
震災から15年 町の再生を絵本に『かべのないまち 希望の物語』

宮城県女川町。この町は住民が中心となって復興計画を作り、海が見える、魅力的なまちづくりを実現したことで知られています。生まれ変わった女川町の美しい町並みは観光スポットとして人気で世界的にも評価され、若い移住者も多くいます。
そして震災から15年。こうした女川町の復興をめぐるストーリーを「絵本」として語り継ごうとしているのは、女川に移住した若い世代、女川に拠点を置くNPO「アスヘノキボウ」です。代表の後藤大輝さんにインタビューしました。

「『かべのないまち 希望の物語』という復興の絵本を3月末に発売します。震災から15年、東日本大震災がどう未来の人たちに記憶されるのかなと考えると、「福島原発事故」「津波」といった、命や防災のメッセージ性の強いものが多いと思います。でも僕自身は、この女川町でそういう危機的な状況からふるさとの再建のために尽くしてきた人たちが、どういう想いでこの街を作ってきたのかという「考え」の部分を残したいと思ったんです。
例えば、女川町は被災地の中でも防潮堤を見える形で作らずに、町自体の高さを上げました。これが絵本「かべのないまち」の題材にもなってますが、女川の人たちは、海を子どもたちにどう残すかを考えた。もうひとつは、当時の町のリーダーの方たちの「町づくりには還暦以上は口出さず、若い人たちに託したい」という話。この復興には20年かかる。建物などインフラの整備に10年、それを評価する期間も含めて20年はかかる。20年後は死んでいるかもしれないし、生きていたとしても責任取れない。だから「若い人たちに託したい」という決断をして、30代、40代の世代の人たちがまちづくりをしていくことになったんです。
僕自身は、その「還暦以上は口を出さず」の話を聞いた時に鳥肌が立ちましたね。その決定は、見方によっては重い責任を次の世代に押し付けるとも言えると思います。ただその後、当時のリーダーたちは何もしないわけではなくて、若い人たちがやりたいと思ったことで問題が起きれば弾除けになったり、お金に困ったら金策に走ったりバックアップは何でもする、でも口は出さない、頼られた時に応えるという姿勢だった。これってすごく勇気のいることだと思うんですけど、そういう意思決定ができたことに、すごく感動しましたね。」

NPO法人アスヘノキボウは2013年に発足。現在のメンバーは、大半が“他県から移住してきた若者”。代表の後藤さんも東京からの移住者です。
女川町は「新しいスタートが生まれる街」というスローガンを掲げていて、アスヘノキボウは女川で50社の事業立ち上げを支援しています。新たなビジネスを立ち上げたい若者の移住も続いているそうです。
後藤さんの目から見て、今の女川町はどう映っているのでしょうか。

「ひとつは、いま若い人たちがたくさんこの地域に入ってきてくれているので、そういう意味では希望がたくさんあるなと思います。もうひとつは、やはり15年が経つので「還暦以上は口を出さず」でバトンを受け取った、当時30〜40代の皆さんが50〜60代に近づいてきている。その中で次に何が起こるのかは、この街を左右してくると思いますね。還暦以上は口を出さず、を踏襲することが正解だとも思わないですけど、ただやっぱり同じ人がずっと同じ場所に居続けて、詰まるというよりかは、それぞれ役割を変えながらまた次の人たちにバトンを渡していけるような町になったらいいなと思ってます。
僕自身もアスヘノキボウの経営は長くても10年間かなと思っていて、特にアスヘノキボウは女川町の外から新しい人を連れてくる、町にとっては風だったり、変化を入れることが我々の役割だと思うので、なおさら僕自身が変わっていくこともすごく大事だなという風に思ってますね。」

絵本にはこんな一文があります。
「何を100年先に残したいだろう
どんな街だったら子供たちは誇りに思えるかな?
その問いかけがみんなの気持ちを未来に向けたのだった
支援物資として届いたクレヨンで 新しい街のアイデアを描いていった」

絵本『かべのないまち 希望の物語』は女川の復興に関わった人たちの実体験をベースに、NPOアスヘノキボウが構成。3月27日に発売。Amazonで予約が始まっています。
また出版を前に内容をすべて収録した「全編読み聞かせ動画」がYouTubeで公開されています。ぜひその思いに触れてみてください。
