2020年04月05日

吉本ばなな『みどりのゆび』
(文芸春秋/文春文庫『体は全部知っている』)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

吉本ばななさんの「みどりのゆび」。高校の教科書にも掲載されることが多い短編小説です。主人公の「私」が祖母の死をとおして、人生で大切なものを見つけていくという物語。その死と対比されるのが「アロエ」。家の玄関脇に植えたまま、水もやらず陽当たりもさほどよくないのに、どんどん育ち真っ赤な花まで咲かせています。短い物語の中に描かれていく生と死。それは切り離されたものではなく、生と死はつながっていて、かけがえのない人の死を受け入れることで生きることの大切さを知り、この先に続く人生の道を照らすことにもなっていきます。平凡な家族の物語を紡ぎながら壮大な世界を描き出す「みどりのゆび」。吉本ばななさんの名短編です。

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