Every Sunday 12:30-12:55 JFN 38stations
2011年4月24日(日)
宮沢和史
「星のラブレター」
THE BOOM
1989年、THE BOOMのボーカリストとしてデビューして以来、沖縄音楽やブラジル音楽など、多彩なジャンルのエッセンスを吸収し、この春には石川さゆりさんと共に、“日本のこころ”を歌う、演歌にも挑戦。『僕の曲は、旅から生まれることが多い』とおっしゃる宮沢さんですが、いったいこれまでに、どんな旅をして、音楽を紡いできたのでしょうか?宮沢さんの名前が、多くの人に知られるようになったのは、1993年。「島唄」がヒットした時でした。ロックバンドのボーカリストが、三線を持って歌う姿は斬新で印象的。2002年には、アルゼンチンでカバーされ、チリやメキシコ、ドイツ、ポルトガル、中国など、10カ国以上で歌い継がれています。
原宿のホコ天でスカウトされ、レコード会社のオーディションを受けてデビューしたTHE BOOM。デビュー当時は、U2やポリスなど、洋楽に影響された曲作りをしていました。しかし、セカンドアルバムをリリースした後、宮沢さんは「このまま、イギリスやアメリカのロックをマネしているだけでいいのだろうか?」と疑問を抱くようになります。この時から、宮沢さんの「音の旅」がはじまります。ほどなくして、沖縄音楽に興味を持った宮沢さんが訪ねたのは「ひめゆり平和記念資料館」。ここではじめて、沖縄の人々が巻き込まれ、犠牲となった戦争の悲劇を知り、
宮沢さんは大きな衝撃を受けたのでした。それは、当時の軍国教育への怒りであり、この悲劇を知らなかった自分への怒りでもありました。この時、抱いた感情と目にした沖縄の風景。それが後に、平和への思いが込められた「島唄」となって、宮沢さんから生み出されたのです。アルバムに収められたこの歌は、のちに沖縄限定でシングルカットされ、ジワジワと火が付いていきました。ところがこの時、THE BOOMは活動休止中。山梨出身で、沖縄とつながりのないバンドが沖縄の歌を歌って、受け入れられるとは、誰も考えていなかったのです。
「風になりたい」
THE BOOM
宮沢さんご自身もこの時は、すでに新しい旅をはじめていました。
それは、シンガポール、香港、そして日本で公演されるミュージカルへの出演。言葉や文化が違う人々と、数ヶ月におよぶ共同生活。それは、まるで旅一座のようで、宮沢さんは次第に「この人たちを喜ばせる音楽が創りたい」と思うようになっていきました。この経験が、宮沢さんを次なる音の旅へといざないます。それは、灼熱の太陽が降りそそぐサンバの国、ブラジルでした。『地球の裏側に自分の名前を知っている人がいる』これは、はじめてブラジルへ行き、地元のコンサートに参加し、感じたこと。「ミヤザワ!」という声援に驚き、この時から、ブラジルにいる日系人に興味をもつようになったと、著書で語っています。宮沢さんは、ブラジルへの旅を重ね、多くの人と出会い、ブラジルの歴史や文化、そして音楽に触れ、その肌触りを実感していきました。良いところ、修正が必要なところ、そのどちらも知りました。それでも、ブラジルに通い続けるのは、なにより、そこに暮らす人々の魅力に心を奪われたから。中でも印象的だったのが、「中川トミさん」との出会い。トミさんは、日本人がブラジルに移住を開始した明治41年、その最初の船に乗っていた最後の生存者でした。宮沢さんと出会った時は、98歳。当時の話を直接うかがうと、トミさんの口からは「私はよく働きました」という言葉ばかりが、何度も繰り返されたそうです。トミさんの言葉は、劣悪な状況の中、日本からブラジルへ渡った人々の苦労を表す、象徴的な言葉でした。以前から、日本人がブラジルに移住を開始して100年にあたる2008年に何かをしたい…、そう考えていた宮沢さんは、トミさんとの出会いに背中を押され、日本人とブラジル人が交流できる場を作ることを決意します。ブラジルには150万人の日系人が、また日本には、32万人の日系ブラジル人が住んでいます。宮沢さんは、それぞれの交流が少なすぎることを、気にかけていたのです。『僕は音楽家だから、音楽で交流できる場を増やしていきたい』そのため、宮沢さんは、日本人とブラジル人の、友好と平和を願う歌「足跡のない道」を作り発表。その曲を携えて、2008年には、サンパウロやリオデジャネイロなど、ブラジルの4都市でツアーを行い、日本でも2万人規模のコンサートを実現させました。ブラジルでは、人を集めるためにプロモーション活動を積極的に行い、日本でも、入場を無料にするため、精力的に働きかけました。その行動力の源は、日本人とブラジル人の友好のため、そして、ブラジルの魅力をもっと知ってもらいたいという、ブラジルへの愛でした。残念なことに、トミさんは、宮沢さんと出会った翌年に亡くなり、この100周年を一緒に祝うことが出来ませんでしたが、トミさんの思いは宮沢さんに伝わり、宮沢さんの音楽を通して、さらに多くの人に伝わっていった…そう思わずにはいられません。
「足跡のない道」
GANGA ZUMBA
世界を旅し、沖縄やブラジルの音楽を、曲作りに生かしてきた宮沢さん。しかし、宮沢さんは、「まだ、登り応えのある山を越えた感じがしない。それなら、これから探していくしかない。」と、新たな音楽の旅をしています。
そんな宮沢さんが、最近気づいたこと、それは「自分は日本人だ」ということ。かつおや昆布の出汁の味に興味を覚え、音楽でも、出汁のような音を追求したくなったそうです。そんなTHE BOOMのニューアルバム「よっちゃばれ」は、日本がテーマ。さまざまな国を旅し、多くの人と出会いを重ねてきて感じた日本は、果たして、どんな音楽に昇華されているのでしょうか?
今夜は、THE BOOMの宮沢和史さんをピックアップしました。
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