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24.02.24
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福島県浪江町請戸、横山和佳奈さんインタビュー


2月16日と23日のHand in Handは、福島県浪江町請戸からのレポートをお届けしました。お話を伺ったのは横山和佳奈さん。請戸出身で、震災後も避難先で守り受け継がれてきた請戸の伝統芸能、「田植踊」の踊り手でもあります。

●レポートはこちら
2月16日放送/前半
2月23日放送/後半

●ダイジェスト動画はこちら
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2月18日、請戸の苕野神社で300年以上前から続く伝統行事「安波祭」が行われ、豊漁と豊作を祈る神事、そして伝統芸能の「田植踊」が奉納されました。去年までは更地だった場所に真新しい社殿が建ち、そのお披露目を兼ねての今年の「安波祭」でした。

(去年の苕野神社)
請戸は港へ行けば福島第一原発が肉眼で見えるほど近い場所。津波で被害を受けただけでなく原発事故の影響で避難を強いられ、当時はこうして人々が集う光景はとても想像できない状況でした。避難指示解除後も請戸は災害危険区域に指定され居住することは出来ません。各地へ散り散りとなった請戸の人たちにとって、この再建された苕野神社は、かつて人の営みがあった故郷の証であり、拠りどころにもなるのではないでしょうか。


震災当時、小6だった和佳奈さん。前身番組「LOVE & HOPE」で初めて取材したのは、避難先で「田植踊」を踊っていた頃。故郷を愛し、請戸が忘れ去られないよう懸命に地域の来し方を語っていた姿が印象的でした。今回のインタビューでは、“別の地域でふつうに就職してと考えていた時もあった”と話してくれましたが、現在は隣の双葉町にある「東日本大震災・原子力災害伝承館」で職員として働いています。地域とのご縁や“導き”という印象を感じざるを得ません。

(平成31年の浪江町の成人式を取材した時。和佳奈さんを見つけてスタッフと撮影)
(伝承館に就職前の和佳奈さん。取材に訪れた際に偶然出会ってパチリ)
そんな横山和佳奈さんのインタビュー全文も掲載します。聞き手はアイドルグループ=LOVEのメンバーで、福島県いわき市出身の諸橋沙夏さんです。

◆◆

諸橋)真新しい苕野神社、遠くから見ても目立ちますね。

横山)ほかに建物がないだけにどこにいても見えますものね。こんなに立派に再建されるとは思ってなかったのですごい嬉しいです。

諸橋)もともと苕野神社、そしてこの周辺の街並みってどういう感じだったんですか?

横山)神社が建ってるこの辺りはほとんど住宅街で、神社なんて遠くから見えないぐらい家がたくさん建ってました。

諸橋)震災直後っていうのはどのような形になっていたんですか?

横山)とくに神社がある周辺は海がとても近いので、もちろんすべて流されてしまって、家はもう基礎しか残ってないっていう状態でした。

諸橋)和佳奈さん自身の震災後の歩みっていうのは?

横山)私は小学校6年生の時に被災しているので、避難してすぐやらなきゃいけなかったのは中学校探し。何とか親が見つけてきてくれて入学し、高校、大学と進学して、今は私の出身地の浪江町の隣にある双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」っていうところで職員をしています。

諸橋)私も震災当時は中学2年生。それこそ浪江地区の方だったりとか、100人ぐらい転校されて、最後は本当にみんな仲良く卒業したっていう思い出があります。避難先でも和佳奈さんが踊り続けた「田植踊」。さっき少し動画を見させて頂いたんですけど、すごくかっこよかったです。当時はどのような思いで踊ってらしたんですか?

横山)やっぱり請戸にそもそも立ち入ることが出来ないっていう状況の中で、この踊りだけがなんとか復活していたので、戻れないけど、でもこの踊りを通じて“請戸の人たちが元気になってくれればいいな”とか“思い出してくれたらいいな”って思ってました。

諸橋)住民の方々からはどのような言葉をもらいましたか?

横山)請戸では踊れないので代わりに仮設住宅で踊ろうということで請戸の方がいるところで踊ってたんですけど、見ていたおじいちゃんおばあちゃんがやっぱりすごい懐かしいみたいで、すごいもうノリノリで手拍子をしてくれたりとかお囃子口ずさんでくれたりとか、中には涙流しながら見てる方もいて、言葉っていうよりはその光景がすごく私には印象的で、踊ってたのは福島市とかすごい離れたところではあったんですけど、請戸で踊ってるような錯覚に陥ったのをすごく覚えてます。

諸橋)2017年に一部避難指示解除となりまして、当時はまだ更地だったこの場所で踊ったということなんですけど、どうでした?

横山)“やっと戻ってこれたな”っていうのはやっぱり思ったし、当時もちろんお社の方は津波で流されてしまって無かったんですけど、ただ基礎部分だったりとか、あと神社の石畳はかろうじて残っていたので、その石畳を見た時に“あ、懐かしいな”ってすごく思いました。

諸橋)故郷に寄り添う気持ちっていうのはずっと揺らがなかったんですか?

