
海藻愛と海女さんレスペクトがとまらない!能登・輪島の海の再生を願って

2024年の能登半島地震以降、能登半島では海岸線が隆起し、輪島では最大5.5mの隆起を観測しています。当然海の生き物や海藻にも影響が出ました。そんな輪島の海の変化を見つめるのが、「わじま海藻ラボ」の石川竜子さんです。長年水産業に関する調査や研究に携わり、中でも専門は海藻。海藻を語らせたらノンストップ!の石川さんに、地震によって海底が隆起した輪島の海岸線を案内してもらいました。



「この辺も海だったところですね。オオヘビガイという貝やトコブシ、サザエなどの死骸がそこらじゅうにある。もともと貝類は、海岸付近の割れ目を隠れ場にして住んでいる。海藻の死骸も震災直後はめくると、その下や岩の間に貝の死骸などが集中していた。それはおそらく、地震で揺れている間に海面が隆起したと言われていて、貝類は逃げ場を失って水分があるところに逃げ込んだのだと思う。岩の隙間や海藻の下に逃げ込んだけれど、結局は乾燥して寄り集まって死んでしまった。何万何十万という数が死んだということ。このあたりは海女さんたちのいい漁場だったんです」


海岸の岩場にうっすらと確認できる白い線、ここが地震前の水位です。案内してくれた輪島の鴨ヶ浦でも1.5メートルの隆起が目視できました。また輪島の海は、隆起だけでなく、地震で山肌が削れて、その土砂が大量に流れ込むことでも、大きな被害を受けています。石川さんは、海女さん達とともに、海の被害状況や漁場を回復するための国の調査にも参加しています。
「去年6月から7月の梅雨時期に、海に泥が流れ込んでくる被害が出ていて、さらに9月の能登半島豪雨で泥だけでなく土砂や流木が入ってきた。冬場日本海はしけるので、そのときに大部分の泥が流出して消えていったらしく、自然の回復力ってすごくて、一部は春にわかめが再生してきて、みんなで“よかったね”と話していた。ところが、今年の梅雨に再び泥が入ってきて。長期戦になるのかなと。調査を続けていかなければと考えている。
7月8月は夏の漁業ということで、海女漁の最盛期になる。メインはイシモズク(イワモズクとも呼ばれる)というもずくがある。輪島には岩のりとかワカメなどいろいろな海藻があるが、その中でも震災前は群を抜いて漁獲量が高かったのがイワモズク。主力の漁獲物。それとあわせて、アワビやサザエの漁が7月8月最盛期に入っている。」「でも海に泥が入ってきた影響や、市場が完全には再生していない影響で、出荷量は例年の何十分の一、という状況に抑えられている。報道では“能登輪島では漁業が再開した”と出ているが、みなさんの収入がもとに戻るには道半ばというより、一歩二歩進めたかどうか、というレベルだと思う」


「わたしはずっと水産に関わってきたので、漁業をやってきた方へのレスペクトがある。そんな輪島の人たちが漁業から離れることを防いで、海女の伝統を途絶えさせないように活動したい。日々努力して鍛錬して、美味しい魚を届けている。あと海女さんたちが元気で、同じ女性として憧れる。自分の腕いっぽんで稼いできて、資源が豊かだったころは7月8月に家族の一年分の収益を稼ぎ出す大黒柱で、家にかえれば家事育児をするお母さんでもあって。そういうフル稼働で働く姿というのは素敵だなと思うし、そういう方々を支えたいなという気持ちは震災前からあった。
地震の前から輪島に移住してくる計画を立てていた。震災が起こって、わたしが支えたいと思う、憧れている方々がすごく苦しんでいるのを見て、自分がこれまでやってきたことはこのためにあったのかもしれないと思った。それで移住と転職・独立をして、去年の5月、輪島に引っ越してきました」

200人以上いる海女さんを支える豊かな海だった輪島ですが、地震による海岸線の隆起や泥の流れ込みで、漁場が狭くなり、海女漁も以前と同じではありません。また石川さんは「海の再生や漁獲量もさることながら、海産物を獲る人を支え、水産業全体を回復させることが大事」とも話してくれました。輪島の海女さんと石川さんの取り組みはこれからも続きます。

<能登・輪島の美味しいおまけ>
能登の食にぴったり合うのは、やはり能登の美味しいお酒です。「酒ブティックおくだ」は輪島市内に店を構える地元の酒屋。ほぼすべての能登の地酒を取り揃え、無料の試飲も可能。能登半島地震では商品がほぼ割れてしまい、能登半島豪雨の影響で床上浸水しましたが、能登の味を届けるべく、元気に営業しています!能登・輪島に行ったらぜひお立ち寄りください♪
