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23.09.30
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誇れる常磐ものの魅力〜福島県相馬市からのレポート


9月22日と29日のHand in Handは、福島県相馬市から、県産の海産物の魅力を発信する、漁師と食品加工会社の3代目、ふたりの人物へのインタビューをお届けしました。


●レポートはこちら
9月22日放送/前半
9月29日放送/後半

●ダイジェスト動画はこちら
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福島の海産物の魅力を発信する、松川浦の漁師と食品加工会社の3代目
まだ蝉しぐれが響く8月半ば、ユージさんと共に取材に訪れた相馬市。迎えてくれたのは、松川浦漁港を母港とする、相馬双葉漁協の沖合底引き網漁船、「清昭丸」の船主、菊地基文さんと、その松川浦にある“相馬復興市民市場”「浜の駅松川浦」でも人気を集めている商品、「おびすやのピリカラ青のり佃煮」を手掛ける、「おびすや」の3代目、久田裕一郎さんです。

相馬を含む福島の漁業は、震災と原発事故のあと、魚種や操業日数を制限して漁を行う“試験操業”が続きましたが、菊地さんはそうした思うように漁に出られない時から、加工品をプロデュースしたり試食イベントを開いたり、“常磐もの”と呼ばれる福島沖で水揚げされる魚の魅力を発信してきた人物です。その歩みは「クロノス」内の「LOVE & HOPE」の頃から折に触れて伝えてきました。

(「クロノス」パーソナリティの中西哲生さんと菊地さん)
当時、福島の漁業の未来が見通せない状況の中でも、常に胸を張り、“常磐もの”の魅力を我々に語ってくれた菊地さん。潮目の海で魚種が多く、プランクトンが豊富で質が良い、なかでも遠浅の海で育つヒラメやカレイなどの底魚は日本一モノがいい!といった特性を教えてくれたのも菊地さんでした。

実際に相馬に通うようになって美味しい“常磐もの”を折に触れて味わわせて頂いていますが、ヒラメに限らず、まず形が良い! そして味が良い! 菊池さんに言わせると、“良い環境で良いエサをたらふく食べているんだから、そりゃいい子が育つでしょ”という事なんですが、たとえば同じ白身でも旨味が濃い! 釣りたてのヒラメを持ち帰って食べた時も、まるで数日寝かせたように旨味があって、“常磐もの”のそのポテンシャルの高さに驚かされたものです。

(相馬のヒラメのお刺身♪)
200を超える魚種の多さが福島の漁業の自慢の一つですが、最初3魚種から始まった試験操業は、やがて全魚種が操業対象となり、今は拡大操業を経て本格操業の移行期に入っているということ。今までは福島県の限定された海域と操業時間も縮小してやっていたのが、海域も広げて作業時間も長く、たとえば菊地さんの沖合底引き網漁なら、泊りがけで漁に出る震災前の本来の操業の形に近づいているという状況にまで来ています。

漁業者の皆さんが一歩ずつ取り組んできたここまでの歩みの中には、言葉にならない悔しさであったりもどかしさであったり、様々な思いもあったことと思いますが、菊地さんはいつでも、“これ美味いから食べてみな”という感じで、嬉しそうにいろんなことを話してくれて、悲壮感は皆無(笑)。そのたびに我々も相馬が好きになるというか、魅力を知ることになっていきました。何かの時に菊地さんが話していたこと、“常磐ものの良さで、一度にたくさんの人を感動させることは難しいけど、膝つめて魅力を伝えれば、一人の人は感動させることは出来る。その一人が持ち帰った感動をまわりの人に伝えて、感動を広げていければ”というのを、最初から本能的にやっていたのが菊地さんなんだと思います。今や番組スタッフにとって、菊地さんは“相馬の風景”の一つになっています(笑)。


レポートにある「そうま食べる通信」もそうですが、そん引力に巻き込まれるように菊地さんのまわりにはいろんなものが生まれています。その一つが「おびすや」の商品。


まさに“これ美味いから”じゃないですが、ある時に「浜の駅松川浦」で、菊地さんがお土産で持たせてくださったものの中に入っていた「おびすやのピリカラ青のり佃煮」。青さ海苔が相馬の名産なのは知っていましたが、“その佃煮なんだな”となんの気なしに帰宅して食べてみたら、これが青さ海苔そのままの食感と、甘すぎず素材の味、風味を生かしたじつに美味しい佃煮で、まあ食べてびっくり。ぜんぜんそのプロフィールについて菊地さんから説明は無かったので(笑)、調べてみたら、もともと民宿だった「おびすや」が震災で廃業したあと、“また食べたい”という声に背中を押されて、食品加工会社として事業を再開したということ。その後、菊地さんから紹介してもらった「松川浦コロット」も「おびすや」さんの製造という事で、今回のふたりのインタビューに至ったわけですが、まさか久田さん一家に事業再開の決心をさせたのが菊地さんだったとは。(詳しくはレポート参照


