みらい図鑑

Vol.41 「熊野筆」 広島県

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日本古来の筆記用具、「筆」。それが今回のタカラモノです。

筆の生産で全国シェアの8割を占めている地域、広島県安芸郡の熊野町。
町民の1割が何かしらの筆の仕事に携わっています。

熊野町に筆づくりの産業が始まったのは江戸時代末期。
明治5年には学校制度ができて、筆が多く使われるようになり生産量も大きく増加しました。

しかしその後、習字教育が廃止になったことで生産が落ち込んだのですが、
昭和30年頃からは、書筆づくりの技術を生かした化粧筆や画筆の生産も始まり、
熊野の筆産業が中国地方で、最初の伝統的工芸品として指定を受けました。



筆の文化を気軽に遊んで学べるミュージアムとして、多くの方で賑わう施設、
「筆の里工房」の河岡明日香さんにお話を伺いました。

「ここ熊野町は、本当になにもない山の上の土地なんですね。
熊野町にあるのは筆づくりの技術だけです。
職人さんの技術と勘が全てで、手作業で1本1本、作られているんです。」

筆の材料となる毛や軸は、全て県外や海外から仕入れているという熊野筆。
つまり、熊野町にあるのは“筆づくりの技術”だけ。
その優れた技術が評価されて、書筆、画筆、化粧筆のいずれも全国生産の80%を占めるほどになったのです。



河岡さんは、是非、筆による年賀状を書いてほしいと話します。

「なんとなくその人の気持ちが伝わって、嬉しさが違うかなと思うんですが、
みなさん手書きの手紙やはがきをもらったらいかがですかね。
やっぱり嬉しいですよね。
大変なんですけど、始めてもらったら嬉しいなと思います。」

筆づくりが根付いて約180年。
今もなお、筆づくりが地域を支える産業となっています。

「いつかは、筆で手書きの年賀状を書きたい」。
そう思った方は、是非、今年、熊野筆を握ってみては如何でしょうか。

Vol.40 「豆腐」 佐賀県

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12月に入り、これから旬を迎える食べ物のひとつが「豆腐」。
今でこそ、冷や奴など、夏にもよく食べられていますが、
技術のなかった昔は”冬のもの”として食べられていたんです。

佐賀県・唐津に店を構えるのは、創業200年を越える豆腐店、「川島豆腐店」。



川島豆腐店のメインは、“水にさらさない豆腐を作りたい”という思いから誕生した「ざる豆腐」。
かたまりかけた豆腐を、竹ざるに汲み上げるという昔ながらの製法で作ります。
豆腐は水にさらすと淡白になり、良い大豆を使っても旨味が抜けてしまうのですが、
「ざる豆腐」は水にさらしていないので、大豆の旨味がしっかりと残っているんだそうです。



さらに、代表の川島義政(かわしま・よしまさ)さんは、おいしい豆腐をつくるために、
自ら豆腐の原料である大豆づくりにも挑んでいます。

「やっぱり作ってみないと農家の方と話ができないんですよね。
畑によっても違うし、作り手によっても違う。
話をしてみると、手間暇かけた大豆だったり、土地がいいとか悪いとか、
自分でつくるとわかりやすいもんですから、勉強になりますね。」

農家の方と話して豆腐を作ると、お客さんにも説明ができる。
消費者と生産者の真ん中にいるから責任は重い。
けれど、これが“豆腐屋の使命”だと川島さんは語ります。

「結局、豆腐のおいしさって大豆に尽きるわけですよ。
農家の方とディスカッションしながら美味しい大豆を作ってもらって、
その美味しい大豆をうちで美味しい豆腐にするっていうことを、
1000年後も2000年後も続けたいと思っています。」

午前3時に起きて豆腐作り。
過酷な作業であっても自分にとって、豆腐作りは人生であり、生きがい。
こんな思いを抱く川島さんの一番の喜びは、やはり「美味しい」の声なんだそうですよ。

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