みらい図鑑

VOL.138 「印染」 東京都

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日本が誇る伝統技術、「印染(しるしぞめ)」。

織物に、文字や記号などの「印」を染め付けることを「印染」といいます。

例えば、祭りの“はんてん”に染める、屋号や紋、名前、
あるいは、店の暖簾や大漁旗に染める商いの印、
戦国時代の、敵・味方を見分ける“のぼり”など、
「自分は何者であるか」を他者に示すもの、これが印染の本質です。



かつては、1万軒以上もあった印染を手掛ける会社ですが、現在は300軒ほど。
減少の一途をたどるなか、自社工場で一貫生産している会社が、東京・浅草にあります。
それが、「染の安坊」。





「染の安坊」、代表の水野弘敏さんに伺いました。

「印染業界自体は衰退していっていますが、暖簾にしても、“はんてん”にしても、お祭りにしても、
絶対に失ってはいけない日本の文化だと思うんですね。」

印染の世界は、伝統的な染色技法はもちろん、最新技術を取り入れたデジタル加工まで、
広がりを見せているそうですが、やはり、二つとないものを染め上げるのは職人の技。

色の見分けは4万色を超えるそうです。

「色の見分けっていうのが、通常、5000色から8000色を見分けられると言われているんですが、
毎日、その作業をしていると、4万色以上、見分けられるようになると言われています。」



そして、「染め」の文化を次世代へ伝えるために、去年、浅草にオープンした体験工房では、
オリジナルデザインの手ぬぐいや“はんてん”、屋号の入った暖簾や幕などを作ることができます。




「日本のアイデンティティ、文化、こだわりというものを発信できる基地を作らせていただきました。」

そんな体験工房に訪れるのは、日本人だけでなく、外国人の方も多いといいます。
印染の魅力に触れながら、自分のアイデンティティを探る、、、
皆さんも、是非、体験してみませんか?


VOL.137 「しな織」 山形県

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山形県の鶴岡市にある、人口わずか120人の「関川」という地区。
四方を山々に囲まれ、昔は雪が降ると孤立したという限界集落です。



「このままでは、いつか、故郷が消えてしまうかもしれない。」
そんな想いから、地域の伝統産業を活性化させることで、
関川の地を守っていこうと取り組んでいる方がいます。
五十嵐丈さん、25歳。

その伝統産業とは、「しな織」。
「しな」という木の皮から作る「布」です。

静岡の「葛布」、沖縄の「芭蕉布」とならび、
日本三大古代布の一つで、日本最古の織物と言われている「しな織」。

もともとは、漁の網やお米の袋などに利用され、
地域の生活には欠かせない必需品として重宝されていました。



「しな織は、まず、糸を作るときに、木を切り倒すことから始まります。
だからこそ、自然との関わりなしには製品をつくることができないという点でも、
自然と人間、そして、社会を繋いでくれる製品にもなるのかなとも思います。」

「しな」という植物が反物に生まれ変わるまでに、22もの工程を要するといいます。
約1年を要する工程の全てが手仕事です。

ざっくりとした手触りと、落ち着きのある風合い。
財布、名刺入れ、バッグなど、使えば使うほど、
なじんでくるのが「しな織り」の製品の特徴です。



関川という集落が誇る、この伝統を多くの人に知って欲しい。
五十嵐さんは、そう話します。

「やはり、自分が生まれ育った場所が、このまま無くなるというのは見ていられないんですね。
私なりに、今までお世話になった地域の方々に恩返しをすること。
それが、大げさにいうと、私の生きる意味なのかなと思って活動をしています。
だからこそ、関川という地域を、みなさまに知っていただけたら嬉しいなと思っています。」



五十嵐さん、現在は「しな」の花からつくる、化粧水も手がけています。
25歳の挑戦。
若い力が再生して発信する関川の産業。将来の発展が楽しみですね。


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