2020年06月28日

『草野心平詩集』(ハルキ文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今から117年前の明治36年、福島県いわき市に生まれ、昭和63年に85歳で亡くなった草野心平。生前に残した詩は1400編あまり。その中でも繰り返しテーマにしていたのが「蛙」です。今回取り上げた「草野心平詩集」の中にも「蛙」にちなんだ詩が数多く掲載されていて、最初に載っているのは「誕生祭」。月がのぼったばかりの沼に、とくさの笛が鳴り渡ると、そこには充満するほどの蛙たち。誕生のよろこびを爆発させるように命のエネルギーあふれる作品です。また草野心平が25歳の時にはじめて活版印刷で発表した詩集「第百階級」は、封建社会での蛙の階級を表現したもの。その中にはヤマカガシに食べられている蛙が仲間に告げる言葉も詩になっています。

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