
雄勝の海と住民をつなぐ巨大壁画「海岸線の美術館」
宮城県石巻市雄勝町にある「海岸線の美術館」。
「美術館」といってもみなさんがイメージするものではなく、館長の髙橋窓太郎さんは「完成予定はない。どんどん成長していく美術館」だと話します。どのようなプロジェクトなのか、詳しく伺いました。
「東日本大震災のあとに、雄勝町に建設された高さ10m×長さ3.5キロの防潮堤があって、そこに壁画を描き連ねていくプロジェクトを【海岸線の美術館】と名付けています。
2019年に僕が初めて雄勝町を訪問したときは防潮堤が建設中で、水平線が見えないのが衝撃的で。日本人にとって「海に行ったら水平線が見える」という当たり前の風景が無いことで心を痛めたんですが、そこは、アートの力で風景を取り戻す、描けばいいじゃないかというところで壁画という案が浮かびました。」
「住民の方に防潮堤が建った経緯などを聞くなかで、「反対運動があったものの建ってしまい残念に思っている」とか、「海が見えないし、これからどんどん人が来なくなっちゃうのではないか」という思いを抱えていて、僕が思いついたアイデアと結びつけられるのではないかと恐る恐る話したら「めっちゃいいじゃん」と言ってくれる方が多かったので、じゃあやってみたいなと。前を向いている方が結構いらっしゃいましたね。(反対する人は?)そもそも外から来た僕らのようなよそ者に対して「なんか言ってるわ」というのは絶対にあると思ったんで。そこは僕らが本気でやろうと思っていることを伝えなければいけないと思って、一軒一軒回って。僕が会社をやめてこの美術館の立ち上げのために来ました、といったら「マジか!」ってみんな笑ってくれて(笑)「うちの船乗る?」など言ってくれて。それで態度を示せてよかったなと思いましたね。」
「この壁画はずっと残り続ける。なら、なにを描くかがすごく大事だと思ったので、描く場所にどういう文化風習があったのか、住民の方と話してアイデアをもらって。例えば、名振にある壁画は元々あった「名振のおめつき」というお祭りがあって、それが震災以降、人手不足でできないってことなので、その神輿を担ぐ壁画を描くとか。」
無形文化財「雄勝法印神楽」の一幕
「今年描いた壁画は、「神楽」という雄勝の伝統舞踊をモチーフにしたものを描いて。その壁画の前で実際に神楽を舞う、雄勝シーサイドフェスを10月13日に開催するのでぜひ来ていただきたいですね。」
「印象的だった言葉がいくつかあって。「壁画が描かれて壁が低くなったように感じた」とか、「無機質なものが風景が描かれて豊かになった」とか。あと「壁があったからこそ僕らが来てアーティストが描いて素晴らしい風景になった」って、壁がだめなものではなく、あるならそれと寄り添ってどう生きていくかだと住民さんが言っていたことは、良い言葉だなと思いましたね。僕らも発見ばかりです。」
「いま壁画は9作品。制作中で、完成予定はなくて。サグラダ・ファミリアのようにどんどん成長していく美術館にしようと思っていて。いつ完成なのかも分からない。常に作り続けてどんどん増えていく中で、いろんな人が参加していろんな関わり方をする中で、未来に引き継いでいって、良いものだ、というふうになれば、それが世界遺産になるのは無理じゃないと思っているし。そのレベルで観光資産になることも目指しています。絶対に人口減少していくので、雄勝町が存在しているのかもあるが、そこに住む人が「昔の僕らの祖先はこういう生き方をしていたのか」と絵画から推測したり。それを見に来る観光客の人がいて、もっと東北が盛り上がれば良いなと思っています。海岸線の美術館は野外に高さ7m・幅50mの巨大な壁画なので多分見たことがない風景になっていると思います。写真で見るより何百倍もスゴイので、これは来たかたしか分からない感覚だと思うので、ぜひ来ていただければ嬉しいです。」
宮城県石巻市雄勝町 「海岸線の美術館」館長 髙橋窓太郎さんのお話でした。
このプロジェクト。防潮堤という公共物を使っているため美術館といえども入館料の収入はありません。そこでたくさんの方にこの活動を応援してもらうため、現在クラウドファンディングを実施中です。
CFに寄付すると雄勝の海産物や地元の名店で特別ディナーが食べられる権利、などのリターンや、壁画を分割したパネル1枚1枚のパトロンになれる寄付もあります!
興味がある方はコチラをご覧になってみてください。
⇒「海岸線の美術館 クラウドファンディング」(READYFOR)