2018年1月7日

坂口安吾
『風と光と二十の私と』
 (講談社文芸文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「成人の日」を前に2018年の最初に取り上げたのは、坂口安吾の「風と光と二十の私と」。昭和22年、当時40歳だった坂口安吾が20歳だった頃の自分を振り返って綴った自伝的小説です。父親の死後、借金があることを知った主人公は、仕方なく小学校の代用教員になることを決意します。受け持ったのは男女合わせて70名もいる5年生。しかし仕方なく先生になった割には、この主人公は子供の心を掴み取り、その生徒がどんな場面で才能を発揮できるかを見抜く力を持っていました。「本当の美しい魂は悪い子供がもっているので、あたたかい思いや郷愁をもっている」「こういう子供に無理に頭の痛くなる勉強を強いることはない」など坂口安吾による子育ての哲学も綴られています。

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