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23.03.25
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福島への旅をもっと楽しく~scene協同組合の取り組み


今回のテーマは、「福島への旅をもっと楽しく~scene協同組合の取り組み」。全国有数の温泉県である福島県の中小の宿泊業による「scene協同組合」の取り組みを取材しました。


【今回のダイジェスト動画はこちら】
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浜通りの海産物“常磐もの”の魅力は番組で何度もお伝えしていますが、野菜や果物などの農産物や、酪農、畜産なども盛んな福島県は、豊かな食材の宝庫。そして東西に3つの山脈を持ち、源泉総数全国8位、温泉地数は全国4位という、じつは日本でも有数の泉質数を誇る“温泉県”でもあります。

そうした“温泉県・福島”の中小の宿泊業が連携して、運営の効率化やサービスの向上、魅力の発信を行なっているのが、「scene協同組合」。

その「scene協同組合」が手掛ける、宿と、その宿がお薦めする生産者を紹介するサイト、“tabi-scene”では、“復興庁新ハンズオン支援事業”として企画された、旅館オススメの“イケてる農家紹介と限定品販売”を行なう、「イケメン農家特集」を実施中。

今回はそんな「scene協同組合」の取り組みや、「イケメン農家特集」に登場する生産者の声をお届けしました。

東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の事故の影響で、福島県の水産物や農産物は長く風評被害の影響を受けていますが、じつは、そうした「食」への不安に連なって、県内の宿泊施設も同じように影響を受けてきました。そんな逆境をはねのけ、とくに中小の宿泊業が力を合わせて取り組んでいるのが、「scene協同組合」。組合代表を務めるのは、会津若松市、芦ノ牧温泉の老舗旅館「大川荘」社長でもある、渡邉幸嗣さん。

元ITエンジニアで、震災後、家業が経営に関わっていた関係で大川荘に入社。2016年から代表を務めています。組合設立の経緯や概要、背景にある思いについて、お話を伺いました。

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渡邉)最初は旅館で使う注文システム、ドリンクなどを端末で注文できるシステムをみんなで開発しましょう!ということで作った協同組合でした。それから色々と地元の農家さんたちとコラボして。やっぱり旅館とかは外貨を獲得して地域に還元するという役割があると思うんですね。そういう意味で、地元の農家さんたちを応援するというのをやりたいと思って。私の仲間にも面白いことをやっている若手の生産者の方がいっぱいいるんですけど、地元の農家をプロモーションするような企画をしました。

高橋)震災から12年。福島は風評被害と切り離せないところがあったかなと思うんですが、その歩みはいかがでしたか?

渡邉)とくに“食”の部分で風評はありましたし、“あの土地に行って大丈夫なのか?”というところで我々宿泊業界もすごく打撃がありました。でも全国で一番ちゃんとした検査をやっている県でもあること、また今の現状というのを、正直に的確に伝えていくことがいちばん重要かと思っていまして、そんなことを旅館でもやってきました。

髙橋)ただこの数年はコロナ禍の影響もあったじゃないですか。

渡邉)そうですね。新型コロナの影響は大きかったと思います。休館をしないといけない状況に追い込まれましたし。原発事故後の風評被害、コロナ禍という二重の苦難というか、そういった状況に追い込まれていたかと思います。我々の仲間でもやはり閉めざるをえないところもありましたし、なんとかここを生き残っていかないといけないなと思っています。

高橋)今はお客さん復活されていますか?

