VOL.145「つづら」 茨城県
今回のタカラモノは、竹で編んだ、蓋つきの収納箱、「つづら」です。
昔ばなしの「舌切りすずめ」に登場する四角いカゴでおなじみですね。
「つづら」は、江戸時代には生活に欠かせない家財道具で、
着物などを入れて、嫁入り道具としても使われていました。
昭和初期には、全国に250軒ほどあったつづらのお店ですが、
いまでは、数えるほどになっているそうです。
茨城県のつくば市で、「高橋つづら店」を営む、
高橋 諭(たかはし・さとし)さんにお話を伺いました。
「手の感覚で全部やるので、竹も1本1本、硬かったり柔らかかったりと個性があり、
均一の薄さにするというのが大変ですね。」
材料である竹は、全て地元のつくば産にこだわって手作りしているという高橋さん、
1本1本、個性が異なる竹を1ミリ以下の薄さに剥いで、
四ツ目編みで、四角くカゴを編んでいきます。
竹を薄く剥ぐ作業は職人の技。
高橋さんはこの技術を習得するのに、4〜5年かかったんだそうです。
カゴの内側には和紙を1枚、
そして、外側には和紙を2重にしたものを、防虫効果のある柿渋をまぜた“フノリ”で貼り、
最後に、カシューナッツを原料とする樹脂塗料を塗って、完成です。
大量生産される収納ボックスではなく、職人さんの想いが編み込まれた「つづら」。
暮らしのなかに取り入れてもらえば、きっと生活は豊かになると、高橋さんは言います。
「当然、自分は、引き継ぎたい、残したいと思ってやっているので、
いま40歳ですけど、60歳になってから始動するのではなくて、
やりたいという人がいたら、早いうちに継承していきたいと思っています。」
つづらの色は、朱色、黒、濃い茶色の溜色と、全部で3種類。
機能性に優れた日本の伝統文化、「つづら」を“見せる収納”として、
現代の生活に取り入れてみるのも素敵ですね。