で水揚げされる海産物は、品質が高く市場で高値で取引される“常磐もの”として知られていますが、その“常磐もの”の魚をつかった新たな水産加工品です。
福島の海産物の美味しさを誰より知っているプロフェッショナルの方々が生み出した新たなグルメ。その開発秘話や美味しさの秘密とは?
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後編の今回は5つのうちの残り2つをご紹介。まずは、「常磐もの出汁、常磐出汁つゆ、常磐白出汁つゆ」。上質な“常磐もの”を原料にした、贅沢な出汁商品です。
こちらを商品化した、いわき市「上野台豊商店」の上野臺優さんのお話しです。
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上野臺)いわきの小名浜港で水揚げされる魚を使っていまして、主に「チダイ」と「カナガシラ」という、あまり活用されていない魚で、骨っぽくてちょっと人気がないんですけど、骨っぽいんで出汁もうまいのが出るんじゃないかということで、今回その魚を使って出汁を作ってみました。
高橋)いま目の前にあるその商品、出汁のパックとか、あとはめんつゆのようなボトルに入っているものもありますが?
上野臺)これは料理のとき出汁をとる出汁パック、もう一つは煮物とかに使えるように白出汁と黒出汁を作りました。
高橋)今回ふくしま海の逸品にこのアイデアを出そうと思ったきっかけは?
上野臺)地元で作っている出汁がなかったということと、カナガシラという魚はけっこう水揚げされるんですけど、使う用途がなくて余っているのを見て、いま魚の資源を大事にしていかなきゃならない中で、使わないで捨ててしまうのはもったいないなと思ったので、この魚を使って出汁を作れないかと前から思っていたところではあったんです。
高橋)たとえばカナガシラはそれまでは廃棄されていたんですか?
上野臺)廃棄というより魚の餌用にしたり、あんまり食べられてはなかったですね。で、いい機会を頂いたので作ることができたんですけど。
高橋)じっさい商品になるまでにはどんな過程があったんですか?
上野臺)製造過程としては、まず浜で魚を仕入れて3日くらい乾燥をかけるんですね。そこから粉末加工します。骨があたらないくらい細かく粉末にして、あとはその他の食材、塩や椎茸などで旨味を足す感じで作っていく。それで地元の醤油屋さんと連携しまして、黒出汁つゆや白出汁として作ってもらう感じですね。
高橋)漁師さんとしては今まで魚の餌になったり、味が美味しいのに活用されなかった魚が、出汁として美味しく頂けるのは喜んでいるのでは?
上野臺)使われないということは市場で値段がつかないので、値段がつかない魚をうまく活用して値段をつけて買えるようにしていかなきゃいけないなと、ずっと思っていたんですけど、こういう加工をして使ってもらえると、魚代という形で船に返せるという思いはありますね。
高橋)私達いま加工場にいて良い香りがしているんですが、味はどうですか?
上野臺)製造がすごく難しいなというのはあって、色々プロの方、料理人の方とかにもご相談させて頂いてなんとか形になりましたけど、まだこれからもっと上手くできるんじゃないか、改良しながら販売している感じですね。常磐もののチダイとカナガシラを“前に出したい”というのがあって、白身魚の美味しさが伝わるような商品にしたいと思っているので、配合量や加工の仕方とかいろいろ教わっているところです。一般的に出汁というとカツオやあご出汁=とびうおですよね。そこまで強く出ないですが、実際召し上がった方からは、“白身魚の上品さがあるね”とか、料理をする人だとそれを活かすように“こういう料理の仕方をしたよ”とか教えてもらえるので、それを私が聞いて皆さんに伝えられればと思っています。
高橋)たくさんの試行錯誤をしながら、苦労を重ねてチャレンジしてきたと思うんですが、風評について伝えたいことは何かありますか?
