2018年1月7日

坂口安吾
『風と光と二十の私と』
 (講談社文芸文庫)

「風と光と二十の私と」の他にも、坂口安吾は年齢を題名にした自伝的連作を残しています。たとえば「二十七歳」と「三十歳」。この二つを読むと、二十歳だった頃の安吾とはまた違った姿が見えてきます。すでに新進作家と呼ばれ、あるひとりの女性への強い想いに苦しんでいました。それは実際に坂口安吾の恋人だったと言われた「矢田津世子」。昭和11年に「神楽坂」という小説が芥川賞候補にも選ばれた女流作家ですが、肺結核のため36歳という若さで亡くなっています。先生として子供たちに向き合う時も、愛する女性への想いも、常に自分の魂に正直な坂口安吾。どの作品にも共通する力強さは、その魂の強さなのかもしれません。

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