みらい図鑑

VOL.137 「しな織」 山形県

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山形県の鶴岡市にある、人口わずか120人の「関川」という地区。
四方を山々に囲まれ、昔は雪が降ると孤立したという限界集落です。



「このままでは、いつか、故郷が消えてしまうかもしれない。」
そんな想いから、地域の伝統産業を活性化させることで、
関川の地を守っていこうと取り組んでいる方がいます。
五十嵐丈さん、25歳。

その伝統産業とは、「しな織」。
「しな」という木の皮から作る「布」です。

静岡の「葛布」、沖縄の「芭蕉布」とならび、
日本三大古代布の一つで、日本最古の織物と言われている「しな織」。

もともとは、漁の網やお米の袋などに利用され、
地域の生活には欠かせない必需品として重宝されていました。



「しな織は、まず、糸を作るときに、木を切り倒すことから始まります。
だからこそ、自然との関わりなしには製品をつくることができないという点でも、
自然と人間、そして、社会を繋いでくれる製品にもなるのかなとも思います。」

「しな」という植物が反物に生まれ変わるまでに、22もの工程を要するといいます。
約1年を要する工程の全てが手仕事です。

ざっくりとした手触りと、落ち着きのある風合い。
財布、名刺入れ、バッグなど、使えば使うほど、
なじんでくるのが「しな織り」の製品の特徴です。



関川という集落が誇る、この伝統を多くの人に知って欲しい。
五十嵐さんは、そう話します。

「やはり、自分が生まれ育った場所が、このまま無くなるというのは見ていられないんですね。
私なりに、今までお世話になった地域の方々に恩返しをすること。
それが、大げさにいうと、私の生きる意味なのかなと思って活動をしています。
だからこそ、関川という地域を、みなさまに知っていただけたら嬉しいなと思っています。」



五十嵐さん、現在は「しな」の花からつくる、化粧水も手がけています。
25歳の挑戦。
若い力が再生して発信する関川の産業。将来の発展が楽しみですね。