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22.10.22
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大熊町の米で醸すふるさとの酒『帰忘郷』に込めた思い


今回のテーマは、「大熊町の米で醸すふるさとの酒『帰忘郷』に込めた思い」。福島県大熊町で栽培された酒米から作られた日本酒、「帰忘郷」についてお伝えしました。


【今回のダイジェスト動画はこちら】
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ふるさとの酒「帰忘郷」に込めた思い

東京電力福島第一原子力発電所が立地する福島県大熊町は、2019年春、居住制限区域と避難指示解除準備区域の一部で避難指示が解除に。そして帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域について今年6月末に避難指示が解除となりました。

少しずつ故郷の再生が進む大熊町。もともと農業が盛んだった地域でもあり、この“米づくりの再開”というのは、町にとって非常に大きな一歩でもあります。避難指示解除後の営農再開に向け、町は2018年より食用米の試験栽培を実施。これまでは基準を超える放射性物質は検出されておらず、2020年度からは酒米となる「五百万石」の実証栽培をスタートさせました。

「帰る」、「忘れない」、「故郷」、という字をあてた「帰忘郷」は、一般公募によって命名。そこには、震災と原発事故のあと、ばらばらになってしまった町民ですが、常に心には大熊町があり、故郷を忘れずにいる、という思いが込められています。

そんな「帰忘郷」について、企画を手掛けた、「一般社団法人おおくままちづくり公社」広報担当、佐藤真喜子さんにお話を伺いました。

◆◆

佐藤)大熊町は、東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故で2011年の4月から役場の機能ごと会津若松市の方に移転していたという経緯がありまして、2019年には町の一部、避難指示区域の解除が発表されて、徐々に町の再興がスタートする中で、これまで会津若松市の皆さんをはじめとする、全国の皆さんのご支援に対する感謝の想いを一つの形にしたい、あと会津若松市と出来た繋がりを今後も繋いでいきたいという想いのもと、町役場の若手職員の方の発案で、この「帰忘郷」のプロジェクトがスタートしたのが経緯です。

高橋)形になるまで、紆余曲折あったんじゃないですか?

佐藤)そうですね。日本酒の作り方をそもそも知らない人間の方が大熊町側には多かったので、すべて会津若松市の「髙橋庄作酒造店」様に手取り足取り教えて頂いて、感謝、感謝だなというところです。

高橋)やはり大熊町で酒米を作るというのは大変な部分がありました? 放射性物質に対してナイーブになっている部分もあったかと思うんですが。

佐藤)そうですね、大熊町や福島県で採れる、お米だけでなくてすべての作物に対して基準値以下でないと流通に乗せられないというところではあるので、大熊町でもそこの検査はしっかりやっていますし、町がやっている物とは別に髙橋さんの方でもできた製品を検査して頂いて、“放射性物質は検出されませんでした”という証明書を我々に提出してくださっているので、そこには安心していたんですけれども、やはり除染した田んぼってすごく大きい石がゴロゴロ出てくるというのが厄介で、農業委員会の委員長さんも“土づくりからまたスタートするのが大変だった”と言っていました。

高橋)「帰忘郷」が完成したのは?

佐藤)2021年2月には試作品が完成したんですが、“一般販売をやっていこう”と、この一回の試作だけで終わらせず、クラウドファンディングを実施。そのご支援を元に、2022年から一般販売したという流れです。

高橋)出来上がった「帰忘郷」、最初に飲んだ時、覚えています?

佐藤)試作と一般販売用、どちらも飲んだんですが、やっぱり去年より、今年、美味しくなっているなというのは飲んで分かりますし、やっぱり「会津娘」で有名な「髙橋庄作酒造店」様なので、味はもう絶対的に美味しい。私もともと日本酒が好きなんですが、飲んだ瞬間に、“こんなに飲みやすい日本酒があるんだ”とびっくりしたぐらいでした。すごくフルーティーな感じで、ちょっと飲みすぎちゃうくらい美味しいお酒です。

高橋)佐藤さんは何をアテにします?

佐藤)私はそのままずっと飲んでいるのが好きです。

高橋)飲めるんですね(笑) 今年もお米作りが進んでいると思いますが、工夫だったり、来季への期待というのはあります?

佐藤)去年までは町の産業課で米作りは全てお任せしていたんですが、今年から米作りは全て「おおくままちづくり公社」で担っておりまして、職員の中でも実際に米作りをやっていた方が一人しかいなくて、その方に教えて頂いている状況です。私も今年初めて田植え機に乗って田植えをしてみたり草刈りをみんなでやったり、自分の身体で手作業することで、よりこのお酒に対して愛着が沸いていくという過程を過ごしているので、また特別な一年になるのかなと思っています。

高橋)すごくストーリーがあっていろんな人の気持ちがこもっているお酒だなと思うんですが、「帰忘郷」を通じて、大熊の町民の方はもちろん、福島県民の方、全国の方に、どんなことを伝えたいですか?

