Every Sunday 12:30-12:55 JFN 38stations
2010年4月4日(日)
Bruce Springsteen
「Born to Run」
Bruce Springsteen
アメリカでボスといえば・・・そう、ブルース・スプリングスティーン。オバマ大統領の就任式でも、熱い歌を聞かせておりました。
ブルース・スプリングスティーンは1949年、アメリカ、ニュージャージー州生まれ。今年で61歳。ボブ・ディランを発掘したプロデューサーに「ディランに出会った時以上の衝撃を受けた」と言わせた彼は、1973年にデビュー。当初は、ボブ・ディランと比べられることが多く、第2のボブ・ディランとして、レコード会社も売り出しにかかります。今の私たちが思い描くブルース・スプリングスティーンの姿とは少し違い、平凡な生活に潜んでいるドラマチックなエピソードを、叙事詩のような形で表現し、まるで、ノワール映画を見ているような曲が沢山ありました。映画や小説からインスピレーションを受け、監督や小説家にインタビューし、多い日には、1日に10曲以上を書くというエネルギー。さらに、自らを堕落したカトリック信者と自任する彼は、人間がもつ罪を題材として、人生の意味を探していきます。
しかし、ライブでの評判が上がるにつれ、レコード会社の思惑と違い、自分の中にある欲求をどう表現したらいいのか分からないというスランプに落ちます。そんな中、生まれたのが、「ボーン・トゥ・ラン」でした。疾走感あふれるこの曲は、ブルース・スプリングスティーンが初めてロックの世界へと本格的に踏み込んだ曲。レコード会社はフォーク路線を強要していたにもかかわらず、自分の才能を信じ苦悩の末に作り上げたこの曲は、「ロックン・ロールの未来」とまで言われる作品となり、発売直後にゴールドディスクとなる大ヒットを記録しています。ロマンスと逃亡に憧れを抱く負け犬たちを好意的に描いたこの曲は、社会現象にまで発展し、当時のパンク・ロックと対抗し、ロックの新しい道しるべとなります。
「The River」
Bruce Springsteen
しかしその一方、プライベートでは、暗黒の時代へと突入します。これまで、彼の才能を応援してくれていたマネージャーとの間で、曲に関する権利をめぐって争いが起きます。なんと、デビューから3枚目までのアルバムで彼が書いた曲の権利は、「ボーン・トゥー・ラン」をはじめ、マネージャーの会社が持つことになっていたのです。自分の書いた曲の権利が無い。ここから、長い裁判が始まります。曲の権利を争った裁判は、1977年の春、無事に和解が成立。次なるステージに向けてレコーディングを再開したブルース・スプリングスティーン。30歳を目の前にして、彼の歌に登場する主人公に変化が表れます。はみ出し者だった彼らが大人へと成長し、社会の一員となろうともがき苦しむ姿を描き始めます。ボスがテーマに選んだのは、格差に苦しむ労働者の人々だったのです。
「俺は、ヒットを飛ばした自分の運の強さにさえ、どこか反発していた。そんなとき、ふと思ったんだ。昔、俺がいた世界にいる奴らに対して、俺はアーティストとして義務を果たさなければならないんじゃないかって。」
時代は、べトナム戦争で疲弊し、失業に原発事故など、生命の危機を感じながら、70年代の幕を下ろそうとしていました。そんな状況の中で、失業した労働者のつらい生活をつづった「ザ・リバー」が完成。その他にも、ブルースは時代が生んだ犯罪者を題材にした「ユーズド・カー」、「ジョニー99」、ベトナム戦争からの帰還兵が故郷での疎外感を唄う「ボーン・イン・ザ・U.S.A」など社会的弱者の視点でヒット曲を生み出していきます。
「The Rising」
Bruce Springsteen
そんな中、2001年にアメリカで同時多発テロが起こります。彼は、チャリティー番組に出演するために、あの日に亡くなった消防士の妻にインタビューを試みます。そして、その悲しみからの再生を願って書かれたのが「ライジング」という曲。
背中に60ポンドの荷物を背負い、肩には800mにも及ぶホースを担いで火の中を登っていく。消防士と言う誇りを背負い、任務執行に燃える。そして、すさまじい現場を前に、いとしい妻や子供たちに想いを馳せながら救護活動を続け、そして帰らぬ人となった彼らには、きっと神の姿が見えていたはずだ。残された人々を励ますように、ブルースは、この曲の中で愛と強さと神への信仰を唄っています。「前には何も見えない、背後には何があるかわからない。」
火災が起こったツインタワーの闇の中を、帰ることができないと思いながらも、ひたすら登り続ける消防士の姿。
「今の世界を変えたい。愛と勇気と再生を持って・・・」そんなアメリカの心に訴えかけるこの曲は、新しいアメリカのシンボルとなっています。
60歳になった今でも、ライブは、神聖な場所だといって、精力的に活動を続けるブルース・スプリングスティーン。「BORN TO RUN」35年たった今でも、その走る勢いは増すばかりな、正義感あふれる世界のボス。
今夜は、ブルース・スプリングスティーンをピックアップしました。
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