2019年08月25日

藤本和子
『塩を食う女たち、
聞書・北米の黒人女性』
(岩波現代文庫)

「塩を食う女たち」という題名にはどういう意味が込められているのでしょうか?それは作家トニ・ケイド・バンバーラの長編小説「塩食う者たち」に由来しています。「塩を食うとは、塩にたとえられるべき辛苦を経験する者たちのことであると同時に、塩を食べて傷を癒やす者たちでもある。蛇の毒は塩を食って中和する。蛇の毒は黒人女性を差別し抑圧する社会の毒である」と藤本さんは説明しています。この本を読むと、アメリカ社会を生き延びてきた女性たち、そのひとりひとりの声が聞こえてくるように感じます。差別という問題を社会としてではなく、ひとりひとりの女性をとおしてとらえようとしている藤本和子さんの想いの強さによるものなのかもしれません。

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