2018年10月28日

正宗白鳥
『リー兄さん』
(講談社文芸文庫)

故郷の実家に戻った主人公は、その家の管理人夫婦に「リー兄さん」の晩年の様子を知らされます。10年あまりお風呂に入らず、体調が悪くなってからは2階にこもりきり。画家として無名のまま報われずに亡くなった「リー兄さん」。実はこの作品は正宗白鳥の実の弟を描いたものでした。様々な分野で活躍した正宗兄弟。しかし四男だけは無名の画家として孤独な晩年を送ったそうです。正宗白鳥は自分が亡くなる前に、なぜその弟のことを小説にしたいと思ったのでしょうか?報われる人生とはどういうものなのか?理不尽なことの多い人生に対して何にこだわり、どう生き抜いていくのか?読者にも様々なものを投げかける名短編です。

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