2020年01月12日

山本有三
『路傍の石』
(偕成社文庫)

作者である山本有三の父親は、元宇都宮藩の下級武士で、呉服商を営んでいました。そのため高等小学校を卒業後、東京浅草の呉服屋に奉公に出されます。しかしその生活に馴染めず、ふるさとに逃げ帰ってきたとか。若い頃の山本有三は吾一の姿と重なります。その後、文学の道に進み、33歳の時に文壇デビュー。17年後「路傍の石」の連載がはじまります。昭和15年には「新編路傍の石」として書き改めた作品を、雑誌「主婦之友」に発表していましたが、突然、連載を打ち切り「ペンを折る」という文章を書いています。戦争が激しくなる中で自由な表現が出来なくなったと感じた山本有三。吾一のその後を書くようになったのは戦争が終わってからのことでした。

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