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2011年1月16日(日)
佐野元春
「約束の橋」
佐野元春
現在、「30周年アニバーサリー・ツアー」真っ最中の佐野元春さん。そのツアーの最終日は、佐野さんの55回目の誕生日です。日本の音楽シーンを、自分の力で塗り替えたいと考えていた、佐野さんの30年。そこに存在する決してブレることのない“ある思い”とは、いったいどんなものなのでしょうか?
『僕は、言葉を音楽にすることに、一番興味がある』自身がそう語るように、佐野さんの活動を語る時、「言葉」を抜きにすることはできません。1980年、シングル「アンジェリーナ」でデビューを飾った佐野さん。今でこそ「アンジェリーナ」は代表作といえますが、当時はさほどヒットせず、一般的には静かなスタートでした。その理由は、なぜかと言うと・・・、答えは簡単。新しすぎたから・・・。フルスロットルで歌いあげる歌唱法、スピード感のあるビート、特に、その言語感覚は、当時の日本の音楽界に衝撃を与えました。「シャンデリア」「ネオンライト」「サーキットシティ」「プロムナード」・・・。こうした言葉を使いながら都会の情景を切り取り、若者のライフスタイルを表現することは、それまでの日本のロック・ミュージックにはない、まったく革新的なものでした。
佐野さんの2ndシングル「ガラスのジェネレーション」は、サリンジャーの名作「ライ麦畑でつかまえて」の主人公を彷彿とさせる歌詞。「つまらない大人にはなりたくない」という詩のような一節は、ロックンロールが持つ普遍的なテーマである「成長への反逆」を、軽快なリズムとメロディで、限りなくタイトに表現しています。『あるメロディが思い浮かぶと、そこには、もうこれしかない、という言葉があるような気がする。それを紡ぎ出すのがソングライターだと思う。』と語る佐野さん。「つまらない大人にはなりたくない」という一節はまさに、“もうこれしかない!”と、膝を打ちたくなるような言葉だったのではないでしょうか?
「SOMEDAY」
佐野元春
佐野さんがソングライティングをはじめたのは、16歳の頃。お手本は、主に、言葉を持った欧米のソングライターでした。ボブ・ディランから、ビートジェネレーションという文化を知り、詩を朗読する、ポエトリー・リーディングにも、目覚めていきます。もともと、佐野さんが中学生の頃、生まれてはじめて書いた曲は、ヘルマンヘッセの「赤いブナの木」という詩にメロディをつけたもの。佐野さんの原点はやはり、言葉を音楽にして伝えることでした。しかし、佐野さんの、こうした斬新さは観客を熱狂させることはありませんでした。デビューの年、ある野外コンサートに出演した佐野さんは、1時間ほど演奏し、自分なりにキメたつもりが、拍手をもらうことができなかったそうです。観客を沸かすことのできない現実。それ以降、佐野さんは、伝えたい言葉が届く「音楽」を探し、格闘していくことになります。
1983年、3枚目のアルバム「サムデイ」で、ようやくブレイクした佐野さん。リードシングルとしてリリースしたこの「サムデイ」は、80年代を象徴する1曲ですが、実はこの曲も、トップ10入りすることは、ありませんでした。80年代前半の日本の音楽シーンと言えば、松田聖子さんや中森明菜さんなど、アイドル全盛期。ロック・ミュージックは、その流れから少しハズれたところにありました。デビュー前から、日本の音楽シーンを自分の力で塗り替えたいと思っていた佐野さんは、心機一転。新しいものを求め、ニューヨークへ渡ります。そしておよそ1年、佐野さんは衝撃的な提案を試みるのです。それは「ヒップホップ」。今でこそ、ヒップホップは日本の音楽シーンに受け入れられ、多くのアーティストが、リズムに言葉をのせてパフォーマンスしていますが、佐野さんが、ヒップホップを取り入れたのは、1984年。日本のリスナーが、言葉遊びのようなラップに、戸惑いを見せたのは言うまでもありません。ニューヨークから帰国後、第一弾としてリリースしたアルバム「Visitors」は、評価が真っ二つに割れてしまったといいます。佐野さんはその後も、スカやレゲエなど、当時の日本人にはあまり馴染みのないリズムに言葉をのせ、挑戦的な曲をリリースしていきます。こうした「新しい音楽」への試みは、すべて伝えたい「言葉」を、よりわかりやすくリスナーに届けるため・・・と言っても言い過ぎではないでしょう。『ポップソングは、時代の表現であり、時代を超えたポエトリーだ。』そう語る佐野さんは、音楽の中の言葉は、政治的な要素や詩的要素が入る知的なものだと考え、ポエトリー・リーディングや、スポークン・ワーズと言われる手法で、「言葉」を表現することにも挑戦しています。 これは「朗読と音楽の融合」と言えるもので、アルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」に収録された「ふたりの理由」は、まさにこのポエトリー・リーディングのスタイルをとったもの。剥きだしの言葉と、その後ろに流れる音楽を聴いていると、平面的な文字が、立体的に立ち上がり、『ポップソングはポエトリーだ』という佐野さんの言葉が、鋭く響いてきます。
「ヤングブラッズ 」
佐野元春
「多くの人に愛されたものと言うより、ソングライターの自分にとって今、意味深く思えるもの」を基準に選んだという『月と専制君主』。現在発売中の「別冊カドカワ」では、全曲を佐野さんご自身が解説されているそうなので、興味のある方は、ご覧になってはいかがでしょうか?佐野さんにとっての言葉と音楽を巡る30年の歴史が、そこで語られております。
佐野さんが切り取った80年代、90年代、そして2000年代。その音楽の中にある言葉は、現代を生きる私たちに、何を伝えてくれるのでしょうか?
今夜は、佐野元春さんをピックアップしました。
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