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23.08.11
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令和5年7月豪雨、被災した日田の無形文化財「小鹿田焼」の里を訪ねて


8月11日のHand in Handでは、7月の豪雨で被害を受けた、大分県日田市の伝統工芸品、国の重要無形文化財でもある、「小鹿田焼」の里を訪ねました。


7月はじめに発生した記録的な大雨で、一部の地域が土砂崩れで孤立するなど大きな被害を受けた大分県日田市。2017年の九州北部豪雨をはじめ、まるで線状降水帯の通り道のように度々記録的な大雨が発生。甚大な被害を受けてきました。

市街地から小野川に沿って約10キロ登ったところにあるのが「小鹿田焼の里」。


「小鹿田焼」は、約300年の歴史を持つ伝統的な焼き物です。電気や機械を使わず、地元の山の土を、川の力を活用した“唐臼”で砕き、それを練って、足で蹴って回す“蹴ろくろ”で成型、地元で採れた薪を使って、登り窯で焼く・・・すべての工程を手作業で行ない、しかもそれを、親から子へ受け継ぐ“一子相伝”の世襲制で守ってきました。

土を砕くのにも原料を練るのにも欠かせないという清流の小野川。これが時に氾濫して、そんな小鹿田焼の窯にも大きな被害を与えています。

黒木昌伸窯、黒木昌伸さんにお話を伺いました。

◆◆

「当日は夜中からすごい雨が降って、たぶん唐臼とかやばいかな、水入ってるかなと思ったんで、明るくなって5時過ぎぐらいに唐臼に行って、うちは5基、唐臼動いているんですけど、3基はもう水が入ってて、打ってる土がもう流れちゃって、道具だったり唐臼が水に浮いてるような感じで、あと2基は水入ってなかったんで、朝方、土をぜんぶ出しました。いまは土砂を掻き出して動かしています。大雨以降みんなで酷いところ酷いところ手伝いに行ったり、ボランティアさんもたくさん入って頂いたりで、唐臼の土砂の撤去は割合早く終わりました。もう販売も行なっています。ただ窯が予定通り焼けないので、モノ自体が少ない、現地で売ってるモノが少ないですが、景色を見たり仕事を見たりしに来て頂くのは全然構いませんし歓迎します。」



(3枚とも以前スタッフが「小鹿田焼の里」を訪ねた時の写真)

清流・小野川の水が水車を回し、皿山から掘り出した土をきめ細かくパウダー状になるまで唐臼が打つ。その音や風景は、“残したい日本の音風景100選”に選ばれています。

「小鹿田焼」は近年の焼き物ブームでも注目を集めていて、都内のセレクトショップでも見かけるほど。インスタ映えするのどかな山里の風景を求めて、若い世代の旅行者も絶えなかった「小鹿田焼の里」。スタッフが訪ねたのは7月末のことでした。まだ道はところどころ傷んではいましたが問題なく行くことは出来る。観光客の姿もちらほら見うけられました。

5基の唐臼のうち、2基が無事だったということで、この日も“蹴ろくろ”を回して作業をされていた黒木さん。まだ復旧の途上ではありますが、その表情に悲壮感はなくて、むしろ余裕さえ感じられました。

◆◆

「いま窯元は9軒あって、地元の土を使って手作業で、家族で作っています。土も手づくり、川の水を使った唐臼だったり、蹴ろくろ、登り窯だったり、人と自然の力で作っているという感じですね。唐臼は川の水を水路で流し込んで、その水の重みを使って水車じゃないですが“鹿威し”みたいな形で動かして、山から掘ってきた土を細かく砕く・・・餅つきを水の力でする感じです。時間はだいたい土入れたら20日から1ヶ月くらい。川と密接、川と近いところに無いとダメなので、やはり大雨なんか降ると被害はちょこちょこ出ますね。ま、被害にあったら土砂掻き出して片づけて再開するという形です。使い直せるというか機械じゃないので、機械だと一回水害なんかあると何百万円の機械壊れたとかそういう話になるんですけど、ここのはそういう機械じゃないので、片付けば使えるし、折れてたら大工さんに作り直してもらう。だから割合復興は早く出来るとこありますね。

――― 小鹿田焼の人気の高まりについては?

実感ありますね。注文やお客さんも増えていますし。

――― もうちょっと面白いもの作ってみよう!とか考えたことは?

若い頃は“今までにないものを”とかをなんてことはありましたけど、釉薬や色なんかも自然でできる色で限られているので、限られた中でやれることをやるという感じ。今までどおりやっていこうかなという感じです。」



芸術作品ではなく生活の道具を作ってきたという自負、潔さ。そして川と密接にかかわる生業、水害もまるで生活の一部にあるような受け止め方、黒木さんの言葉の端々から、地域を正しく知って共存していくという、災害列島日本に住む私たちにとって非常に重要で必要なものも含まれている気がしました。


今回スタッフを「小鹿田焼の里」へ案内してくれたのは、日田市観光協会の事務局長、黒木陽介さん。黒木さんによると・・・

“市内はまだ各所で復旧工事が行われているが、7月末の日田祇園祭も無事に開催。夏の風物詩・鵜飼いの風景を眺める屋形船も、何艘か被害を受けたもののすでに再開。林業の町・日田を様々なプログラムで伝える“林業ツアー”もある。豪雨被害で旅館などは一時キャンセルが相次いだが、元気に営業を続けている。江戸の文化や町並みが息づく、天領・日田をぜひ訪ねてください”とのこと。




(三隈川に浮かぶ鵜飼い船と屋形船)

(日田市の名物グルメの一つ「想夫恋」の焼きそば。香ばしく焼いたカリカリ食感がクセになる味)

全国各地、災害が起こると、つい“行っても大丈夫なのかな?”と考えて、それっきり疎遠になってしまいがち。被災時は頻繁に報道されるものの、その後の復興や再開の報せはなかなか届かず、自ら情報を取りに行かないとアップデートされないままになってしまうことも少なくありません。

災害が過ぎたあと、そうした被災地域へ観光で足を運んだり、或いはその地域のものを購入することもじゅうぶん支援に繋がります。

九州各地、秋田もそうですが、まだ復旧途上にある箇所が有っても、その多くが生業を再開していたり、旅人を待っていたりします。まさに日田もその一つ。今回は紹介できませんでしたが、日田には、別府、由布院と並んで“豊後三大温泉”に数えられる「天ヶ瀬温泉」もあります。

まだまだ続く夏休み、そして秋の行楽シーズンに、足を運んでみてはいかがでしょうか。

日田市観光協会オフィシャルサイト

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