家族で商品づくりを手掛ける「おびすや」。まさに母の手作りのような優しい味わいが特徴で、「浜の駅松川浦」でも観光客だけでなく地元の皆さんがこぞって佃煮を手に取っていました。

じつはこのインタビューのあと、裕一郎さんやお父さんの則雄さんが、下國伸シェフ考案の「松川浦コロット」の美味しい食べ方、放送で食レポもお届けした、追い海苔・追いチーズを作ってくれたんですが、これがもう絶品!


是非これ皆さんにも実践して欲しいと思います。今回のインタビューでは触れませんでしたが、相馬市は、一昨年、去年と2年連続して発生した震度6強の地震で、民宿などが大きな被害を受けて、まだ復旧途上の箇所もあります。観光で多く人が訪れて地元でお金を使うことも支援の一助になりますので、出来れば相馬市へ足を運んで、食べたり飲んだり泊ったりして頂ければと思います。そして「浜の駅松川浦」に行って、「おびすや」の「松川浦コロット」と「青のりピリカラ佃煮」、シンプルな「おびすやの青のり佃煮」(こっちも美味しいです!)を買って、是非ご自宅で試してみてください。たぶん腰が抜けます。

もちろん訪問が叶わない方は、「おびすや」のオフィシャルサイトでも販売していますので、こちらを訪ねてみてください。


菊地さんがメニューのプロデュースにも関わる「浜の駅松川浦」の食事処「くぁせっと」では、毎日相馬の美味しい魚を使ったメニューを提供していますが、オススメは「地魚丼」。はじめはふつうに海鮮丼として味わって、そのあと漬け丼のつゆで“漬け丼”として。そして締めは無料の“出汁コーナー”で“出汁茶漬け”にして、3回楽しめます。





今回お伝え出来ませんでしたが、菊地さんはもちろんプロデュース業が本業ではなく、福島の漁業の主力である沖合底引き網漁のすご腕漁師であり、そんな菊地さんの魚を指名して取り寄せる料理店も全国各所にあります。そのうちの一つである、東京・市ヶ谷の「五色」を後日訪ねたのですが、ちょうど菊地さんから超超大物のノドグロ(アカムツ)が届いていて、料理長曰く“菊地さんのおすすめの食べ方”という、シャブシャブで頂きました。

(大きさを示すためにライターを置きました。。)

シャブシャブのあとはその出汁で“どんこのつみれ”で鍋をいただき、締めは雑炊です。はい、腰が抜けて立てませんでした。

菊地さんと出会って間もない頃、まだ福島の魚が風評被害のさなかにある頃ですが、そんな中でも、その素材の良さを知る料理人から、“魚は基っちゃんからしか買わないと言われて涙が出た”という話を聞いたことがありました。我々が訪ねた店も大にぎわいで、多くの方が常磐ものに舌鼓を打っていましたが、菊地さんの言う“一人の感動が広がっていく”光景をまさに目の当たりにした一夜でした。


(お造りもメヒカリ唐揚げも最高でした♪)
最初はなるつもりもなかった漁師をひょんなことから継いで今に至る菊地さん。新しい船の完成も楽しみですが、9月から操業を再開した沖合底引き網漁は、福島県の沿岸漁業の主力であり、県全体の水揚げ量がいまだ震災前の2割にとどまる中、5割を超えていて、ひときわ気を吐いています。その“沖底”で獲れるヒラメなど、一部の魚種は価格が全国平均を上回り、もともと震災前は高かった市場評価を回復しています。

今夏、福島第一原発では処理水の海洋放出が始まりました。国の定めた安全基準の40分の1、WHOの飲料水基準の約7分の1未満という、たいへん厳しい基準を設けて行なう海洋放出は、国際原子力機関=IAEAからも、“国際安全基準に合致し、人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである”という結論が公表されています。

安全性に何ら問題はなく、今回菊地さんからも、“僕たちのやることは変わらない。いい魚を獲って、待っている人たちに届けるだけ”というコメントを頂きました。

風評被害を生まないためにも、リテラシーを高く持って向き合う事、まずはこれが大切なのは間違いありませんが、菊地さんがこれまでそうしてきたように、常磐ものの魅力を伝え、感動の輪を広げていく事をHand in Handでも目指していきたいと思います。


筆者である私ディレクター:Nが個人的に好きなのは↓。これについてはまた次の機会に書きます。

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