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THE ONE 音楽界の偉人を毎週1人ピックアップ。アーティストの持つ世界をみつめます

2010年12月26日(日)
Beyonce
「Be With You 」
Beyonce
Be With You  / Beyonce
ディスティニーズ・チャイルドからソロとなり、現在では、シンガーの他にも、プロデューサー、デザイナー、そして女優とさまざまな顔を併せ持つビヨンセ。人気ラッパー、JAY-Zと結婚し、順風満帆に見える彼女ですが・・・。そこには、スーパースターが故の苦悩があるようです。
『もう、サーシャ・フィアースは必要ないわ。』今年になって、そう語ったビヨンセ。“サーシャ・フィアース”とは、彼女が、自分の別人格につけた名前です。仕事をする時、ステージにあがる時、彼女は、このサーシャ・フィアースというキャラクターとなり、パフォーマンスを繰り返して来たといいます。初めてステージにたった時からずっと。しかし、そんなにも大切な“サーシャ・フィアース”が『もう必要ない』・・・。いったい、彼女に何が起こったのでしょうか・・・?
ディスティニーズ・チャイルドとして16歳でデビューし、現在も第一線で活躍し続けるディーバ、ビヨンセ。今年の2月に行われたグラミー賞では、最優秀楽曲賞を含む6部門を獲得し、これは、女性アーティストとしては、史上、最多新記録。名実ともに、史上最強の歌姫です。そんなビヨンセのことを、ディスティニーズ・チャイルド時代のメンバーは、 “ライオン”に例えていたと言います。身近にいる人が、“百獣の王”に例えるぐらいですから、私たちには、もっとパワフルな女性に映っていたことは言うまでもありません。彼女の書く歌詞が、タフでカッコイイ女性の生き様を表現したものが多かったことも、彼女のイメージを固めていました。でも、そんなイメージに、もっとも違和感を抱いていたのは、ビヨンセ自身でした。『私はリード・ヴォーカルだから、みんな私が、わがままなディーバだと思うんでしょう。私は長い間、大人並みの責任を背負って、早く大人にならなくちゃいけなかったけど、テーマパークが好きで、チーズ・バーガーが好きな、普通の女の子なのよ。』そう、実際の彼女は、敬虔なクリスチャンで、夜遊びでハメをはずすこともありません。激しいパフォーマンスの後も、移動のバスに戻ると聖書を読む、普通というよりも、むしろ、真面目な優等生タイプ。
『困難な状況にある時やステージに立つとき、無意識にサーシャに変身するの。サーシャは私の別人格で、素の自分を守るために、私が作りだしたキャラクターなの。』こんな風に語るビヨンセ。別人格が必要なほど、本来のビヨンセはシャイで臆病。マスメディアの中で巨大化する自分の虚像に対して、だからこそ、彼女は“サーシャ”という別人格が必要だったのでしょう。
「My First Time」
Beyonce
My First Time / Beyonce
別人格であるサーシャを全面に出すことで、本来の自分を守っていたビヨンセ。しかし、ある映画の撮影に参加したことで、彼女の中で、変化が起きます。それは、「キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語」。ビヨンセはこの映画の中で、エタ・ジェイムズを演じ、こう語っています。『エタから学んだのは、何事をも怖れない心。彼女はどんな時も、エタ・ジェイムズであり続けた。彼女は黒人女性として、初めてラジオからその歌声が流れた人で、彼女が人種の壁を超えていなかったら、今の私は存在していなかったでしょう。』そしてビヨンセは、こうも語っています。『エタを演じたことで、自分にとって居心地のいい場所を飛び出す精神力と、自信がついたと思うわ。』
“自分にとって居心地のいい場所を飛び出す”
ビヨンセのその言葉は、映画の撮影と並行して行われていたアルバム制作の中で、実行に移されました。2008年にリリースした2枚組のアルバム。1枚目には「アイ・アム・・・」、2枚目には「サーシャ・フィアース」と名付け、「アイ・アム・・・」では、本来の自分である、シャイで臆病なビヨンセを、「サーシャ・フィアース」では、パワフルで豪快なビヨンセの別人格を、それぞれ、はっきりと区別して表現してみせたのです。これまでは、あえて表に出さなかった本来の自分を、堂々と表現する・・・。このことは、ビヨンセにとってリスクを伴う挑戦でした。それでも彼女は、あえてそのリスクを買って出たのです。
結果は・・・グラミー賞で、女性アーティスト史上、最多の6部門を獲得。本来のビヨンセを投影したアルバム「アイ・アム・・・」に収録された「ヘイロー」は、最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンスに輝き、来年のグラミー賞にも、2年連続でノミネートされています。サーシャの影のようになっていたビヨンセ自身が、見事、大空へ羽ばたいた瞬間でした。
「Halo 」
Beyonce
Halo  / Beyonce
ビヨンセとサーシャ、二つの人格を世界に認めさせたビヨンセは、およそ1年に渡るワールドツアーを行い、32カ国、78都市で、110万人を動員しました。このツアーのベスト・パフォーマンスは、CDとDVDに収録され、「アイ・アム・ワールドツアー」として、先日リリースされたばかりです。そのツアーが終りに近付いた頃、彼女はとても興味深い発言をして、話題を集めました。
『もうサーシャ・フィアースは必要ないわ。成長した私は、ふたつの人格を融合することができるの。私という人間を、みんなに見てほしい!』
アルバムと、ワールドツアーの成功で、自信をつけたビヨンセ。もう、別人格で、本来の自分を守る必要がなくなったのでしょう。次に出会えるのは、きっと、また違うビヨンセのはず。今度は、どんなアプローチで私たちを驚かせてくれるのでしょうか。今夜は、ビヨンセをピックアップしました。

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