佐藤)もちろんこの「帰忘郷」が作られた背景、そこに想いを馳せて頂けたなら、この上なく嬉しいことです。ただ「帰忘郷」という名前の通り、ふるさとを忘れない、帰ることを忘れないという意味のネーミングなので、手に取ってくださった方、お一人お一人の自分なりの故郷を同時に感じてもらえたらと思います。

(田植えをする佐藤さん。おおくままちづくり公社のブログより)


福島県大熊町の米から作られたお酒、正式名称は「会津娘 純米吟醸酒『帰忘郷』」。いま来季分の仕込みが進んでいますが、取材時はまだ水田に黄金色の稲穂が揺れていました。そんな風景の中で、酒米づくりのリーダー、大熊町農業委員会会長、根本友子さんにお話を伺いました。

◆◆

高橋)後ろに広がっている田んぼ、これが『帰忘郷』のお米ですね。根本さんはもちろんもう味わわれて・・・

根本)もう最初から頂いています。日本酒大好きなので(笑)。最初飲んだ時は感無量で涙がこぼれそうでした。なにしろ酒米を作ったのが初めてだったので、出来は良くなかったんですよね。実も細かったし。だけどよくぞ日本酒になってくれた! という想いで、涙が出そうだったです、あの時は。

高橋)根本さん的に、「帰忘郷」のアテはなんですか?

根本)けっこういろんな日本酒を飲むんですが、よくフルーティーという言い方がありますが、果物の香りがするような、すごい美味しいと思いました。アテは・・・やっぱりお酒はそのままですよね。

高橋)やっぱり! さっきまちづくり公社の佐藤さんに聞いたら“そのまんまです”と(笑)。

根本)というか本当にお酒の好きな人はそうだと思いますけど(笑)。

高橋)そうかー。ここの「帰忘郷」の酒米はなんという品種なんですか?

根本)「五百万石」です。ここでは60アールくらい栽培してます。

高橋)今年は全国的に猛暑でお米作りどうだったのかなと思うのですがいかがですか?

根本)ずっと暑い日が続くと皮が厚くなっちゃって実が細くなるということもあるんですが、そこまではいかなかったみたいで。去年は虫の被害もあってそこを心配したんですが、今年は虫の被害も少なくて、実もコロコロしていますから、結構いいお米ができるのかなと思っています。

高橋)もともと大熊はお米作りが盛んな町だったんですか?

根本)そうですね。お米と梨だったんですが、お米は基幹作物でした。

高橋)いま私たちの前にあるのは酒米としてのお米で、食用米の栽培というのも始まっていますか?

根本)はい、始まっています。この地域では今年から田植えの再開ということなので、コシヒカリ作っているのかな?

高橋)楽しみですね。大熊町は長らく帰還が叶わなかった町ですから、いま目の前に広がっている黄金色の稲たちが揺れている姿って、根本さんにとっては感慨深いんじゃないですか?

根本)そうですね。ずっと試験栽培をやって、実証栽培をやって、本当に5~6年もかかって、やっと米作りができるという状態だったので。私も農家で米作りをやっていましたので、少しでも元の姿に近づいていってほしいなと思いますね。


「大熊町の米で醸すふるさとの酒『帰忘郷』に込めた思い」。

営農が再開した大熊町では、酒米はもちろん食用米も収穫の秋を迎え、まだ小規模ながらも昔ながらの大熊の風景が戻ってきています。

数が少なく入手困難、希少な「帰忘郷」は、来春2月ごろに今年度分が出来上がる予定です。今回は試飲も叶わなかったので、新酒の出来上がりを私たちも楽しみに待ちたいと思います。旨酒の宝庫、会津でも指折りの酒蔵、「会津娘」の「髙橋庄作酒造店」が手掛けるお酒ですので、間違いなく美味しいと思います!


【プレゼントのお知らせ】
今回はもちろんこの「会津娘 純米吟醸酒『帰忘郷』」を皆さんに・・・と言いたいところですが、なにしろ来春を待つしかない状況ですので、「帰忘郷」と同じく大熊の米を原料に、郡山市の「宝来屋本店」が手掛けるノンアルコールの甘酒を、6本セットにして3名様にプレゼントします。
※(概ね11月末頃に発送予定となります)

ご希望の方は、まず動画をご覧になってキーワードをチェックしてください。動画の中で、大熊町農業委員会会長、根本友子さんに“大熊町の好きなところは?”という質問をしていますが、その答えがキーワードです。

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