渡邉)コロナ前(の人数)までは復活していないですけれども傾向はありますね。だんだんとお客様に足を運んで頂けるようになったかなとは思っています。

高橋)ぜひ大川荘の代表として、そして会津の観光を担っている方として、PRをお願いします。

渡邉)福島県は面積も広くて、色んなカルチャーや食、旅館や温泉があるんですが、まだまだ知られていないものが多々あるんですね。そういったものを我々「scene協同組合」ではPRしていったり、知って頂くきっかけというのを作れればと思っています。






今回は我々も大川荘に宿泊。大川荘はロビーの景観が『鬼滅の刃』に出てくる「無限城」に似ている!と話題になった宿。この日もロビーで写真を撮っている宿泊客で賑わっていました。落ち着いたその趣き、眺望バツグンの露天風呂、そして美味しい地産地消のお料理とスタッフの皆さんのおもてなしの心と、細部にわたり、魅力あふれるお宿でした。

渡邉さんは、同じ福島でも、中通り、石川町の母畑温泉にある旅館、「八幡屋」がご実家。こちらは旅館100選で1位に輝いたこともある名旅館です。東京で就職したものの父と弟が大川荘の再建に携わったことで2014年に大川荘に入社。その後、沼尻高原ロッジの再建、“温泉の川”に入れる沼尻温泉「エクストリーム温泉ツアー」の企画、旅行代理店の設立、カレーとテキーラのお店オープンなど、次々とプロジェクトを立ち上げ、会津観光の振興をけん引している方です。

そんな渡邉さんが代表を務めるscene協同組合“tabi-scene”の「イケメン農家特集」。そのなかで取り上げられている農家さんも訪ねてみました。

まずは岳温泉の旅館、「花かんざし」の女将さん推奨、大玉村のサツマイモ農家、八起農園の白幡貴之さんです。

tabi-sceneの「八起農園」紹介ページ


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高橋)今回、花かんざしさんの女将さんから“イケメン農家”とご指名を受けましたが、率直にどうですか? 指名された時というのは。

白幡)えーと、お断りしようかと思ったんですけど(笑)、そういう“イケメンということだけではないよ”と、説得うけまして。

高橋)“心意気などに対してのイケメン”なのかもしれないですね。花かんざしさんでも、デザートにサツマイモを使っていると。召し上がりました?

白幡)まだ食べられていないんですよね。うちの芋を焼いたものをマッシュして、そのままの状態で砂糖も入れず出してくれている、芋の甘さを本当に楽しんでもらっているということで、けっこうデザート残す方がいなくなったと評判を頂いて、本当にありがたい限りですね。

高橋)白幡さんはサツマイモを作り始めてどのくらいになりますか?

白幡)10年くらいですね。この地域って美味しいお米が獲れるので稲作農家さんがほとんどなんです。本来サツマイモが向いていると言われるのは海沿いの砂地。サラサラの土だと確かにキレイな形の揃った芋がいっぱいつくんです。けども形は悪いけど芋の美味しさを追求するんだったら・・・この辺は“粘土つち”なんですけど・・・粘土つちでも作れるんじゃないかと思って、色々作り続けているところです。正直、大きい産地に負けない味は出せている自信はあるんですけど、やっぱり収量であったり、形や見た目のところはまだまだもっと追いつけるように努力しないといけないなと思いますね。ただ自分の場合は、農薬も使ってなくて皮ごと食べれるサツマイモなんですけど、そこを認知頂けているのかなとは思います。

高橋)10年前からということは震災後から。ここまで大変だったんじゃないですか?

白幡)そうですね。このへん地震の被害ってそれほどなくて、その後の第一原発の事故の風評被害というか、じっさい農地をぜんぶ除染したりとかもしたんですけど、やっぱり誰も経験したことがないので、試行錯誤というか暗中模索な感じでした。それでも、農地って作らないと1年で作物を作るのが難しくなってしまうっていうのがあるので、作り続けたというところと、やっぱり“辞める”という選択肢もあったんですけど、もともと肥沃な土地ですし、生まれた土地でもあるので、“ここで続ける”ということ、わざわざここを離れて別の場所で農業をやるっていうのも違うなと思ったので、ある程度、風評被害あること前提で頑張ってみてもいいのかなというところですかね。で、ちょっとずつ皆さんの意識が変わってきたというか、風評被害というか原発のフィルターが段々外れて、事実としての数字だったりというのをちゃんと分かって頂けてる感じで、今では味で勝負というところで頑張れているのかなと思います。

高橋)この味この美味しさを知ってもらうことがいちばん風評払拭につながるのかなと感じたんですけど。

白幡)そうですね。収穫した芋を花かんざしさんに卸したりとかはあるんですが、直接お客さんに販売している分がほとんどで、“美味しい”と言ってもらえたり、何回も通ってくれたりというお客さんを見ていると、自信になりますね。

高橋)そういったものが営農を続けられる源になったり?

