2014年02月16日

宮尾登美子
『きのね』(下)
 (新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

昭和63年の秋から新聞に連載されていた宮尾登美子さんの長編小説「きのね」。十一代目市川團十郎さんの奥様をモデルに、歌舞伎の名門の家に奉公に出た女性「光乃」の生き方を描いています。今週はその下巻。物語のはじまりは終戦直後。東京の焼け野原に残った劇場。そして光乃は、身の回りの世話をしている長男・雪雄と一緒に八王子に疎開しています。二人の関係はどうなっていくのか。なんと光乃は雪雄の子を身ごもり、人知れず出産することになるのです。光乃は、なぜこれほどまでに辛い日々を乗り越えていけるのか?それは人生をかけて尽くせるものに出会ったからなのかもしれません。

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