2019年11月17日

堀江敏幸
『熊の敷石』
(講談社文庫)

不思議な夢から目覚めた私が、今いるのは旧友ヤンの家。フランスの北西部ノルマンディー地方の静かな村でした。しばらく音信不通になっていた二人が再会を果たし、一緒に過ごす中で様々なことが語られ、過去を思い出していきます。海に浮かぶ修道院モン・サン・ミシェルなどフランスの文化や食べ物。ヤンには、ユダヤ人として第二次世界大戦の時に迫害を受けた身内がいること。そしてヤンの部屋の大家であるカトリーヌと息子ダヴィッドと熊のぬいぐるみのエピソード。「熊の敷石」という題名の由来となったフランスの寓話について。小説のようでありエッセイにも思えるこの作品は、まるで現実と幻想を行き来しているような世界。堀江敏幸さんでしか生み出せない文学作品です。

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