みらい図鑑

Vol.93 「みかん魚」 愛媛県

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国内で随一の柑橘産地、愛媛県。
そんな愛媛県で生まれたのが、「みかん魚」です。




「みかんブリ」、「みかん鯛」、「みかんサーモン」。
この魚たちは意外なきっかけから生まれました。

「愛媛と言えば、みかん大国なんですが、
いままでは、みかんジュースを絞った皮を廃棄処分していたんですね。
ただし、そこにはビタミンCが豊富に含まれています。
それを魚が食べるか実験してみたら、食べた。
そんなことから生まれたのが、この“みかん魚”なんですね。」

教えてくれたのは、株式会社「宇和島プロジェクト」、
代表の木和田権一(きわだ・けんいち)さん。



ジュースを搾ったあとのみかんの皮にも、30%ほどの果汁が残っているので、
皮と果汁を一度クラッシュして、魚のエサに配合するんだそうです。

このエサを食べた魚は、変色防止だけでなく、養殖特有の臭みが消えて、
柑橘のほのかな香りがするといいます。




ジュースにするために絞った、みかんの皮。
いままで捨てるだけだったものが、いまでは、大切な魚のエサになっています。
まさに、山の幸と海の幸のコラボレーション。

徐々に徐々に受け入れられるようになったという「みかん魚」は、
特に子どもたちに人気だそうです。

 「実は、“子どもたちが今まで魚を食べられなかったんですが、
この、みかんブリなどを食べたところ、ほかの魚も食べられるようになった“という声を
頂いて、私たちも本当に嬉しく思っています。
みんなが魚をもっと食べて、日本の水産王国がまた復活するのではないかと思っています。」



地域の資源を組み合わせるユニークなアイデアで、新しい価値を生み出した日本人の知恵は、
海外からも注目されています。
「みかん魚」、世界中の人に是非、食べてもらいたいですね。

Vol.92 「鹿革のモノヅクリ」 群馬県

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今回、ご紹介するのは、尾瀬の麓、群馬県の片品村に暮らす、
村でたったひとりの女性猟師の話題です。

「尾瀬鹿工房かたしな」、代表の本間優美(ほんま・ゆうみ)さん。




本間さんが行う狩猟はチームプレイ。
仲間と共に地元の森へ入って、猟銃で鹿を仕留め、
その鹿の革を使って、様々な商品を作っています。




この20年ほどのあいだに、日本で大きな問題になっているのが、鹿による食害。
高齢化によるハンターの減少や地球温暖化など、さまざまな理由によって増え続ける鹿。
その数、20年前のなんと9倍!

本間さんに伺いました。

「田舎に住んでいる人にとっては、わりと、鳥獣被害って日常のものなんですが、
都会の人にはぜんぜん関係のないものなんですよね。
ただし、この片品は観光地として、
都会の人が訪れてくれて、自然を楽しむ場所なんですよね。
そこで、こういう、地元の革を活用した商品をいろんな人に手にとってもらうことで、
都会と田舎をつなぐような活動にしていければなと思っているんです。」



仕留めた鹿は、本間さん自身がミシンを使って皮を製品化。
鹿の皮はいろんなものに加工できるそうです。

「革製品で作っているようなものは、だいたい鹿革で作れます。
たとえばお財布だったり、ライダーが着ているジャケットなんかも鹿革だと、
なじみやすくて着やすいんですね。
いま牛革を使っているけど、それを鹿革に置き換えられるものはたくさんあると思います。」



今後は、皮を製品化するだけでなく、鹿肉もジビエ料理に活用したいという本間さん。
駆除される鹿の命を無駄にしない取り組みに全力を注ぎます。

村で唯一の女性猟師、本間さんは現在35歳。
“いのちと向き合い、いのちをいただく”挑戦はこれからも続きます。

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