2019年10月13日

今村夏子
『むらさきのスカートの女』
(朝日新聞出版社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

小川洋子さん大推薦の「むらさきのスカートの女」。第161回「芥川賞」を受賞した今村夏子さんの小説です。題名にもなっている「むらさきのスカートの女」とはいったい何者なのか?「芥川賞」の選考会でも大いに議論になったそうです。確かに読んでいくと、その存在が掴めるようで掴めません。「1週間に1度くらいの割合で、商店街のパン屋にクリームパンを買いに行く」「公園には、むらさきのスカートの女専用シートがある」「まぶたは一重。シミはあってもほくろは無い」「公園からほど近いボロアパートに住んでいる」などなど手がかりはあっても、実在するのかさえもわからない、謎に包まれた存在です。

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