2019年08月04日

佐多稲子
『水』
(講談社文芸文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

小川洋子さんが去年「マイベストブック」の1位に選んだ正宗白鳥の「リー兄さん」。この作品が収められていたのは講談社文芸文庫の「群像短篇名作選」のシリーズ(1946年〜1969年編)です。この1冊には他にも名作と言える短編小説が収録されていて、今回はその中から佐多稲子の「水」を味わってみました。明治37年に長崎で生まれた佐多稲子。昭和のはじめ頃から作品を発表するようになり、短編小説「水」は昭和37年、58歳の時の作品です。最初の場面は、東京の上野駅ホーム。駅員詰所の横で幾代という女性がしゃがみこんで泣いていました。彼女は二十歳にもならぬ若さですが、あたりかまわず働いていることがわかる、こりんとした顔をしていました。

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