2008年5月18日
芥川龍之介 『羅生門』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

教科書の定番とも言える芥川龍之介の「羅生門」。久しぶりに読んでみるとあらたな発見が多い作品です。もともとこの短編小説は、平安時代の終わりに成立した「今昔物語集」をもとに書かれたもの。昔の素材をベースに芥川龍之介ならではの世界が広がっています。まず素晴らしいのは「一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。」という書き出し。優れた短編小説は書き出しで決まると言いますが、まさに羅生門はその定説どおり最初の数行を読んだだけで情景が色鮮やかに見えてきます。「シンプルで無駄がないのに、その中に匂いや風が含まれている。」と小川洋子さんもあらためて感じたそうです。

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