横山)うーん、そうですね・・・揺らがなかったと言い切れないところはあって、やっぱり中学、高校、大学って進学して、卒業後の進路を考えた時に、積極的に戻ってこようって実は思ってなくて、元々はもうちょっと勉強して別の仕事に就こうって思ってたんですけど、色々考えた時に“災害を伝承する仕事”も自分のやりたいことの一つではあったので、いいなって思った時にちょうど2020年に双葉の伝承館ができたので、“あそこで働こう”と。“浜通りに戻って仕事探そう”っていうよりは“浜通りで仕事を見つけたからそっちに帰ろう”というような感じで、あまり積極的に“私は浜に帰るんだっ”ていうのでは実はちょっとなかったっていう・・・

諸橋)和佳奈さんは何歳の頃から田植踊をやられていたんですか?

横山)私は小学校4年生の頃から踊っています。(きっかけは)安波祭の田植踊って神社で踊るだけじゃなく各家々も回るんですね。で私の家にも毎年来てもらってて、“着物かわいい”“私もやりたい!”って思っていたのがきっかけで、そもそも年齢制限が4年生、5年生6年生だったので、4年生になった年に“やっと踊れるぞ”というので踊り始めました。


(横山和佳奈さん提供。最後の2枚は今年の安波祭より)
諸橋)本来は地元の子供たちが踊り手の中心。和佳奈さんはだいぶいま大人でいらして。

横山)震災後は踊り子たちが全国バラバラ散り散りに避難をしてしまったので、後継者がいない。なのでOGたちが集まって踊ってたんですけど、その子たちもやっぱどんどん大きくなってっちゃって、で最初は「請戸の子」「女の子」って制限でやってたんですけど、そうも言ってられない。でまず年齢制限撤廃、“もう男の子でもいいよ”、なんなら“浪江じゃなくてもいいよ”って枠を撤廃していって、なんとか踊りの好きな方に踊って頂こうって、踊り手を集めてやっている状態です。

諸橋)今は少しずつ浪江町や賑わいを取り戻していますけども課題に感じているものは?

横山)やっぱりいっかい人がみんな避難しちゃった場所なので、6年後に“帰ってきていいですよ”って言われてもなかなか帰る人は少ない状況で。でもそんななか帰ってきた人もいれば移住者いたりしますし。でもやっぱりお店が少なかったり病院が診療所しかないというような状況で、なかなか不自由なく生活できます、とは言い切れない場所なので、やっぱりもうちょっとお店とか病院とかが充実していくと、さらに人が増えていってくれるのかなーって期待をしているところです。

諸橋)先ほども“ドラッグストアが欲しい”って・・・

横山)ドラッグストアまではもう生きていける気がする・・・(笑)

諸橋)去年の夏、福島市の高校生たちと朗読劇「請戸小学校物語」を作って上演されたということなんですけども、どのような物語だったんですか?

横山)そもそも「請戸小学校物語」っていう紙芝居があって、それを脚本家の方に朗読劇風にアレンジしてもらったってやつなんですけど、内容としては3月11日に請戸小学校の子どもたちがどういう避難をしたか・・・地震があって大平山っていうところにみんなで走って避難をしましたっていうのを分かりやすくまとめているものです。

諸橋)伝えたかったメッセージというのは。

横山)まずこの物語を通して請戸という場所を知って頂く。で、こういう災害があったんだっていうのを改めて知って頂いて、自分にもし災害が降りかかってしまったら、“ちゃんと逃げなきゃ”って思ってもらえたらいいなっていうのが一番です。

諸橋)たしかに。そんな中でも神社が再建されて、安波祭と田植踊もこうして続くわけですけども、この場所やこうした伝統行事も、地域の再興につながる役割があるのでは?

横山)そうですね。やっぱりこういう地元の祭りがあると祭りの日には人がたくさん集まってきますし、まだまだ帰還、帰ってくる方が少ない中で、このお祭りの日には戻ってみようかな、足を運んでみようかなって思ってもらえることも多いと思うので、やっぱりお祭りだったり、伝統芸能っていうのは人をつなぐ一つの大きなきっかけになるんじゃないかなと思います。

諸橋)浪江町を含む相双地区の未来について、どのような願いや希望を持っていらっしゃいますか?

横山)ちょっとずつ人も増えてるしいろんな建物も建って賑わってはきているので、伝承館周辺含め、私の住んでたこの辺り含め、震災前と同じくらい町が賑わってくれたらいいなって思っています。


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諸橋沙夏さんの=LOVE、16thシングル「呪って呪って」をリリース。アリーナツアー2024「Tell me what's more than "LOVE"」もスタートしています。詳しくはオフィシャルサイトをチェックしてください。

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