白幡)はい。もうそこだけでやってるかなっていうところです。






tabi-sceneの「イケメン農家特集」、岳温泉「花かんざし」の女将さんが推奨する、大玉村のサツマイモ農家、八起農園の白幡貴之さん。現在は、シルクスイート、べにはるか、すずほっくり、鳴門金時、ふくむらさきの5種を手掛けている。サツマイモのほか干し芋などの加工品も販売しています。

お話のあと、シルクスイートの焼き芋を頂いたのですが、これがねっとりコク甘で美味しいこと美味しいこと。濡れた状態で200度余熱のオーブンで2~30分焼くのが一番うまい!という焼き方のコツも教えてくださいました。

tabi-sceneの「八起農園」通販ページ


続いてもうひと方、今度は、磐梯熱海温泉守田屋」推奨の、“川俣シャモ”です。

福島県川俣町が誇るブランド地鶏、「川俣シャモ」は、現在13軒の農家が加わる「川俣町農業振興公社」が、飼育・管理をしています。

もともと川俣町は闘鶏がさかんな地域だったんですが、じつは負けた軍鶏は負け癖がついて闘えなくなるので、食べてしまう。なのでその美味しさは地元ではみんな知っていたということ。それを町の名物にしようと、昭和58年に事業化が始まって、「川俣町農業振興公社」が立ち上がりました。

「守田屋」推奨の“イケメン農家”は、その「川俣町農業振興公社」メンバーで、養鶏4年目の2代目農家、佐藤卓也さんなんですが、今回は佐藤さんではなく、公社代表の渡辺良一さんにお話を伺いました。

tabi-sceneの「川俣シャモ」紹介ページ


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渡辺)震災当初はどうなっちゃうんだろうという不安があったんですけど、半年くらいしてですかね。雑誌に出たりだとか皆さんからの援助があって、だんだんお客さんが戻ってきてくれたんです。いちばん大きかったのは復興事業ですかね。“福島のものをどんどん買って食べましょう”という流れがありましたんで、それは大変助かりました。

高橋)やはりそこは味であったり安心安全ということを皆さんが伝えていくことで、理解が深まっていったイメージですかね?

渡辺)そうですね。美味しいということを分かってくださる方がいっぱいいましたんで、“やっぱりこの鳥は使い続けていきたい”とか“メニューにずっと置きたい”とか、そういう取引先からの声を頂いたり、皆さんが地道に応援してくれていた。それが大きかったですね。

高橋)もしかしたら聞いていらっしゃる方で、初めて「川俣シャモ」というのを聞く方もいるかもしれないので、ぜひその特徴を教えて頂けますか?

渡辺)今は“柔らかいものが美味しい”という風潮がありますけど、川俣シャモは噛む楽しさ、弾力のある肉質、噛むことによって、旨味がどんどん溢れてくるのが特徴です。今の時期だと鍋料理とか。一緒に入れた野菜も出汁を吸って美味しくなるんですが、いちばんはシンプルな塩焼きです。肉の旨味が塩で引き立つっていうか。鶏ってこんなに美味しいのかなっていう美味しさがあります。

高橋)育成、育てるうえでのこだわりってあるんですか?

