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THE ONE 音楽界の偉人を毎週1人ピックアップ。アーティストの持つ世界をみつめます

2010年5月23日(日)
Cocco
「Raining」
Cocco
Raining / Cocco
幼いころから踊る事が好きだったというCoccoさん。彼女は1977年、沖縄に生まれます。バレリーナをめざし、ダンスに励む日々。しかし、バレエの審査を受けるための旅費を稼ぐという目的で受けたボーカルオーディションで、彼女の歌手としての才能が見いだされます。
そして彼女が20歳の年にメジャーデビュー。爆音を奏でるギターにのせた痛い程の叫びは、独特の世界を作り出し、デビュー当時から音楽ファンの高い評価を受け、その後、広い世代にファンを広げていきます。
それから4年、彼女は順調にリリースを重ねてきましたが、2001年、4枚目のアルバム「サングローズ」を発表したあと、彼女は突然、音楽活動を休止してしまいます。彼女のもとへは、彼女の歌に救いを求めるファンから想いの詰まった多くの手紙が届きます。そんな立場である彼女が、突然の活動中止。巷では様々な噂が流れますが・・・。真相は、彼女の口から、あるテレビ番組のインタビューで語られています。
「歌手になりたいと思ってなったんじゃないんだけど、とても歌が好きだという事に気が付いたの。
とても好きな物を商売にしたくなかったから、このままではいけない、一度全部捨ててみようと思って。」
「Heaven's hell」
Cocco
Heaven's hell / Cocco
彼女は、自分の歌を守るため、故郷の沖縄に戻ります。そこで待っていたのは、彼女の知らない沖縄でした。自分の記憶の中にある美しい沖縄。しかし、現実の沖縄は白い浜辺にゴミが散乱し、美しい海を守っているはずのサンゴは、次々と白く死んでいく。彼女は、ゴミを捨てて行く人、サンゴを食い荒らす鬼ヒトデを呪いながら、沖縄の変わっていく姿を見つめる毎日を過ごしていきます。そんな日々のなかで、彼女は、誰かを責めるのではなく、まずは、自分の足元のゴミを拾ってから文句を言おうと、ある日、袋を片手に、一人、海岸のごみ拾いを始めます。続ける事、2年。
減らないゴミと格闘しながら、彼女は心でこう覚悟を決めます。
自分に出来る事、毎日ゴミを拾いながら歌う歌で、人の気持ちに訴えられないだろうか?
子供たちと一緒にゴミを拾い、ゴミ拾いをしながら作った歌を一緒に歌い、たった一曲のコンサートを開催する・・・。名付けて「ゴミゼロ大作戦」。
学校に呼びかけ、夏休みをつぶして行われた「ごみゼロ大作戦」。最初はぼんやりしていた子ども達も、彼女の気持ちと交わり、彼女のメッセージを全身で受け止めた結果、2003年の夏、終戦記念日に行われた「ごみゼロ大作戦 Vol.0」では、彼女と沖縄の子供たちとの美しい歌声が、空高く響いたのです。
「ジュゴンの見える丘」
Cocco
ジュゴンの見える丘 / Cocco
2001年の活動中止から、およそ5年の月日を経て、2006年、彼女はメジャーへ復帰します。
大好きな沖縄から、地球環境を守る活動に参加し、さらには、大好きなおばあたちの笑顔のため、自らのステージの上で沖縄民謡も歌い始めます。自分の中に沖縄らしいものがないと思っていた彼女は、ボイストレーニングの先生から、本土にはない音階を持っていることを気付かされます。自分の中に息づく沖縄。それをやさしく守るかのように、作品の中に、沖縄ならではのサウンドをとり入れるようになっていきました。そんな2007年の夏。沖縄に現れた二頭のジュゴン。アメリカ軍の移設予定地に現れたジュゴンを見て、彼女はシングル「ジュゴンの見える丘」をリリースします。そこに届いた一枚の手紙。手紙の送り主は、核燃料の再生処理施設のある青森県六ケ所村に暮らす女の子でした。そこには、こう書かれていました。「日本の日常から出る危険と隣り合わせの自分の暮らす、この街が好きです」と。在日アメリカ軍基地の7割を抱える沖縄。自分たちと同じように、日常を守るために、危険と隣り合わせになっている人達が他にもいた。彼女は、ツアーの合間を縫って六ヶ所村を訪れ、この現実を自らの目で感じ、そして、青森のステージに立ちます。「今は何もできないけど、ごめん。でも、教えてくれてありがとう。」そこには、心の内にある感情を、涙と共に素直に伝える姿がありました。
彼女の強く儚い姿を収めた映画「大丈夫であるように〜Coccoの終わらない旅」には、彼女の様々な思いが映し出されています。尊敬している祖父の事。息子へ残したい地球の美しさの事。そして何より、生きている事が大切である事。これまで垣間見せていたカリスマ性は影を潜め、そこには、マリアのような彼女の姿が写りこんでいました。Coccoというと、精神的に儚く感受性の高い人々からの支持がとても厚く、本人の目から放たれる眼力に同じものを感じているのからなのかと思いましたが、それは誤解だと思いました。彼女も映画「大丈夫であるように」の中で言っていますが、彼女へ届く手紙の多くは「助けてください」と言うものが多い中、青森の少女から届いた手紙には、そんな言葉はなく、自分の育った街が好きだと書いてある事が、彼女の心にとどまったのです。自分だけが痛みを持っていると思っていたら、日本には他にもたくさん同じ痛みを抱えている人がいるんだと知れてよかったと。彼女は、ごみゼロ大作戦の中でも語っていますが、知る事が大切だと。正しく知り、考え、行動する。これが子どもたちにも必要だと。とても正しく、子どもたちに伝えていきたいと、歌を歌う彼女の姿は美しかったです。
来月6月9日、彼女は、およそ2年7か月ぶりとなるニューシングル「ニライカナイ」をリリースします。琉球の祭り太鼓のリズムを取り入れた、スケール感あふれる作品です。
子どもたちに美しい地球を見せてあげたい。言葉では言い表せない気持ちを歌に託し、彼女は今日もどこかで歌い続けるのでした。
今夜は、Coccoさんをピックアップしました。

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