上野臺)風評は事故直後はけっこうあって、いまも100%は戻っていないですが、徐々に食べてもらえるお客さんが増えている感覚はあります。でも食べてもらっていない方には、ぜひ常磐ものを食べてもらって、“美味しかったらまた買ってください”というスタンスですかね。なんでもかんでも食べてくれ!という感じではないです。“試してもらった方がいいんじゃないかな”、“美味しいものあるので食べないと損ですよ?”というスタンスでいるんです。
高橋)一度食べてもらったら、“常磐ものは美味しい!”って思ってもらえる自信を、皆さんお持ちですよね。
上野臺)そうですね。皆さんそう思っていますし食べてもらいたいですね。
高橋)生の魚が一尾ドンと来るとどうしようと思う方もいらっしゃるかもしれないですが、出汁から常磐ものを知るのはいいきっかけかもしれないですね。
上野臺)そうですね。入り口やきっかけになればいいですね。
上野台豊商店では、この「常磐もの出汁」を使った、サンマのつみれ汁、そしてこの出汁をメヒカリの干物をのせたご飯にかけた“出汁茶漬け”も頂きましたが、じつに旨味いっぱいなお出汁でした。上野臺さんによると、“ラーメン、カップ麺にひとさじ入れても劇的な味変になって旨い!”という事です。
こちらの商品は、上野台豊商店のオンラインショップで購入できます。
福島に新たに生まれた5つのグルメ「ふくしま海の逸品」、最後にご紹介するのは、その名も「いわきからあげ」です。いわき市の水産加工会社、「海幸」開発担当者、遠藤浩庸さんと、代表の高萩則夫さんにお話を伺いました。
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遠藤)いわきからあげを今回商品開発しました。いわきの地場の魚を使ったからあげ。魚種はアンコウ、サバ、ヒラメの3種類。魚のから揚げはあったのかもしれませんが、骨取りの関係で製造が難しかったのが現状です。特に地元加工となると、飲食店などでしか食べられなかった商品かなと思います。それとやっぱり、開発当時、ちょうど一年ちょい前はコロナ禍で飲食店も苦労されていたと思います。その中で道を歩いていると、からあげ屋さんがやたら増えてきたんですよ、いわき市内。からあげ専門店とか、“テイクアウトをはじめました唐揚げ弁当”って書かれているお店とか。商品開発にあたって今何が売れているか考えたとき、唐揚げというキーワードが出てきたというのがあります。
高萩)いわき市の魚は昔からメヒカリを唐揚げにしていたんですね。我々もそれをずっと販売していた。たまたま福島県の方から“新商材を”という話があって、そこで遠藤と話したら“からあげが流行っている”ということで商品を作るに至りました。もともと私達は前浜に人を出して入札して、ある程度の原料を買っていたんですが、アンコウもヒラメも夏場は売れない。値段がつかない。アンコウは鍋。ヒラメも基本的に冬場の魚。白身の刺身も夏場はスズキやタイなのでヒラメは値段がつかない。なんでこんなに値段がつかないんだろうと。その延長上にこの商品が出てきた。サバはもともと私ども学校給食をやっていたので、前浜の福島産のサバはいくらでもあるので付け加えた。メヒカリは前からやっていたので入れなかった。あとはカジキ。
遠藤)そうですね。カジキも福島県がハワイ沖でとってくる船があって、そこから水揚げされたカジキの唐揚げも新商品で考えています。商品をここに隣接している市場関係者に食べてもらって、美味しいという評価を得ています。あとは自分の子供もそうですが市場関係者のお子さんたちも、食べて“美味しい”という声は聞いています。子どもたちが食べてくれるのが一番嬉しいですね。
高萩)親が獲ったものを子どもが食べる。アンコウについても前浜、ヒラメも前浜。サバも福島県産、そこにこだわった。それが私どもの売り。
遠藤)ヒラメについてはいわき市内で10月の学校給食に決まりました。2万6000人分。大変ですが嬉しいし誇らしいですね。
高萩)風評被害についてですが、10年経って現状は正直言って風評はないです。今はコロナ禍の影響のほうが遥かに大きい。ただ少しずつ認知されていると思いますが、処理水を流すんだろうということは知っているんでしょうけど、風評って私達もよくわからない。ただ基本的に風評は風評。うちども会社なので従業員に給料をやらなきゃいけないし拡大生産しなきゃいけないので、風評と言っていられない。その対策は少しずつ取っていきたい。いろんなイベントなんかに出させてもらったり、使ってもらえるお客様には使ってもらいたい。“ダメだよ”という人はしょうがないことなので。だからそこだけ徹底してやっていく。やはりどういう形であれ、いずれそういう問題が、2月3月に出てくるのかなと思うんですけど、そのときはそのときで話し合ってどういう対策をしていくか、方向性は考えています。ただやはり風評は風評なので、今でもそうなんですが、放射能検査はやるんですよね。学校給食でもやるんですよ。私はデータを信じてますので、風評を気にする人は気にしてもらって結構。気にしない人に商品を買ってもらうという姿勢。動かないと会社経営は成り立たないのでとりあえず動く。こういう補助事業(ふくしま海の逸品)があればなるべく参加する。すべてやれることをやっていこうという。震災直後はガタっとしちゃったけど、やはりあのときに動いている人はそれなりに。動いてない人は廃業していったりした。そういうことの考え方なんですけど、動く時に動いていないと。食文化なんで頑張らないと!
学校給食での採用も決まった「ふくしま海の逸品」/「いわきからあげ」。アンコウ、サバ、ヒラメ、3種類の味が楽しめます。こちらの購入は、(有)海幸までお問い合わせください。
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【プレゼントのお知らせ】
今回はご紹介した『ふくしま海の逸品』のうちの2品、「常磐もの出汁、常磐出汁つゆ、常磐白出汁つゆ」、「いわきからあげ」を、それぞれ3名様、計6名様にプレゼントします。
ご希望の方は、まず動画をご覧になってキーワードをチェックしてください。動画のエンディングで高橋万里恵さんの背景に映っている施設がそのキーワードです。下記の3択から回答を選び、その番号と、欲しい商品名を書いて、メールフォームからご応募ください。
①アクアマリンふくしま
②いわき湯本温泉
③いわきマリンタワー