渡辺)震災前までは放し飼い。柵を作って青草が生えているようなところに出してたんですが、震災後はそれがちょっと難しくなって。シャモって運動量が多いんですよ。なので屋内の鶏舎を倍増して、なるべくストレスを与えないでのびのびと育てるというのが昔からのやり方で、それがシャモたちの旨味とかに繋がってるんじゃないかなと思います。もう速くてですね、暗くなってからじゃないと捕まえられないんです。よく鳥目っていいますけど、日中は速くて大変なんです(笑)

高橋)あと今回「守田屋」さんからの推薦でメンバーの佐藤さんがイケメン農家だよ!と推薦されましたが、ご本人だったり周りのリアクションはどうでした?

渡辺)佐藤さんはシャモ生産者の若手ナンバーワンで、これからを背負っていってくれる方なんですけど、本当に取り組む姿勢がですね・・・顔もイケメンなんですが・・・その想いがイケメンというか、姿勢がイケメンというんですかね。彼のお父さんが何年か前に亡くなってしまったんですが、シャモ生産の立ち上げに携わった方なんで、その想いを受け継いでいま頑張っていますね。

高橋)「守田屋」さん、色んな調理法で川俣シャモを出されていると聞いたんですが、召し上がりました?

渡辺)はい。やはり鍋料理とかが多いんですけど、今は陶板焼きみたいな感じで出して頂いてるとか。まぁ色んな料理法があるんで全部食べてみたいんですけど・・・高級な旅館なので(笑)

高橋)試食会とかがあればいいですけどね。泊まってみたいです!

渡辺)是非! 磐梯熱海温泉は泉質もいいんですよ。肌がツルツルになるというか。

高橋)美肌の湯ですね!




(ランチでいただいた川俣町名物「川俣シャモの親子丼」です♪)
tabi-sceneの「川俣シャモ」通販ページ


【今回のダイジェスト動画はこちら】
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【プレゼントのお知らせ】今日はご紹介したイケメン農家、岳温泉「花かんざし」推奨、八起農園の「干し芋」の詰合せと、磐梯熱海温泉「守田屋」推奨、「川俣シャモ地鶏鍋セット」を、それぞれ3名様にプレゼントします。




ご希望の方は、まず動画をご覧になってキーワードをチェックしてください。動画の中で、「scene協同組合」代表、渡邉幸嗣さんに、“大川荘で大切にしていることとは?”という質問をしていますが、その答えがキーワードです。

キーワードを書いて、メールフォームからご応募ください。たくさんのご応募お待ちしています。

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2019年秋からお届けしてまいりましたHand in Hand、この時間帯での放送は今回がラストとなります。4月以降は、【毎月最終金曜日/朝8:10~8:17】に変更となり、ご案内役はユージさんと吉田明世さんにバトンタッチします。2011年に始まった「LOVE & HOPE」時代から12年間、ともに東北をはじめとする災害被災地に足を運び続けた高橋万里恵さんの登場は、今回をもって一旦ラストとなります。しかしこれまで積み重ねた取材先の皆さんとのご縁、絆は絶えることなく、いつの日か必ず番組に復帰してくれることと思います。そんな高橋万里恵さんから皆さんへのメッセージです。


「震災から12年。私はすっかり東北が大好きになりました! 食、景色、文化、そして何より会いたい人が沢山いる場所です。

震災後初めて訪れた時の景色は未だに忘れられません。復興という言葉とはかけ離れたものでした。そこから12年経ち、今ある素晴らしいあの場所や景色は、あの時諦めず、町のため、子供達のため、未来を信じた人達がいたからです。取材を通していつもその事を痛感していました。

悲しい出来事をずっと覚えておくのは正直難しいです。ただ災害が多い日本で学ぶべき事は東北にまだまだ沢山あります。私は一旦卒業となりますが、また皆さんのお耳に、東北の素晴らしさ、災害で大切な人を守るための知識をお伝え出来るよう精進していきたいと思っています。

あっ美味しいもの情報もしっかり蓄積しておきます! 本当に有難う御座いました。」

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