半径3mの「世界観」ライナーノーツ
魔法はすぐに解けてしまうけれど、何度でもかけ直せる。

眠れない夜や何となく寝たくない夜、CDプレイヤーの電源を入れ、CDをセットする。真っ暗な部屋に響くその音を聴いていると、心が洗われて軽くなっていく。そんな時間は、私にとって何よりも大切な宝物だ。
怖いほどの静寂の中で聴く4人の演奏は、いつもより直接的に胸に刺さる。1時間弱の魔法は長いようで短いようで、何度も自分を見失いそうになる。だんだん自分が分からなくなって、自分の存在がなくなっていって、ふと我に返る。そんなことを繰り返すうち、「自分は生きている」ということを強く実感する。
このままずっと夜が明けないで欲しい。何かが始まる朝に希望を見出だせない私は、この魔法によって夜が少しだけ長くなったような錯覚に陥る。
どうあがいたって夜は明けてしまうけれど、魔法は解けてしまうけれど、こんな夜には魔法が恋しくなる。とてつもない虚無感に襲われたときに助けてくれる、もしくはその感情に浸らせてくれる魔法が。誰にも理解されない気持ちにそっと寄り添ってくれる魔法が。やり場のない怒りを代弁してくれる魔法が。
「祐介」から「世界観」になって変わったこと、それは一緒に戦う仲間ができたこと。そして、変わらないことは、どれだけ仲間がいてもやはり孤独だということ。直感的にそう思った。
周りにたくさんの人がいるのに孤独そうな人、私はそんな人に惹かれる。私も近くに友達がいるのに強い孤独を感じることがよくある。そんなとき、勝手に自分を重ね合わせて安心している。意味のない気休めでしかないかもしれないけれど、救われる気がする。
「世界観」は初めて聴いたときからずっと、今も、そして何十年経っても私に魔法をかけ続ける。魔法はすぐに解けてしまうけれど、何度でもかけ直せる。そんなすごいパワーを持ったアルバムに出会えたことは、一生忘れない。

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