2019年03月17日

中井英夫
『牧神の春』

(河出文庫 小川洋子の陶酔短篇箱 収録)

短篇小説「牧神の春」の主人公は貴という男性。彼は役に立たないと思われるようなことを考え、一度それにとりつかれるといつまでも抜け出せないで堂々めぐりをするタイプです。ある春の日、貴は街を歩きながら、唐突に「おれは早く土星に行かなくちゃ」と思います。そしてそれについて考えている時、不思議なことが起こります。頭には角、下半身には音を立てるほどの勢いで体毛が伸び、なんと「牧神」になってしまうのです。窮屈な衣服を脱ぎ捨てて動物園に向かう貴。そこである少女と出逢います。この作品が収められている本はかつて絶版になっていましたが、今は「小川洋子の陶酔短篇箱」で読むことができます。ぜひ手にとってみて下さい。

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