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26.01.09
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津波犠牲者ゼロ、珠洲市三崎町寺家の集落を救った避難行動とは?


能登半島地震で大きな被害に見舞われた石川県珠洲市。「リブート珠洲」は復興支援ガイドツアーなどを通じて、珠洲市のいまを伝える民間団体です。ガイドの出村正幸さんが、珠洲市三崎町寺家地区にある自宅周辺を当時の様子を振り返りながら案内してくれました。


「能登半島地震の当日、午後4時6分に地震があったんです。反射的に家の外に飛び出しました。目の前が海なんですけど、全然普段と変わらない海だったんです。2020年12月から地震が頻発していましたから、地震には慣れっこだったんですよ。いつも通りの地震かと思って、安心して、海が見える二階の部屋に戻りました。

そうしたら、また4時10分に地震がありました。これが強烈だった。いままで経験したことがないくらいの大きな地震だったんです。窓から見たら倒壊した家もあったし、窓から見ていたら、どんどん波が引いていったんです。東日本大震災の報道で大津波の前に波が引くというのを見ていたので、“これは津波が来るんじゃないか”と判断して、それでようやく逃げなければ、と思いました。

隣に同世代の姉妹が住んでいるんですけど、妹さんが駆け込んできて、お姉ちゃんが病気で歩けないから助けてほしいと言われました。一緒に避難しようということになり、車で避難しようと車の鍵を開けようとして、鍵を忘れたことに気が付いたんです。玄関のすぐ横に鍵を置いていたので、鍵を取って振り向いた瞬間に、津波が押し寄せてきました。鍵がもしあって、車のエンジンをかけて車を動かしていたら、津波でやられていたんですよ。鍵がなくてよかった、間一髪でした」


珠洲市では最大4.7メートルの津波を観測しました。出村さんの自宅にも津波が押し寄せ、避難に使うはずの車が津波に飲まれています。そこで、出村さんは車を捨てて、隣人の女性を背負って、自宅の裏の高台に徒歩で避難して、難を逃れました。

寺家地区では、短時間に住民全員が高台の集会所に避難して、犠牲者はゼロでした。その要因を出村さんはこう話します。


「一つ目は2011年7月11日を第一回として、自主的に避難訓練を開始していたことです。たまたま地区に防災士の試験に受かった人がいて、“この地区は津波が起こったことはないけれども避難訓練をしておいたほうがいいんじゃないか”と提案してくださったんです。賛否両論はありました。津波が来たこともないのに、避難訓練をやってもしょうがないじゃないか、とね。でも開催する方向で3月6日に話がまとまった直後に東日本大震災が発生して、“やはり避難訓練は必要だ”という考えがしっかりとまとまった。珠洲市としては、特に避難訓練などを指導していなかったけれど、地域防災として自主的に避難訓練を行って、最低でも年1〜2回やっていました。避難経路も、普段使っていない草ぼうぼうの農道をいつでも使えるように整備しました。そういった準備がよかったと思うんです。

二つ目は正月の地震で帰省客がいたことが、プラスに働いたということです。わたしたちの地区はお年寄りの一人暮らしが多いんですが、帰省客がいたからこそ、若い人が率先して自分の家族の避難を誘導した。

(今回の津波の記憶をどうやって次の世代に繋ぐか)基本的に住民の中では伝承活動は全く考えてないように思いますが、わたし個人としては伝えていかなければと考えています。2025年10月にも自主的な避難訓練をやりました。地震のときは火事場のバカ力で女性をおぶって急な階段を上りきったけれど、もう一回やってみろと言われてもうまくいくかはわからない。セオリーとしては車で避難するのはよくないんですけど、10月の避難訓練ではあえて隣の女性に車に乗ってもらって、避難をやってみました。いろんなパターンを考えて、試行錯誤しながら、反省を踏まえ問題点を明らかにして改善していかなければ、次はどうなるかわからないとわたしは考えています」


いまだ震災の爪痕が残る寺家地区。そんな中でも住民の命を救ったのは「日ごろからの自主的かつ継続的な避難訓練」と「助け合いによる避難行動」でした。地域では「なにかあったら集会所」というのが合言葉になっていたそうです。わたしたちが学ぶべき教訓がここにはあります。

リブート珠洲」では復興支援ガイドツアーを開催しています。津波跡や避難経路をたどる、体験型のツアーで、個人はもちろん、修学旅行や企業研修などにも対応しています。詳しくは「リブート珠洲」のオフィシャルサイトをチェックしてください。

<能登のおまけ情報>

natural cafe minanto(ミナント)」は、旧鵜飼駅の駅舎にお店を構える小さなカフェ。店内に一歩足を踏み入れると、アンティークな装飾と色とりどりのドライフラワーがあしらわれた心地よい空間が広がります。この日のminantoランチは「玄米甘酒ポークデミ煮込みスープ」「ひじきとシーアスパラガスの里芋ポテサラ」「コールラビと白人参のきんぴら」など約40品目を使用したプレート。食材もオーガニックにこだわっています。震災後一時金沢で営業していましたが、2025年11月にもとの場所でリニューアルオープンしました。営業日やお店の様子は「natural cafe minanto(ミナント)」のインスタグラムでチェックしてください♪

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