みらい図鑑

VOL.179「日傘」

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今回の主人公は「日傘」。
「傘」という漢字には、「人」という字が4つ含まれています。

生地を織る職人さん。
次に、骨を組む職人さん。
加工する職人さん。
最後に、手元をつくる職人さん。

これら4つの工程を受け持つプロの技を融合させて、1本の傘を作っているのが、
東京・台東区に店舗を構える昭和23年創業の「前原光榮商店」。
昔ながらの製法でハンドメイドの傘を作っています。

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「前原光榮商店」の傘づくりは分業です。
たとえば、生地に関わっている職人さんは、骨組みの知識は持っていませんが、
生地については、最高のクオリティを追求。

そして、“生地が素晴らしいから、骨組みもしっかりしなければいけない”と、
次の工程を請け負う職人さんが士気を高め、また次の工程に繋げる。
このように分業することで、それぞれのパートの職人さんたちは、
お互いに良い影響を与え合っているのです。

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そもそも傘というのは、日傘の方が発祥だと語るのは、
「前原光榮商店」、代表の前原慎史(まえはら・しんじ)さん。

前原さんは、そんな日傘を女性だけでなく男性にも使ってほしいと話します。

「ぼくも含めて、男性は日傘を使うことに抵抗を感じがちですが、
初めて傘という形状のものを、雨の日に使った人間も名前がわかっているぐらいで、
もともとは、日傘なんです。
そういう歴史を知ることによって、日傘を使いやすかったりもするんですね。」

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前原さんには、昔ながらの傘づくりの想いはそのままに、
時代時代に沿ったテイストも入れながら作っていきたい、という思いがあります。

「こんなにモノが便利になっても、傘をさすときに片手を取られてしまうという、
アナログな道具なんですが、
これまで何百年と使われてきているんですよね。
この先100年経っても、傘っていうのはこういう形状で作られていくんだなと思っています。」

ものづくりには、人が必要不可欠。

一人一人の想いや技術が集約されて完成される傘は、
時代のアレンジが加わりながらも形状を変えずに、
これから先もその役割を果たし続けてくれることでしょう。