2011年06月05日
武田泰淳
『目まいのする散歩』
 (中公文庫)

長年「目まいのする散歩」を愛読してきた小川洋子さん。この本の面白さは、武田泰淳さんの妄想のたくましさだそうです。妄想の翼は自意識過剰なまでに羽ばたき、それが作品の中で独特のユーモアになっています。さらに小川さんがこの本の中で印象的だったのは、「すべてのことは、たいがい無事にすむものだ」という武田泰淳さんの言葉。柳のようにしなやかでありながら、強靭な思想を持つ泰淳さん。読んでいるうちに人間のもっている強さも伝わってきます。いつページを開いても、何かを感じることができる本は、人生の宝物。武田泰淳さんの「目まいのする散歩」は作家・小川洋子さんにとって、そんな特別な1冊です。

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