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2010年3月7日(日)
越路吹雪
「ラスト・ダンスは私に」
越路吹雪
みなさんは、越路吹雪さんというと、どんな姿を思い出すでしょうか?
日本を代表するシャンソン歌手であり、ミュージカル女優であり、そして、映画の世界でも活躍されていました。そんな越路さんは、1924年、東京生まれ。13歳の時に、宝塚音楽歌劇学校に入学し、15歳で舞台デビュー。初めてのセリフは、後ろ向きで発した「誰だ」。そして、初めてマイクを持って歌ったのは『浪花節』だったそうです。背が高かった越路さんは、人気の男役を得ていたものの、彼女と同期の宝塚には、乙羽信子さん、月丘夢路さんをはじめ、すぐれた才能と美貌を持った人が多く、さらには、一級下にも淡島千景さん、久慈あさみさんなど、優秀な後輩が沢山いました。男役として同期や後輩に負けぬよう、さらに頑張らなければという時期、巷には、戦争の暗い空気が立ち込めていきます。宝塚で行われるレビューも、華やかなものから戦争の色が濃いものへと変わり、勇ましいタイトルのものが上演されるようになりました。
そんな状況の中で、越路さんは時代を逆手にとるように色気のある男役として大人のファンを獲得し、戦争が激しさを増す中、慰問のために各地へ巡演に出かけていったそうです。
「サン・トワ・マミー」
越路吹雪
1945年。終戦。宝塚大劇場は再開され、禁じられていたアメリカの歌が舞台にも溢れ始めます。そんな中、時代のトレンドはシャンソンへと流れていきました。彼女の時代がやってきます。越路さんは、物語性のあるシャンソンが大好きで、その基盤を作ったのが、彼女が卒業した宝塚でした。実は、宝塚は日本におけるシャンソンの発祥の地なのです。演目でも「モン・パリ」や「ブギウギ巴里」など、シャンソンを歌う物も多く、宝塚のテーマソングとされている「すみれの花咲く頃」の原曲は「リラの花咲く頃」というシャンソンです。彼女は、舞台でダンスに励みながら自宅では、レコードが擦り切れるまで、シャルル・トレネやダミア、エディット・ピアフを聴きながら、シャンソンの勉強を続けていたそうです。本場のシャンソンを見てみたい。まだまだ海外旅行が大変だった時代、彼女は、シャンソンの勉強をするためにパリに行きたいと熱望するのでした。
どうしてもパリでシャンソンの勉強がしたい。まだ、日本から持ち出せるお金も500ドルに制限されていた時代、「青い山脈」などのヒット作品を作った藤本真澄さんをはじめ、彼女の熱意を組んだ多くの人が力を貸し、彼女は1953年、初めて憧れの地・パリを訪れます。
何もかも、見るものすべてが新鮮なパリ。この時の旅行は3カ月ととても長いものになり、パリをはじめ、カンヌ、モナコなどをめぐり、オペラを見て、バレエを見て、そして、大好きなエディット・ピアフのステージへは、何度も足を運んでいます。
「愛の讃歌」
越路吹雪
ピアフを見た日、越路さんは、ピアフの素晴らしさに、自分自身への悲しみを日記に綴っています。
「夜、ピアフを見る。オーケストラの良さ、彼女の歌う時のジェスチャー、アレンジの素晴らしさに私は悲しむ。ご主人と一緒に芝居し、そして歌っている。羨ましい限りだ。」
二度目にピアフを見た時にはさらに、こうも書いています。
「語ることなし。私は悲しい。夜、一人で泣く。悲しい、淋しい、私には何もない。私は負けた。泣く、初めてパリで」。
自分自身に厳しく、舞台に対して全力で望んでいく越路さんにとって、自分には表現の出来ない世界を持つピアフに対して、相当なジェラシーを燃やしていたようです。しかしその後、何度もピアフを聞くうちに、彼女の気持ちは、徐々に変化していきました。
「自分ひとりで、きりきり舞いしていても、疲れるだけだ。私自身、舞台をエンジョイすること。歌ったり踊ったりして大衆にぶつかってゆくことだ。私を失わないよう、歌い、踊る。そのライトの中のアタシは、私のあたしなのだから。」
シャントゥーズ・レアリスト=『真実を歌う歌手』。
心の中のリアリティ、愛や悲しみを、見事に感覚的に歌いあげていた越路さん。舞台の上では、監督や演出家が望むことに120パーセントの力で応えるほどの舞台人でもありました。舞台の上では、常に捨て身であったと言われています。そのくらいの気持ちで演じられるミュージカルやお芝居は、広い劇場の全ての観客に伝わり、感動を与え続けたのです。まさに、越路さんは、日本のエンターテインメントを作り上げた時代の寵児でありました。
ライトの中で輝き続けた越路吹雪。人生を歌い、人生をかけた彼女の歌声は、今も人々を感動させる力があるのです。
今夜は、越路吹雪さんをピックアップしました。
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