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26.02.06
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能登の伝統食を未来に「能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと」


能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと」は一日4組限定の小さな宿。能登出身の船下智香子さんと、オーストラリア出身の夫でシェフ、ベンジャミン・フラットさんが30年にわたり営んできました。

能登半島地震の影響で一時休業していましたが、2025年4月に営業を再開。また、「一般社団法人能登地震地域復興サポート」(通称のとサポ)を立ち上げて、能登の伝統食の継承や輪島塗レスキューの活動を行っています。


船下智香子さん:能登半島地震で宿の壁が壊れ、土地の端っこにはがけ崩れが起こり、露天風呂も全滅してしまいました。宿を一年間休むということはすぐに決めました。水が来てから炊き出しを始めて、その中で非営利の社団法人を立ち上げて、「能登の食と伝統を未来に繋ぐプロジェクト」を始めました。そこで「輪島塗レスキュー」を始めたんです。

輪島塗は300年以上伝わる能登の漆器で、50年以上の歴史のあるおうちはほとんど全部、輪島塗のお膳を持っているんですよ。だいたい自宅で冠婚葬祭をするので、最低でも20膳、一番多いところでは150人前のお膳がありました。普通のお宅でね。

例えば10LDKのおうちに住んでいた方が、仮設住宅の6畳4畳二間で暮らしていると、輪島塗だけで部屋がいっぱいになってしまい、とても持っていけない。ご先祖様から受け継いだ輪島塗を大事にしたいけど、捨てざるを得ないという状況です。能登の食の中心にある輪島塗を捨てずに守っていかなければいけないよね、ということで、次の方にお渡しする「輪島塗レスキュー」の活動をやっています。

すでに300人前以上、輪島塗のお膳のお嫁出しをしています。土砂崩れで蔵も半分埋まってしまったお宅でも、ご自分で輪島塗をレスキューされて、「こんなふうに泥だらけだけど、引きとってくれるか?」と言われてお預かりしたり。津波で砂をかぶってしまった輪島塗を「これも持っていってくれる?」という方もいて。いろんなおうちの方の話を聞きながら、向き合う作業です。

フラットさん:高齢の方というのは自分たちの文化のソース(源流)です。料理のことなども全部知っている。だから、いろいろ話をするのはすごく面白いです。仮設住宅ではその文化が壊れてしまって、とても寂しいです。


船下智香子さん:そういったこともあって、「能登の食文化の伝承」をやろうということになりました。前からやってはいたのですが、まさかこんなことになるとは思わないから、今から思うとのんきにやっていたというか。自分たちが作って、それを食べてもらって、というやり方でやってきたけれど、いまこの伝統をキープしないと本当になくなってしまうんじゃないかという危機感が震災以降すごく強くなって。いま取り組んでいるのは、能登の食文化の知恵を本にまとめるという活動です。

震災のとき、電気も水道も止まってしまったけれど、能登は保存の知恵がすごく豊富なんです。「しょうけば」という発酵食のお部屋があって、そこに山菜があったり、魚の糠漬けがあったりしたので、震災のときはそれを出してきて食べたりしました。その時に「能登の保存食/発酵食/郷土料理って、究極の非常食じゃないか!」と気がついて。絶対にこの技術や方法はいま遺すことに意味があると気がついて、本を作りだしたんです。“能登の保存食は最強の非常食”“能登のマイクロカルチャーの面白さ”をまとめたいと、いま能登のおばちゃんたちを取材しているところです。気づきばかり。

フラットさん:わたしも能登に来て30年になるけれど、「ベンさん、これわかる?」と聞かれて「全然わからない!」というものがまだまだたくさんある。このマイクロ文化は凄い。料理や食材が違う。すごく面白いです。


のとサポ」でレスキューしたお膳はすでに3000人分以上。それらを洗浄して、少しずつ個人のお宅やレストランなど、次の使い手に繋いでいるそうです。

そして「能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと」の最大の魅力は、能登の発酵食を使った絶品イタリアンです。宿でスタッフがいただいたのは「自家製カッテージチーズと珍味巻鰤の前菜」「アオリイカと“いしり”のパスタ」。パスタはクリームベースのソースにイカ墨が融合した一品。どれもフラットさんが生み出す創作イタリアンです。


船下智香子さん:“いしり”は能登に来たら絶対に味わってほしいです。能登に昔から伝わる魚醤油で、魚介と塩を使って、一年以上発酵させているお醤油で、日本の三大魚醤の一つ。お醤油の二倍以上のうま味成分があるので、ちょっと入れるだけで食材のうまみがぼーんと出てくるんです。主人はイタリアンの隠し味に使うことが多いです。

フラットさん:パスタにもスープにも使います。

船下智香子さん:能登に来られたらぜひ“いしり”を体験してほしいと思います。


能登の伝統食のひとつ「巻鰤(まきぶり)」は古くはお殿様に献上されたと言われる珍味。作り手が途絶えるかも、と耳にした智香子さんは「ぜひ作り方を教えてほしい!」と連絡を取り、いまは一緒に作っているそうです。お二人のモットーは「能登らしく、わたしたちらしく」。能登の伝統食と能登時間を味わいたい方には最高の時間を約束してくれます。

能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと
のとサポ

<能登のおまけ情報>

能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと」にほど近い「BY THE SEA NOTO」はフラットさん夫妻が経営する古民家一棟貸のゲストハウス。まさに海が目の前に広がります。一日一組限定で部屋は3部屋。2名以上最大6名まで宿泊可能です。総ヒノキの風呂が旅の疲れを癒してくれるほか、一階にはキッチンがあって、調理道具や調味料、食器、カトラリーなども完備。食材を調達すれば自炊も可能です。外食派は宿のすぐ隣にあるイタリアン「:Re Noto CREW」にどうぞ。能登の発酵食を使ったイタリアンをカジュアルに楽しめます。ちょっと贅沢に「ふらっと」か?暮すように泊まる「BY THE SEA」か?あなたはどちらを選びますか?

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